【Play back the GAME】2011/2012ラ・リーガ第29節 ビジャレアルvsレアルマドリード/Who is Lotina?
稀に見る超大型補強を遂行した今年の我がエスパルス。今オフの話題を総なめしておりますが、まずはこの人が全ての始まりでしょう。新監督ミゲル・アンヘル・ロティーナ。バスク出身のスペイン人です。スペインといったら攻撃サッカーのイメージで、監督もペップ・グアルディオラやビクトル・フェルナンデス、今季から浦和の新監督になったリカルド・ロドリゲスなどいますが、ロティーナの故郷、バスク地方出身者には、実は堅実なサッカーを好む人が多く、昨シーズン途中までバルサを指揮したエルネスト・バルベルデもそうですね。
ロティーナはバスク出身者そのもののようなサッカーをやります。始めからイメージは引いて守ってのカウンターサッカー。攻め方は従来のスペイン風サイド攻撃ですが、とにかくブロックが厳重。バスを置く、とも表現されますが、ホントそんなサッカーです。だからヴェルディでボールポゼッションを重視した戦術をしたときはビックリ仰天。副官のイバン・パランコの影響が大きいのでしょう。
そんな今回は、ロティーナとは何者か?をテーマに、あるゲームを振り返ります。ロティーナラストリーガとなった2011/2012第29節、ビジャレアルとこの年勝ち点100で優勝することとなったモウリーニョ率いるレアルマドリードです。
それでは、この試合のスタメンです
ビジャレアルは4-2-3-1。ロティーナは前節の28節から指揮を執っており、これが2試合目。対するモウリーニョレアルは4-3-3。モウリーニョ期によく見られた「ハイプレッシャーの三角形」(モウリーニョVSレアル・マドリー「三年戦争」より)です。
モウリーニョはアシスタントを集め、この「ハイプレッシャーの三角形」の理論化に努めた。(中略)ボランチなら誰を起用しても機能するように見えても、実際にはスペシャリストが必要だった。実践最大の効果を発揮するための明確な能力の持ち主たちだ。レアル・マドリーではシャビ・アロンソ、ラサナ・ディアラ、ペペ、ケディラのうちの3人が選ばれし者だった。
ペペは最適の人材だったが、より重要なエリアであるゴール前を守るCBとして起用しなければならず、緊急時での要因だった。X・アロンソは運動量で不安があるものの、パス能力を買われた。L・ディアラは必要なすべての能力をまんべんなく備えていた。ケディラは1500m走のアスリートのような抜群の持久力の持ち主であり、カバーするエリアの広さでモウリーニョにとっては不可欠の選手となった。
モウリーニョVSレアル・マドリー 「三年戦争」明かされなかったロッカールームの証言 著ディエゴ・トーレス 訳木村浩嗣 発行KANZEN 220項より引用
このレアルの戦術を覚えといてください。実はこのゲーム、レアルの3MFは前半途中で終了します。ディアラに代えてカジェホンを入れるのですが、戦術的交代です。大事に温めていた戦術を変えざるを得なかったロティーナの策とは。
■トライアングルを崩壊したロティーナのプレス
ロティーナの守備で特徴的なのは、ボールホルダーに対する果敢なプレス。レアルはマルセロがボール保持。近くにいるはケディラとアロンソ。
マルセロ→アロンソ→ディ・マリアと繋ぐレアル。ビジャレアルの守備陣形は崩れずにボールホルダーへのプレスを強める。
ディ・マリアからアロンソへ。この時点で最終ラインは5枚になっているが、
アロンソがボールを保持すると、赤丸の3人が動く。要は、どこがプレスの対象なのかを理解できているか。レアルでは誰にプレスに行くのが1番手っ取り早くボールを回収できるのか。
ロナウドの落としに飛び出したディアラに対して3人がプレスに走る。ロティーナの対象は誰か。
このビジャレアル戦は厳密な意味での3ボランチの最後の試合となった。メカニズムは内部から崩壊した。モウリーニョに大切にされたL・ディアラが喧嘩腰で相手の足を蹴りまくってイエローカードをもらい、“自主退場”を恐れたモウリーニョは29分、彼を下げてカジェホンを入れたのだ。
モウリーニョVSレアル・マドリー 「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言 著ディエゴ・トーレス 訳木村浩嗣 発行KANZEN 221項より引用
■ただ引いて守るわけではないロティーナ
レアルの中盤をプレスで破壊したロティーナ。とても降格圏にいるとは思えない守備陣形にレアルはボールポゼッションで優位にプランを進められず、ボール保持してもブロックを作って構えているイエローサブマリンを城壁を崩せません。
ロティーナが破壊した3MFは、ケディラとディアラという、足下のプレーに不安を抱えるプレーヤーにターゲットを萎めてプレスを仕掛ける。しかし、アロンソ以外パスの出し手がいないレアルはポゼッション出来ないので、ビジャレアルに手放します。ビジャレアルが優位にゲームを進めるためにはポゼッションで何とかするしかありません。
見せてくれビジャレアル!!
