豚に真珠

サンバのリズムに乗せられて、いつの間にかそのオレンジ色に魅了される。それが清水エスパルスというチームなんだ

【Play back the GAME】2016年J2リーグ第34節 セレッソ大阪vs清水エスパルス/帰ってきたファンタジスタ:奇跡の始まり

■帰ってきたファンタジスタ

2022年、新たな背番号“18”を背おう男、白崎凌兵。2018年を最後に鹿島アントラーズサガン鳥栖を経て4年ぶりに戻ってきた。様々な経験を手土産に、再びオレンジのユニフォームに腕を通す。

 

さて、その白崎と言えばで思い浮かべるのはこの試合ではないだろうか。2016年のJ2リーグ年間ベストゴールにも選出されたあのセレッソ大阪戦。奇跡の逆転自動昇格が始まったあの試合だ。

 

 

このゲームに関してはかつてはレビュー記事を書いたので、簡単なおさらいと、白崎個人を中心に追っていきたいと思う。

 

 

 

■王は中央にいてこそ輝く

このゲームのスタメンから。

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今シーズンもエスパルスに残っている選手として、白崎他は竹内だけという、時代が過ぎていくのを感じると同時に、セレッソ監督だった大熊さんがGMとしてやって来るとはまだこの時は思いもしなかった。

 

白崎の立ち位置は

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松原の動きやポジショニングに合わせて、というのが白崎のポジショニングではあるが、この試合ではほとんど元紀と2シャドー状態で、セレッソの山口蛍とほとんどマッチアップできる状態にする。改めてこの試合を観ると、セレッソはソウザがめっちゃ上がるってのもあるかもしれないが、山口が上がる場面はほとんど皆無。さすがに相手が元紀&白崎では分が悪すぎるか。

 

白崎のメインポジションは左ハーフスペース。高い位置でボールを受けるのもいいが、ポゼッションが安定したのは、竹内が落ちたところにヘルプで入った時。低い位置でも“前向き”にボールを持てたことが何よりの証拠か。この試合に関しては、右SBが三浦弦太でその前が石毛秀樹という関係上、弦太がオーバーラップするシーンはなく、竹内が落ちてきて4バックのビルドアップが行われたが、白崎が左ハーフスペースの深い位置に下りてきて、がポゼッションの肝だった。

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■“ボランチ”白崎のメリット

まずは多彩なビルドアップ。これが最大の利点。低い位置からのパスワークの起点や自らがボールを運べることで相手のプレスを空転させる。

他のメリットとしては、器用なタイプでもあるので1人で何役でも与えられる。ビルドアップとしてのボランチの役目、そして少し高い位置でポジショニングすることで出口にもなれる。トップ下として出口になるのとボランチでありながら出口になれるのとでは、前線の数的関係や相手のブロックを破壊するのにギャップを生むことができ、大きな違いを生み出せる。この試合においては、白崎がビルドアップで何役もやれたことで石毛が右ウイングとしての役割を全うできた(前半は丸橋を消すことができた)ことと、長期離脱からの復帰後初スタメンとなった元紀のビルドアップの負担軽減に繋がる、などなど。どっちもどっちな展開が続いた前半においての白崎の役目は大きかった。

 

 

■4-1-4-1への変更。“トップ下”としての白崎

後半は、酒本をシャドーに入れ勝負を仕掛けてきたセレッソに流れが行く。こっちも後半早々に村田を入れてテコ入れを図るが、その酒本に先制点を奪われリードを許す。

 

状況的に、前節の松本戦を落として残り全勝でなければ逆転自動昇格は絶望的という中で、攻めに出ないといけない状況下、金子と北川を入れて4-1-4-1にシステム変更。また、松原が上がりっぱなしということもあり、白崎が中央に入っての実質3-1-5-1の形に。セレッソ杉本健勇を残して全員が下がって対応の防戦一方。最後は一方的な展開となる。

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中3人(白崎、北川、金子)で数的優位を作ることができ、後方からボールを引き出せる。受け手がこれだけいれば楔は入れたい放題で、結果的にウチの2ゴールはこの3人で攻略して奪った。

 

さて、本題の白崎について、本業であるトップ下に置いては、まずは受け手としてや出口としてのレベルの高さは言うまでもなく。狭いエリアだろうとマークが付いていようとも関係なく納められるのは素晴らしい。

あとスペースの見つけ方。ここは元前線の選手だったこともあり嗅覚はすごいなと。サイドで起点作るよりもハーフスペースで起点作りすることの方が本人の良さも出るし相手も怖いだろうと。

ただ、白崎を2列目で使うとなると、楔を入れられるパサーが欲しい。あとSBの攻撃力。これは必須。左で出るのなら片山よりも山原の方が相性はいいかもしれない。左ウイングは新加入の神谷にカルリーニョスがいるので、可能性が高いのはボランチとしての起用でしょう。

 

 

■狼煙を上げろ

2016年の奇跡はここから始まった。白崎の一撃で始まった。

 

2022年は、これまでのうっぷんを全て晴らす。戦力は揃っている。あとは上積みだけ。

 

 

 

奇跡を起こして見せる