【Play back the GAME】2011/2012ラ・リーガ第29節 ビジャレアルvsレアルマドリード/Who is Lotina?
稀に見る超大型補強を遂行した今年の我がエスパルス。今オフの話題を総なめしておりますが、まずはこの人が全ての始まりでしょう。新監督ミゲル・アンヘル・ロティーナ。バスク出身のスペイン人です。スペインといったら攻撃サッカーのイメージで、監督もペップ・グアルディオラやビクトル・フェルナンデス、今季から浦和の新監督になったリカルド・ロドリゲスなどいますが、ロティーナの故郷、バスク地方出身者には、実は堅実なサッカーを好む人が多く、昨シーズン途中までバルサを指揮したエルネスト・バルベルデもそうですね。
ロティーナはバスク出身者そのもののようなサッカーをやります。始めからイメージは引いて守ってのカウンターサッカー。攻め方は従来のスペイン風サイド攻撃ですが、とにかくブロックが厳重。バスを置く、とも表現されますが、ホントそんなサッカーです。だからヴェルディでボールポゼッションを重視した戦術をしたときはビックリ仰天。副官のイバン・パランコの影響が大きいのでしょう。
そんな今回は、ロティーナとは何者か?をテーマに、あるゲームを振り返ります。ロティーナラストリーガとなった2011/2012第29節、ビジャレアルとこの年勝ち点100で優勝することとなったモウリーニョ率いるレアルマドリードです。
それでは、この試合のスタメンです
ビジャレアルは4-2-3-1。ロティーナは前節の28節から指揮を執っており、これが2試合目。対するモウリーニョレアルは4-3-3。モウリーニョ期によく見られた「ハイプレッシャーの三角形」(モウリーニョVSレアル・マドリー「三年戦争」より)です。
モウリーニョはアシスタントを集め、この「ハイプレッシャーの三角形」の理論化に努めた。(中略)ボランチなら誰を起用しても機能するように見えても、実際にはスペシャリストが必要だった。実践最大の効果を発揮するための明確な能力の持ち主たちだ。レアル・マドリーではシャビ・アロンソ、ラサナ・ディアラ、ペペ、ケディラのうちの3人が選ばれし者だった。
ペペは最適の人材だったが、より重要なエリアであるゴール前を守るCBとして起用しなければならず、緊急時での要因だった。X・アロンソは運動量で不安があるものの、パス能力を買われた。L・ディアラは必要なすべての能力をまんべんなく備えていた。ケディラは1500m走のアスリートのような抜群の持久力の持ち主であり、カバーするエリアの広さでモウリーニョにとっては不可欠の選手となった。
モウリーニョVSレアル・マドリー 「三年戦争」明かされなかったロッカールームの証言 著ディエゴ・トーレス 訳木村浩嗣 発行KANZEN 220項より引用
このレアルの戦術を覚えといてください。実はこのゲーム、レアルの3MFは前半途中で終了します。ディアラに代えてカジェホンを入れるのですが、戦術的交代です。大事に温めていた戦術を変えざるを得なかったロティーナの策とは。
■トライアングルを崩壊したロティーナのプレス
ロティーナの守備で特徴的なのは、ボールホルダーに対する果敢なプレス。レアルはマルセロがボール保持。近くにいるはケディラとアロンソ。
マルセロ→アロンソ→ディ・マリアと繋ぐレアル。ビジャレアルの守備陣形は崩れずにボールホルダーへのプレスを強める。
ディ・マリアからアロンソへ。この時点で最終ラインは5枚になっているが、
アロンソがボールを保持すると、赤丸の3人が動く。要は、どこがプレスの対象なのかを理解できているか。レアルでは誰にプレスに行くのが1番手っ取り早くボールを回収できるのか。
ロナウドの落としに飛び出したディアラに対して3人がプレスに走る。ロティーナの対象は誰か。
このビジャレアル戦は厳密な意味での3ボランチの最後の試合となった。メカニズムは内部から崩壊した。モウリーニョに大切にされたL・ディアラが喧嘩腰で相手の足を蹴りまくってイエローカードをもらい、“自主退場”を恐れたモウリーニョは29分、彼を下げてカジェホンを入れたのだ。
モウリーニョVSレアル・マドリー 「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言 著ディエゴ・トーレス 訳木村浩嗣 発行KANZEN 221項より引用
■ただ引いて守るわけではないロティーナ
レアルの中盤をプレスで破壊したロティーナ。とても降格圏にいるとは思えない守備陣形にレアルはボールポゼッションで優位にプランを進められず、ボール保持してもブロックを作って構えているイエローサブマリンを城壁を崩せません。
ロティーナが破壊した3MFは、ケディラとディアラという、足下のプレーに不安を抱えるプレーヤーにターゲットを萎めてプレスを仕掛ける。しかし、アロンソ以外パスの出し手がいないレアルはポゼッション出来ないので、ビジャレアルに手放します。ビジャレアルが優位にゲームを進めるためにはポゼッションで何とかするしかありません。
見せてくれビジャレアル!!
!?