!?
この時のビジャレアル、っていうかロティーナはビルドアップに関してはほとんど作れていないです。カウンター時の選手の配置は上手いですが、ボールポゼッションによる組立に関しては工夫が見られないのがこの時のロティーナでした。イバン・パランコと出会うまではこんな感じだったんでしょう。
ロナウドとベンゼマによる華麗なワンツーからの先制点はノーチャンス。その後はレアルが中途半端なビジャレアルのボールポゼッションをカモにしてショートカウンターの嵐にする。
ビジャレアルのパスワークの中心はマルコス・セナ。てかセナが絡まないとパスワーク自体成り立たないという、かつてのイエローサブマリンはどこ行ったんだという組織なんですが、ボルハ・バレロがいればまだよかったのかもしれませんが残念ながら欠場。76分にデグスマンをトップ下に入れてから少しは良くなったんかなと。
最終ラインからのパスワークです。ボランチのソリアーノに入ります。
トップ下のデグスマンが落ちてくる。
落ちてきたデグスマンに入ると
セナがフリーでボールを受けられる。デグスマン投入の最大の狙い。前線の人数が減る分、ボールは確実に前線へ届けられる。
ハーフスペースでカニがボールを受けられた。ここで起点がやっと作れた。
こういうシーンは、今はたくさん見られると思います。パランコがこういった攻撃の仕組み作りをやってはいるのではないでしょうか。なので、このゲームがロティーナの全てを表しているわけではないです。このゲームは分が悪すぎる。ビジャレアルは残留争い真っ只中でロティーナは2試合目。対するはモウリーニョのレアルマドリード。逆によく抑えられていると思います。
その後は、84分にセナが直接FKを決めて同点。そのままゲームクローズド。印象として、ロティーナとモウリーニョがぶつかると塩試合になる。レアルも勝ち点100取ったとは思えぬゲームビルディング。見ごたえは終了間際のモウリーニョ、ラモス、エジルの立て続け退場となった乱闘騒ぎくらい。
ロティーナがどんなサッカーをエスパルスで見せてくれるかは分かりません。ヴェルディでやった時とセレッソの時とでスタイルが異なったように、とくに大型補強を遂行した今季はスタメンから読めない。ただ、噛みあえば面白いのではないでしょうか。実績ある選手が多い補強となったので、これまでのエスパルスとは一線を画しているのではないでしょうか。なんにしろ、スペイン屈指の名将率いる今年のエスパルスはリーグの中でも注目に値するチームです。
チームが点獲っても喜びを表さないのはこの時も同じだったか
次回、疾風のごとく現る、ディサロ燦シルヴァーノ
予告:今年は新しいことをやってみたいな、これからの観戦スタイルが変わってくるからこその新たな楽しみもあるんじゃないかな、と思いまして、現在計画遂行中です。こうご期待!!