この時のビジャレアル、っていうかロティーナはビルドアップに関してはほとんど作れていないです。カウンター時の選手の配置は上手いですが、ボールポゼッションによる組立に関しては工夫が見られないのがこの時のロティーナでした。イバン・パランコと出会うまではこんな感じだったんでしょう。
ロナウドとベンゼマによる華麗なワンツーからの先制点はノーチャンス。その後はレアルが中途半端なビジャレアルのボールポゼッションをカモにしてショートカウンターの嵐にする。
ビジャレアルのパスワークの中心はマルコス・セナ。てかセナが絡まないとパスワーク自体成り立たないという、かつてのイエローサブマリンはどこ行ったんだという組織なんですが、ボルハ・バレロがいればまだよかったのかもしれませんが残念ながら欠場。76分にデグスマンをトップ下に入れてから少しは良くなったんかなと。
最終ラインからのパスワークです。ボランチのソリアーノに入ります。
トップ下のデグスマンが落ちてくる。
落ちてきたデグスマンに入ると
セナがフリーでボールを受けられる。デグスマン投入の最大の狙い。前線の人数が減る分、ボールは確実に前線へ届けられる。
ハーフスペースでカニがボールを受けられた。ここで起点がやっと作れた。
こういうシーンは、今はたくさん見られると思います。パランコがこういった攻撃の仕組み作りをやってはいるのではないでしょうか。なので、このゲームがロティーナの全てを表しているわけではないです。このゲームは分が悪すぎる。ビジャレアルは残留争い真っ只中でロティーナは2試合目。対するはモウリーニョのレアルマドリード。逆によく抑えられていると思います。
その後は、84分にセナが直接FKを決めて同点。そのままゲームクローズド。印象として、ロティーナとモウリーニョがぶつかると塩試合になる。レアルも勝ち点100取ったとは思えぬゲームビルディング。見ごたえは終了間際のモウリーニョ、ラモス、エジルの立て続け退場となった乱闘騒ぎくらい。
ロティーナがどんなサッカーをエスパルスで見せてくれるかは分かりません。ヴェルディでやった時とセレッソの時とでスタイルが異なったように、とくに大型補強を遂行した今季はスタメンから読めない。ただ、噛みあえば面白いのではないでしょうか。実績ある選手が多い補強となったので、これまでのエスパルスとは一線を画しているのではないでしょうか。なんにしろ、スペイン屈指の名将率いる今年のエスパルスはリーグの中でも注目に値するチームです。
チームが点獲っても喜びを表さないのはこの時も同じだったか
次回、疾風のごとく現る、ディサロ燦シルヴァーノ
予告:今年は新しいことをやってみたいな、これからの観戦スタイルが変わってくるからこその新たな楽しみもあるんじゃないかな、と思いまして、現在計画遂行中です。こうご期待!!
清水エスパルス2020年振り返り その②
2020年、いろいろありました。オリンピック延期に首相CHANGE。GoToにイートは券だけで3種類もあって対応している店がまちまちだったり、まさかのfootballistaデビューしたり。短かったようで長かった1年でした。
では前回の続きです。
#21 奥井諒
ヘナトじゃないよ!
だけだと短すぎるので補足すると、序盤戦はスタメンで出場。上下の運動量に効果的なフリーランニングなど、意外と戦術理解度の高さを見せてくれた。ただビルドアップに難が見られ、慣れない左SBだとプレスの狙い目とされた。それでも偽SBとしてほとんどボランチとしてのプレーを頑張るなど、プレーの幅を広げていたのも事実。でも、もう偽SBはやらないと思うので純粋な右SBとして今後は頑張ってほしい。奥井の偽SBは実況泣かせになる。。。。ヘナトじゃねーよ!!
#22 ヘナト・アウグスト
中盤のプレス強度を強め、3列目から何度も前線に飛び出しては豪快なミドルやオーバーヘッドといったゴラッソを披露し、持ち味を殺してまで自らを犠牲にCBとしてプレーするなど、日本の労働基準法が全く機能していないことを証明してくれたナイスガイ。これだけチームを救ってくれたのなら、他のチームから絶対いいオファーが来てるはずなのだが来季も残留してくれることになった。ポジションがどこだろうと、どんな役割が与えられようと決して文句を言わず、ただひたすら走り抜けてくれたその姿は今すぐドキュメンタリーとしてまとめてほしく、「RENATO AUGUST 黒子に徹する、それが俺の生きがい」と題した映画を制作してほしいものである。やはり守備面で負担が大きく、また攻撃でも顔を出さなくては機能がしないと、そのダイナミズムは存分に生かされたものの、個人としてのトランジションが最高レベルでないと怠け者認定されるくらいの回らぬ仕事量があったことは理解しておきたい。トランジションが最高レベルであったのは幸いであるが、やはり菅総理は、会食する時間があるならコロナ対策と並行して労働基準法を厳しく見直す必要があると思う。来季はここまで守備陣に負担が行くようなサッカーはしないはずなので、ぜひ本職のボランチでStay Homeしていてほしい。
#23 ティーラシン・デーンダー
2度目のJリーグ挑戦となったタイの英雄。開幕戦で先制点を決めるなど、その試合ではセンセーショナルな活躍をしたものの、コロナ中断を悪い意味で影響を受け、ポストプレーを要求されるなど、自身のプレースタイルとは反する難しい状況下となってしまった。ボックス内で勝負できる環境があればよかったんだろうけどね。カルリーニョスがCFで思った以上に機能してしまったことも影響したか、エスパルスでの1年は不幸続きだったと思うしかない。音楽を聴くためにイヤホンを必ず持っていくみたいだが、本体こそ絶対忘れずに持っていくべきではないかと思うのだが、イヤホンは冷静に考えてみれば大切なものだ。今シーズンで退団決定。タイのラッピング電車にいつまでもオレンジのユニフォームが載っていてほしい。ジャイアンツフォーエバー!
#24 岡崎慎
FC東京から期限付きでやってきたCB。当初はボランチとして起用され、ビルドアップ能力を見せてはくれたが、本職がCBなのでボランチならではの視野に慣れなかった、ダイナミズムがないことでヘナトが復帰するとすぐに入れ替わってしまった、わずかな出場機会で致命的なミスを連発と、いいとこなく終わってしまいシーズン途中でレンタル打ち切りとなった。ベビーフェイスなところが女性人気を生み出し、私を含めた全員が母親気分となってみることができた。母親目線とはこのことね。人生で二度とない体験ができたことに感謝!
#26 滝裕太
昨年に出場機会を得たことで、今シーズンは本格ブレイクを期待されたが、なかなか出場機会を得ることができず、シーズン途中で富山にレンタルした。これまたベビーフェイスで若々しさが見た目からあふれているが、ドリブルや俊敏性を活かした母親心を揺らすポジショナルプレーで年上女性のハーフスペースに突撃していってもらいたいところである。
#28 西村恭史
開幕戦でいきなりJ1デビューした若手大型ボランチ。行動範囲が広く、守備にも攻撃にも顔が利くBox to Boxタイプなのかと思ったが、モフ体制終盤にアンカーをやるとこれまたフィット。ボールの配給役としてパスを散らせば自ら運ぶこともできた。本人はポグバと言っているが、実際にはフレンキー・デヨングに似ているんじゃないか?と思わせ、新時代のアンカーを見せてくれるかと思いきや、そのタイミングで政権交代。平岡体制ではなぜか前線起用され慣れぬハイプレスに戸惑うシーンが見られるなど、本職ではないからしょうがないとはいえ経験不足なところも見えた。来季は勝負の年。守備力が付けばヘナトからポジションを奪える。
#29 福森直也
貴重なレフティーCBも、また今年も出場機会がなかった。モフ体制になったことでレギュラー候補に一気に名乗り出たんじゃないかと思いきや、シーズン前のキャンプでケガ。コロナ中断で一時期3-4-3の左CBのレギュラーとして起用されたものの、4バック下では出場機会なく夏にまたケガ。その後本格的に3バックを始めたことで、この時に福森がいればまだビルドアップはマシになり、ヘナトやヴァウドの負担も減らせたのではないかと思ったのだが、そのままシーズンが終わった。来季は正念場。ロティーナ体制なら左SB起用も普通にあり得るんじゃないか。
#30 金子翔太
ハーフスペースの鬼も、また今年も大外で起点作りに追われる1年となった。ハーフスペースでボールを受ければ違いを見出すことができるが、ウイングではないので大外では起点になれず、広大なスペースが広がっていても質で殴れずチャンスを潰してしまうシーンが散見された。上下動に優れた純粋なSBと組むことでハーフスペースに入りこむことが1番の活かし方だが、モフのハーフスペースには進入できず、平岡さんの時は左サイド起用もあり徐々に感を戻してきてはいた。ウイングは超重要なポジションだということを知らせてくれただけでなく、どんなときにもハーフスペースに入りこむことは大切なんだなと我々にも教えてくれた。人生のハーフスペースは攻略は難しいのだ。
#31 梅田透吾
中断後初戦からレギュラーを掴んだ若手GK。足元のプレーを評価されての起用で、時に見せてくれるスーパーセーブでネットをざわつかせた。ミドルシュートの対応には抜群のセーブを見せるが、空中戦やキャッチングには何度も冷や冷やさせられるなど、試合を飽きさせずにスリリングな展開を見せるといったエンターテイナーぶりも発揮(GKはそんなもんいらん)。かつての櫛引を彷彿とさせてくれ、なんだか懐かしい記憶も蘇ってきた。権田が加入する来季は弱点補強のシーズンにしたい。これまた若手あるあるなベビーフェイス。
#32 ネト・ヴォルピ
2020年最大の謎に終わった、開幕戦以降1度もベンチ入りすることなく干され続けた昨年のコロンビアリーグNo.1GK。外国人枠の関係やケガの具合などもあっただろうが、ベンチに助っ人が5人も揃っていなくともベンチ入りしてない状況でもメンバー入りせず、おかげで清水警察署には3万ほどの捜索願が出された(未確認)。あまりにも行方が分からないもので、ならば俺たちでヴォルピを作ろうではないか!と思ったのだがそれでは無くした部品を探さずに代わりを買おうぜなお金持ちの子供と発想は一緒であり、そもそも作れるのであるならヴォルピではなく、クルトワやアリソンを作っているはずだ。GK陣の中では1番能力が高いはずなのだが、本当に不思議に終わって退団することになった。結果的にヴォルピはなかったことにしておくことが誰にも傷をつけぬ方法かもしれないが、やはりなぜ干されてしまったかの理由は知りたいので、近々FBIに調査をさせてもらおうかと思っている。絶対何かの陰謀はあるはずで、エリア55に宇宙人はいるはずだし、ネス湖にはネッシーがいるし、闇営業は隠したいものなのだ。やはり事件は現場で起きているのだ。
#33 川本梨誉
高校生ながらデビューを果たした昨年から飛躍を期する年になるはずが、思いもよらず出番がなかった。数少ないウイングプレーヤーなのだが、強引に突破できるだけのクオリティは持ってはおらず、仕掛けては止められるを連続して攻撃を止めるシーンが多かった。とはいえ、育てれば数少ないウイングプレーヤーとして質で殴れる。今後のサッカーに必要な手のウイングであり縦に仕掛けられる数少ないウイングプレーヤーとして代表に殴りこんでもらいたいと、物凄くウイング起用してほしいのだが、もしかしたらその馬力がCFとして開花するかもしれないし、アンダーの代表ではSBで使われていたみたいだし、坊主ではなく長髪にしてこそ活かされるのかもしれない。ウイングが1番というわけでもないかもしれない。だがやはりここは、エスパルスジュニアユースとして史上2チーム目の三冠達成した黄金世代として一皮むけてほしいものである。遠征に必ずパンツを持って行く姿勢は、いい育ちをしている表れである。
#34 ノリエガ・エリック
エリイケエリイケ襟池絵里生け絵梨逝け衿イケエリ行けえり井家絵梨易家エリいけエリイケェェェェーーーーーーーーーーー!!!!!!!!! エリイケお兄さんとして個人サポーターになろうと思ったのだがシーズン途中で町田へローン移籍。来季も頑張れ
#35 伊藤研太
貴重な左利きSBとして、今年もケガでシーズンが終わった。若手ではあるが、そろそろシーズンに絡んでもらいたいものである。顔つきが平ちゃん(DonDokoDonね)に似てきた。
#36 栗原イブラヒムジュニア
各世代の代表の常連でもあり、鳴り物入りで加入もシーズン途中で沼津にレンタル。貴重な長身CFとして頑張ってほしい。町野を失った北九州さん、コバさんもいることだし、来年1年間だけいかがですか?
#37 鈴木唯人
今年1番のサプライズ。市船のエースがプロ1年目でシーズンの大半に絡み、準レギュラー級の活躍をした。2列目からドリブルで仕掛けられ、シュート意欲も高い。現代的なトップ下といえるが、なかなかシュートが枠に行かない。フィニッシュのクオリティを上げられれば年間二桁得点も可能である。川本と同じく遠征にパンツを必ず持っていくあたり育ちはいい。お互い、過去の坊主に何か人生を狂わされたのか。
#38 新井栄聡
レンタルバックからの再加入したものの出番なく来季から秋田に完全移籍。ガンバレ
#39 大久保拓生
なんだかんだシーズン途中でレギュラー奪取した不死身のGK。足元の技術がアレなもんだからモフの下で出られるかは微妙だったが、梅田がセービングで不安定なところもあり、「やっぱりGKは守るところから」と基本中の基本に立ち返ったその答えが拓生起用だった。シュートストップはやはり凄みはあるし、だんだん足元も良くなってね?とか思っちゃったり。それでも危なっかしいけど。来季はハイラインでもないし、かといってリトリートでもない。ビルドアップも最低限しか求められないから出番はあるはずなのだが、GKの補強が進むので正念場でもあるか。プライベートで髪を下ろしているとマジでオーラがなくて分からない。
#40 成岡輝瑠
2種登録でデビューした神童。軽やかで上手く、ボランチでも組み立てができる辺り、イニエスタというよりチアゴ・アルカンタラ系。見た目めっちゃ若い。いや現役高校生なのだから若いのは当然か。やっと来ましたキラキラネームです。これで「ひかる」といいます。読めるか! 現代っ子臭がプンプンするので、来季はロティーナのお爺ちゃんに「これが21世紀生まれの青年だ」「わしは昭和など知らぬ」「自称令和育ちです」「その考え、平成かよ!!」とぶつけ、おそらく来季加入組では唯一の高卒勢になるので若さ全開でチームをかき乱してほしい。
#COACH ピーター・クラモフスキ―
マリノス優勝を置き土産に、自身初のクラブチームの監督に就任。昨年のドウグラス頼みのサッカーから完全脱却を試み、開幕戦でFC東京相手に敗れはしたものの、可能性のある戦いを披露してくれた。だがしかし、ピークは開幕戦だった。まず選手が揃わず、ウイングが質で殴れないことでサイドで攻撃が止まる現象に直撃。やり繰りしたくとも、再開後の超過密日程で修正ができず、徐々にボロが出始める。しまいには3バックをやり始め、しかもヴァウドを除くと残り2枚はMFと、いくら戦術上その方がいいとはいえ、世界どこを見渡しても本職DF抜きに守り切れるチームなど存在しないのである。戦術も大きく変わり現場からも不評の嵐に。「このサッカーやるならモフである必要がない」「ポジショナルとはいったい」「篠田サッカーよりはましだけど・・・」「大熊さん登板と大して変わらない」「「フィロソフィー製作...なんでしたっけ、それって結局なにやるの?」「#freerenato」「エウソンの魔改造は不可能でした」「毛髪を犠牲にしてでもあなたのために...」と結果散々なものとなり途中解任。今年は我慢の年と腹を括ってはいたが、あの3バックに来季のよき未来予想図は描けなかったのも事実である。とはいえ、あの開幕戦はワクワクさせてくれたのも事実であるし、コロナがなければ一体どんな結末を迎えていたのだろうか。興味があるのもそうだが、それと同時に恐ろしくもあり、人生とはそんなものである。
#COACH 平岡宏章
11月からチームを引き継いだ4代目OB監督。高い声はよく聞こえ、とくに今年は声援禁止のためいろんな声が漏れ、監督もいろんなことを思っているのだなとしみじみ感じさせてくれた。準備期間が皆無に等しかったことを考えると、最終的に勝ち越せたのは合格点を上げるべき成果だと思われるのだが、監督は今季いっぱい。また来年はコーチに戻る。モチベーターとして優秀で、その高い声で何度もピッチ上の選手の意識を上げ続けたが、1番のハイライトは、その高い声で声量は小さいながら「さっきのはPKだろ明らかに」と思いっきりスタンドの酔っ払いオヤジと同じことを言ったことで、こういう状況だからこそよくベンチの声も聞けていいものだと感じたし、監督も普通の人間なのだと認識させてくれた。引退しなくても普通の人間なのだ。
長かったよ!! かなり人を保有していたんだね! らいねんはいい年にしよう!
アディオス!!
清水エスパルス2020年振り返り その①
2020年が終わります。コロナ渦に左右され、過密日程に左右され、ポジショナルに左右され、ネト・ヴォルピいつ使われるん?に左右され、無事にシーズンを終えることができました。何よりも1人もコロナに感染することなく1年を終えられたのは良かったし、この成績で降格しなくて本当によかったと心の底から思えました。そこで、今季のエスパルスを1人ずつ振り返っていきたいと思います。40人近くいた最多登録人数チームをどうぞ!!
#1 西部洋平
40歳になってチーム最年長者になった永遠の若頭。今季はリーグ戦1試合に出場。あんまり記憶にないや。かつての若かりし頃は大きく派手なリアクションと不用意な飛び出しでひやひやさせながらもスーパーセーブで帳尻合わせてくることで許されてきたが、今はただ怖いだけでスーパーセーブは滅多に観られなくなった。その代わりにピッチ外ではいい兄貴分として貢献してきた。来シーズンもぜひ、さらに大きい鯛を釣っていただき、清水漁業協同組合にも貢献していただきたい。
#2 立田悠悟
CBに固定され、ついに最終ラインの柱として1本立ちした、なぜか身長を低くサバ読みした長身。セットプレーでも点が取れるようになり、高さでもカバーリングでも成長を見せた飛躍の1年となった。そして何よりもビルドアップ能力は国内トップクラス。右でも左でも短くても長くても精度の高いパスを出すことができ、自らボールを運ぶスキルも身に着ける。日本のピケ。SB真面目にやっておいてよかったね。ただポカがあるのもまた事実で、リスクを背負ってのプレーでもあるから大目にみたいが、そこまでピケに似なくてもいいわ。いつかは静岡国建国していただきたく、来年の東京オリンピック開催中にSNSで「俺は日本国民ではない。静岡国民だ!」「静岡独立万歳!」と投稿していただき、正真正銘の“日本のピケ”になっていただきたい。
#3 ファン・ソッコ
外国籍枠もあり、今年は割を食う形となるかと思いきや左SBとしてチームを救うとは本人も思っていなかったはずだ。あらためて足元も上手さは言うまでもなく、本職さながらのSB適応力を見せてくるなど、サッカーIQの高さを感じさせてくれた。ただ、やはり本職を使っていただきたいし、そもそも今年はレフティーが少ないという歪な編成のため、左SBはあくまで急造にすぎないコンバートだし、来季に向けてウィリアム・マテウスを補強するとならば今度こそ5枠に対し割を食いそうではある。でも、なんだかんだピンチには駆けつけてくれそうだし、貴重な傭兵枠として頑張ってほしいが、スペック的に傭兵であるのはもったいない。来年はどうなることやら。
#4 吉本一謙
今年で引退を発表した元祖傭兵。お疲れさまでした。さすがに10回もメスを入れていれば、満足にはプレーできないだろう。スライディングやヘディングの強さなど1対1の強さは、昨年からの僅かな出場機会でも感じ取ることは出来た。東京都小平市出身というまさにFC東京っ子ではあるが、田舎で引退を決意してくれた。静岡は眠れる町である。
#5 ヴァウド
去年のヴ〇ンデ〇ソンの幻影を完全に払拭してくれた鉄壁のディフェンスリーダー。線は細いが空中戦は強く、4点も決めているチーム内得点ランキングは堂々の第3位だ。オリンピックならば銅メダルだ。守備だけではなく組み立ても普通にこなせるなどハイスペックなCBであるのは間違いない。ただ、戦術が非常に変則的であったのでいろいろと割を食う形となってしまった。最多失点とはいえ直接かかわったシーンは皆無であり、まともに守る戦術では鉄壁の象徴にはなれるはず。3バックも唯一の本職なのに右サイドからオーバーラップを求められては裏を突かれて失点など個人としてはかわいそうではあった。大丈夫。僕のMVPランキングでは堂々の第3位ですよ。オリンピックならば銅メダルですよ!
#6 竹内涼
キャプテンとして年間通してチームを支えた。どんな監督だろうと最終的に使われているのはこのブラジル人だけだろう。FA権を取得したことで日本人扱いされているのはここだけの話。攻守のスイッチを入れては、チームを鼓舞する。ただ残念なことに、個人としてのネタはそんなにない。それだけ真面目に頑張ってきたということで、ぜひ障害をエスパルスで過ごしていただきたい。営業部、空いてます。
#7 六平光成
今年で退団が発表された汗かき役。本業のボランチで輝けたのは、レギュラーで使われた2年目くらいと、他のシーズンではなかなか本職で使われることなく、器用貧乏に使われてきた。でもすべての監督に使われてきたのもまた事実で、6人にはDFとして使われるなど、かつての大学NO.1MFも当時の自分に言い聞かせても信じないような起用法は改めてツキがなかったし、逆に言えばそれだけのポリバレント性はどの監督からも信用されてきたともいえる。降格から昇格と、ここまで支えていただきありがとうございました。次のチームでも頑張ってほしい。
#8 石毛秀樹
開幕前は左SBにコンバートされ、新生エスパルスの象徴として偽SBを全うしようとしたが、コロナ中断に大怪我をしては、復帰戦でもケガをし、そのままシーズンジ・エンド。このケガによる長期離脱は戦術上における想定外な出来事であった。おそらくもう偽SBとして使われることはないだろう。本来はウイングでクロスを上げるタイプであり、これまた器用貧乏としても使われそうではあるが、六平とは違い、使い方は絶対にあるはずなので、いつかは松崎しげるの隣というポジションをゲットしてほしいと切に願う。
#9 鄭大世
シーズン途中にアルビレックス新潟に移籍したベテランFW。半年でチーム得点王になるなど、その能力に錆は付いていなかった。ビックリバイシクルあれば、フィジカルで弾き飛ばせば、キムチを流行らせることもできる。現役Jリーガーの中で1番コシヒカリが似合う選手となった。ネタが新潟ネタしかない。いつまでも頑張ってほしい。
#10 カルリーニョス・ジュニオ
クラブ史上初の外国籍選手10番はその背番号に恥じないプレーを見せてくれた。10点は決め、ドリブルで何人も引きつけられしっかり守備するなど、負担をかけまくったがなくてはならない存在ではあった。個人的には今季の年間MVP。CFとして孤軍奮闘したが、やはり本職はウイングか。加入前はドリブルからのシュート、ゴラッソの連発と、そんなスーパーなゴールを決めてくれるのかと思いきや、半分はセットプレーからのヘディングゴールという、いや、凄いけど思ってたんと違うという5Gスマートフォン感を存分に味あわせてくれた。来季はもう少し負担を減らしてあげるから。そして、今季謎に包まれた礼儀正しいという噂のヴェクセイ選手をいつかは紹介してほしい。
今季で退団することになったブラジリアン侍。明らかにポジショナルプレーには合わず、守備も頑張るが組織というか個人として頑張っている感が強く、組織には合っていなかった。それでもチーム2位に6点を決めているが、それでもチームにあっているようには見えなかった。ただ、数字に出ているように能力あるのは確か。流れとは関係なく理不尽にゴールを決めていくあたり、1人レアル・マドリードを演じているようで見ていて清々しい。去年、6年ぶりに日本に帰ってきたというのにここまで日本を愛してくれたのだから、名誉日本人の称号を与えてもいいのではないか。ダメなら名刀・秋水をあげます。
#13 宮本航汰
長いJ2修行から戻ってきたハードワーカー。最初は偽SBとして右SBで起用されてきたがなかなか使われず、平岡体制に変わってからはボランチとして使われた。岐阜時代に大木さんに鍛えられたはずのパスワークは見られなかったが、長崎時代に高木さんから鍛えられたハードワークはチョイと見られた。たくさんの人に育てられた末っ子感が凄いが、来季も頑張ってほしい。修行前の芋くさい田舎っ子からちょっとチャラくなったけど、それは誰に育てられてきたものなんだ?
#14 後藤優介
大分からやって来たMr.便利屋。右足も左足も頭もエリア内もミドルエリアもドリブルからもパスを受けてのダイレクトもクロスからもセットプレーからもありとあらゆるパターンでゴールを狙ったが、ゴールが決まらない。本来ならFWとしてはあるまじき数字なのだが、如何せんゴール以外での貢献度が計りしえない。ビルドアップからスペースメイク、展開力、攻守のスイッチ役、ファーストディフェンス、ボール回収力。。。これらの能力がチーム随一なので、外すと組織が回らなくなる。年間通して振り返ってみると“戦術は後藤”だった。MVPランキングでは栄えある第2位です。来年はとにかくゴールを決めよう。センスだけなら日本代表クラス。
#15 金井貴史
1月に名古屋と契約更新したはずなのにやってきた。この時点でN(なぜ)S(清水に)K(金井)である。マリノスでモフ将と一緒にやっていたこともありN(なんとなく)S(戦術を)K(語れます)なのだが、そんなにフィットしてる感もなく、先発で出ては突然ベンチ外といったときもあるし、よく分からん起用ではあった。戦力ではあるが今季で退団。三十路でも笑顔が素敵な青年のような男でありN(日本の)S(さわやか)K(ここにあり)を静岡から示してほしいものだった。
#16 西澤健太
結局アシスト王になったんだっけ? アシストに関しては公式記録はないので何とも言い難いのだが、セットプレーは今季のエスパルスの強みでもあった。ホーム大分戦でセットプレー4発すべてを担当したそのキック精度は間違いなく脅威。セットプレーだけでなく他のプレーでも生かせばいいのに、なのだがモフ将は一貫して左サイドで起用。左だとシュートでしかその右足を披露できなかった。残念な使われ方ではあったが、平岡さんになってからは右でも起用。その右足でガンガンクロスを上げるというベッカム戦法で終盤は猛威を振るった。これモフの時にやってほしかったわ。でも中盤ならどこでもそつなくやってくれそう。
#17 河井陽介
あまり出番はなかったが、その戦術眼、高い技術でたまに来る出番でしっかりと役割を果たし、相変わらず河井マニアたちを唸らせる当たり、段々職人化してきた。だが彼の良さは、そのゲームコントロールでもなければ高いスキルでもない。奥さんがアナウンサーだということだ(情報提供者Y・N)。クラブ史上初という、アナウンサーと結婚というまるでプロ野球の世界を静岡の地に持ってきたことはなによりも評価に値することだ。サッカーだけがバンディエラではないというところを改めて思い出させてくれた。
#18 エウシーニョ
Mr.フリーダムは今年もフリーダムだった。もはや右SBの位置にエウシーニョを置く必要はないのであり、ポジションはエウシーニョなのだ。偽SBに最も合うはずなのだが、そのあまりにもフリーダムさに「そもそもSBですらないのでは?」「俺たちは前から偽SBをやっていた」「右SBなどというポジションをそもそも知らない」「SBは死語」と考えさせられてしまった。さて来季である。確かにエウソンはボールが納まる。ゲームメイクができる。攻撃が円滑に回る。だが、そもそもとしてチームに合っていない。軸として考えていいのかというとNo。またスぺ体質で年間数試合は欠場するから、いくらスペックが高くても相性は考えなくてはならない。南国に世界最高のスタッドレスタイヤは不必要なのだ。補強や枠を考えて、来季は最も正念場となるだろう。
#19 平墳迅
シーズン途中に藤枝にレンタル移籍も今季限りで退団。デビュー、見たかったぜ。
#20 中村慶太
チーム1のテクニックを持つドリブラーは、開幕からボランチで出場。パスセンスやドリブルをボランチの位置から仕掛けるなど、攻撃にリズムをもたらした。竹内とはまた違うゲームメイクで、途中出場からでも流れを変えられる貴重な存在であった。平岡体制では2列目でも起用。来季はどうなるのか。相変わらず上手い。相変わらず犬が好きすぎる。
ゴメンナサイ。今回はここまで。残りはまた次回!!
王者川崎を追い詰めた王国清水のプレッシング/まずはいたずらごころで壁張りや!!
いつかは“王者”と言ってみたいぜ!!
■追い出せ追い出せサイドへ追い出せ
433の布陣の川崎フロンターレに対して、平岡体制になってから442にシステム変更して王者に挑むエスパルス。エスパルスプレスの発信源は相手の中盤にボールが入った時。ファーストディフェンスとして後藤が中盤にプレスバックする。
442の天敵でもある433のアンカーに後藤がしっかりプレスバックすることで、相手のビルドアップを阻害していく。相手の中盤3人にボールを持たせないようしっかりチェック。要は、
この赤いU字型のエリアにボールを回させて奪い取る。
相手の中盤にしっかりプレスをかけることで中央は封鎖。川崎のパスワークは次第にサイドへ追いやられていく。
■中への壁張り、サイドハーフの役目
予定通りサイドへ追いやることで第1段階は終了。第2段階は中への壁を張る。
サイドの2人とボランチ1枚で壁を作り、中への突破口を許さない。この間、数的不利になる中盤は、逆サイドのハーフが絞って数的同数に対応。これは逆サイドでも同様
ここで重要なのは、スライドする両サイドハーフ。西澤と金子には、同一サイドにおいては壁を張る役目を、逆サイドの時は相手の中盤3枚をケアするために中に絞る。中盤の横のサイズをコンパクトにすることで相手にスペースを与えず、中にボールを入れさせないままサイドでボールを奪うことができる。中盤に対するプレスは、結果的に先制点を演出し、サイドのプレスも、相手ウイングを十分に苦しめることに成功した。失点シーンは拍手で称えて相手を褒めようぜ!!
後藤優介 スペースを使う才能、"水を運ぶ"ストライカー
■縁の下で輝くストライカー
FW。またはストライカーと呼ばれる役割。サッカー選手にとって花形でもある役割だ。最もゴールに近いポジションであり、誰よりも得点のチャンスが多いポジションだ。しかし、中にはゴールを狙うだけではなく、組み立てやチャンスメイクに力を出すタイプもいる。チームのために汗を流すFW。そんなタイプもいたっていいじゃないか。
■戦術眼に優れるプレーヤー 後藤優介
後藤優介のプレーは、知的というよりも才能と表現した方がいい。僅かだろうとスペースを見つけられる眼力。ボールを引き出す動き出しのタイミング、視野の広さ。これは簡単に身に付けられるような代物ではない。生まれもった能力だ。
カルリーニョス・ジュニオが左でボールキープ。後ろに下げるところ。後藤はハーフスペースの引き気味なポジショニングをしている。
左SBの金井貴史にボールが入る。このタイミングで後藤は動き出す。
ゾーンで守るセレッソの僅かに生まれるスペースのギャップ。ハーフスペースの奥へ走り出す。
ボールを受ける。少しズレたはしたものの、キープする。
キープすることで相手を3人引き付けられた。この後は、フリーな選手やスペースを使えばいい。1人で3人も付けていれば、必ず空いている人や空間はある。
この後、フリーな金井がミドルを放ち攻撃が終わった。
続いて第26節ヴィッセル神戸戦
ショートカウンターのシーン。後藤がボールキープ。溜めを作る
竹内涼がサポートに来る。竹内に預ける。
竹内がボールキープ。相手を2人引き付ける。後藤が狙うは相手の背後。
相手を引き寄せて背後のスペースへ。後藤の目の前にはスペースが広がっている。
ここからミドルを放ち、攻撃が終わった。
後藤の特殊能力は、スペースを見つけ的確なタイミングで使用することが出来る。それは自分だけではなく、タメを作り味方を活かすためでもある。また展開力もあり逆サイドへボールを振ることもできる。
チームのためにスペースを見つけ、使い、作る。簡単そうに見えて実はかなり難しい個人スキル。誰が監督であっても起用される選手だ。
エスパルス版ポジショナルプレー part1/ゾーンを破壊する者:その男の名は後藤優介
ZONEとは
かつて結成された日本のガールズバンド。。。
DAZNとは
スポーツ専門の動画配信サービス。。。
ふむふむ
■ゾーンとは?
間、とも言われる人と人の間に存在するスペースのこと。
このスペースのことですね。
ゾーンディフェンスを敷いてくるチームが増えたことで、闇雲にパスを入れてくるチームや、個の能力で攻め込むという単調な攻撃のチームは、ゾーンに引っかかって、その周りでプレーするに終始してしまいます。
ゾーン攻略法
このゾーンを破壊していく強き挑戦者っていうのはいつの時代でも現れるもんなんですね。手っ取り早いゾーン攻略法は、このゾーン破壊者がゾーンに入ってボールを貰うこと。ゾーン破壊者とは、この僅かなスペースでプレーできる選手のことです。
ゾーン破壊の申し子 金子翔太
ゾーン破壊といったら、2018年の金子です。金子には爆発的なスピードもなければ、決定機を生み出すキラーパサーでもありません。ですが、それでも10ゴール10アシストという結果を残しました。シンプルなプレーでも、確実にゾーンを破壊していたのです。
例えば、ゾーン内でボールを受けて簡単にはたき、相手が食いついてからの裏狙いが十八番。
ゾーン破壊とはこういうことですね。ゾーンの中でシンプルにボールを受け、ボールをはたき、相手を食いつかせて裏を突く。シンプルで誰にでもできそうですが、スペースが狭く、プレスに来る時間も短いので、状況判断力や確かなテクニックがないと、破壊する前に自分が相手のプレスの前に破壊されます。シンプルでも難しい。
新ゾーン破壊神 カルリーニョス・ジュニオ
ゾーンの中では極力シンプルにプレーすべきです。ですが、中には独力でゾーンを破壊できる強者もいます。今季から新10番を着けるカルリーニョス・ジュニオです。
カルリーニョスはドウグラスと違い、独力でゴールまでこじつけられるような、いわゆる“戦術ドウグラス”に成り得るタイプではありません。ですが、ゾーンというわずかで相手の一番のウィークポイントとなるスペースでは1人で攻略できる能力は持っています。
ゾーンでボールを受け、前を向き、仕掛けることができる。これがゾーンにおける独力での状況打開力です。よく中央に侵入してきたエウソンと、ゾーンでポジショニングしてからのボールキープしてワンツーするなんてプレーやドリブルで相手を引きつけてからのパスなんてこともあります。
1番カルリーニョス自身が起こしたゾーン破壊は、札幌戦での3点目のシーンでしょう。わずかなスペースでターンし、仕掛けてからのゴールフィニッシュで締める。象徴的シーンでした。
【ピックアップクリップ】「カルリーニョス、左足でダメ押しの3点目。エウシーニョからボールを受けると、DFをかわして流し込む。」8.8 北海道コンサドーレ札幌@アイスタ
ゾーンに生まれた天使 高橋大悟
来シーズン戻って来ることが確定済みのギラヴァンツ北九州10番の高橋大悟ですが、彼も典型的なゾーン破壊者です。金子にカルリーニョスはゾーンでの受け手ですが、大悟は出し手になれる選手です。
出し手としてゾーンにパスを出し、自らもゾーンに入って受ける。ゾーン破壊者として、人を動かし空間を作る。ゾーンを生み出してはゾーンを破壊する。かわいい顔しておいてやることはなかなかえげつない男です。
ここまで様々なタイプのゾーン破壊者を見ていきましたが、我がチームのトップオブゾーン破壊者こと後藤優介がここで登場です。
■ゾーン破壊神、後藤優介
本業はストライカーですが、ゾーン破壊においてプレーのバリエーションが豊富なのが後藤です。バリエーション豊富とはいえ、やっていることはとてもシンプルです。シンプルが一番難しいんですが、例えばゾーンでのボールの受け方では
別のゾーンに動いてボールを受ける。これだけで
相手のゾーンはビックリするほど壊れていく。その崩壊したゾーンで
仕掛けていくことで相手のゾーンディフェンスが崩れていき、味方が動くエリアが生まれる。それによってさらに相手が動かされる。
大外にオープンスペースが広がっていく。後藤のボールキープによってポジショナルプレー本来の狙いである、大外にスペースを作るという狙いが現実のものになります。ゾーンで受けることによるその場のゾーン破壊、そして新たなスペースが生まれる。やっていることに特別なことはありません。ただ、相手にとって嫌な位置でボールを受け、嫌なところに展開するだけ。これだけで簡単にゾーンディフェンスが崩れていきます。でもこのシンプルなプレーこそが難しい。そしてそれを実行できる選手もそんなにいないので、こういうゾーン破壊者の存在は、ポジショナルプレーにおいて貴重な存在なのです。
はい、今回はここまでです。ポジショナルプレーにおける相手守備陣形の崩し方、と題して3部作高生のつもりでやっていきました今回のプロローグです。戦術の話の前に、間で受ける、ゾーンを破壊する者から紹介していこうかなと。ポジショナルプレーにおいてどのスペースを使うか、どこのスペースでボールを受けるべきか、そのスペースで何をすべきか、は重要な要素で求められることです。
次回予告「ゾーンを司る:スペースを掴め」
ピーター・クラモフスキ―のポジショナルプレー/優位を生み出すビルドアップ
「目的は、相手を動かすことでありボールを動かすことではない」
ポジショナルプレーの先駆者、ペップ・グアルディオラの言葉である。
正しいポジショニングの下、位置的優位性を獲得しながら相手を動かしスペースを生み出す。ピーター・クラモフスキ―率いる新生エスパルスが目指すプレー原則はどのようなスタイルか。今回は3月28日に行われたジュビロ磐田との練習試合をケーススタディとしてみていく。
■生み出されるダイヤモンドと無数のトライアングル
システムは3-4-3。しかし中盤の形はフラットではなくダイヤモンド。サイドのタスクはウイングに任される。
ビルドアップ時の配置は以下の通り
3バックは横いっぱいに広がり、ハーフスペースには六平と奥井が入る。この配置によって生み出されるはダイヤモンド。クラモフスキ―が中盤をダイヤモンド型にした理由と、ダイヤモンドこそがポジショナルプレーの肝であるわけとは何か。
生み出されしダイヤモンドはこちら。
ダイヤモンドを作ることでさらに、無数のトライアングルを作る。これがダイヤモンドの狙い。ダイヤモンドの点と点を結べば、少なくとも1つのダイヤモンドの中に4つはトライアングルができる。ポジショナルプレーの創始者、ヨハン・クライフは常にダイヤモンドを生み出すために、システムまで3-4-3を好んだほどである。
クラモフスキ―のポジショナルプレーにおいて重要になるダイヤモンドの形成。誰が、どこでどの位置にいることで生み出されるのかを見ていこう。
■サイドでの数的優位作り
3バックの両脇、ソッコと福森は大外に広がる。ボールサイドに配置するストッパーは大外に広がる。この際にバックスは4バックにシステムチェンジ。
逆サイドのインサイドハーフである六平が落ちて、横にスライド。4バックを作る。相手のプレスを往なすうえで選手がどこにポジションを取るかが重要。
ソッコにプレスがかかると、ハーフスペースの奥井へ。金子が下がってダイヤモンドを作る。
大外に金子、中央に竹内、ハーフスペースに奥井とソッコが配置してダイヤモンド形成。ダイヤモンドを作ることで生まれる効果として、「複数のパスコースが生まれる」「相手を引きつけることができる」がある。優位性として位置的優位、数的優位を生み出すことができるのが大きなポイント。だが、最大の狙いとする『誰をどこでフリーにするか』を明確にしない限り、ポジショナルプレーは成立しない。実際のプレーで検証してみよう。
■プレスを無効化にするセットオフェンス
ジュビロ戦の35分のシーンから振り返ってみる。ここで見ていきたいのは、従来のシステムである3-4-3とセットされたシステムから、どんなボールの動かし方をするのかとどんなポジショニングをするか。それはスペースの掴み方と生み出し方、ポジションチェンジから成る状況変化のことである。
※以下の画像 西澤→後藤
福森がボール保持。左サイドから始まるビルドアップ。ボールサイドには当然のように人数を掛けている。ココからどうビルドアップを開始していくか。
福森からサイドに張っていた六平へ。サイドにボールが出たと同時に、後藤と慶太がボールを追い越すように縦に移動。相手DFも引き連れる。
2人が動いたことによって生まれた中央のスペースに竹内が入り込む。これに相手FWが「ハッ!」と気づき、竹内へのパスコースを封鎖に動き出す。
六平の選択は更に後方の岡崎へ。これで逆サイドへの展開が可能に。右サイドのターンに移る。奥井がハーフスペースへ、ソッコが大外に張る。位置的には優位な状況だ。
岡崎から奥井へ。広がる右サイドのオープンスペースでの展開と相手プレッシングがスタート。
奥井から岡崎経由で降りてきた竹内へ。逆サイドへの展開という、福森から始まった左サイドからのビルドアップワークは一段階終了。
左サイドに人数を掛けてスペースを生み出し、生まれたオープンスペースを利用して逆サイドへ展開。展開後に関しては設計不足な点が多いものの、右サイドにはオーバーロード(守備側より攻撃側の方が人数が多いエリアのこと)が生まれていた。
■竹内の“疑似4バック”からのビルドアップ
続いて38分のシーン。GKヴォルピから始まるビルドアップ
ヴォルピからの展開が始まる。
竹内がポジションを落とす。相手DFが付いてくる。
竹内からソッコへ。最終ラインの形は4バック。福森とソッコが実質のSBで、サイドで幅を取るは奥井と後藤。中盤は慶太と六平で、金子がハーフスペースでダイヤモンドを作る。
竹内→ヴォルピと展開して左サイドの福森へ。
中央の六平が外へ。相手も引き連れて中央にスペースを作る。そこに慶太が入る。
福森から中央の慶太へダイアゴナルパス。その慶太の前に、最終ラインから竹内がダイアゴナルランでダイヤモンドを作る。福森・慶太・六平・竹内の4人からなるダイヤモンドを作ることで、各々の選択肢を増やし展開していく。この時の慶太はターンして逆サイドへ展開しようとしたが、相手DFにファールで止められプレーはストップした。
前々回のティーラシンの記事でも書いたが、ファンマ・リージョの言葉を借りると
「ポジショナルプレーの基本的な思想は、狭いスペースでパスを回すことで大外の選手をフリーにすることにある」
これがポジショナルプレーの一番の狙いだ。片方のサイド“ボールサイド”に人数を掛けて、オープンスペースを作り出し、そこに人とボールが入り込む。この繰り返しを行いオーバーロードを作り出す。相手DFがオープンスペースに入る選手をマークするために本来の位置を離れれば、そのエリアは次のオープンスペースとして生まれ変わる。これによって相手DFはゾーンで守っているはずがいつの間にかマンツーマンのようになってしまうのだ。
今回は最終ラインからのビルドアップを中心に見てきたが、次回は最前線にボールが入ったあとのプレーをやっていこう