豚に真珠

サンバのリズムに乗せられて、いつの間にかそのオレンジ色に魅了される。それが清水エスパルスというチームなんだ

川辺駿@ノールックパス ~手練手管~

J2第29節 アビスパ福岡vsジュビロ磐田から、82分の川辺駿のノールックパスを見てみる。

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コーナーキックのこぼれ球を拾う。状況は1on1+1。福岡の坂田大輔が直前のコーナーキックを蹴っていた太田吉彰をチェックしながら、川辺のサイドへのパスコースも同時にチェック。

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川辺は視線をサイドに向ける。坂田は「サイドに来るな?」といった感じで、サイドをケア。この時点で太田は坂田の視野から外れている。

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坂田の目線がサイドに行ったところで、相手の門を通す。

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坂田は完全に逆を突かれ、太田へのスルーパスが通った。

 

ここで問いたいのは、なぜ坂田はサイドに目線を移したのか。ここで1枚の画像を見てもらいたい。

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川辺は出す直前に目線だけでなく、体の向きまで外に開いている。これが決定的なところ。目線までなら、あそこまで逆を突かれることはない。しかし、体の向きまで動作が行われていたら騙される。

 

川辺はサイドに向きを変えていたが、実際のコースは縦。サイドをフェイクに裏に抜ける太田に出した。

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手練手管

ノールックパスというのは、プロでも上手い下手に別れる。それだけ高度な技。下手なノールックパスは首上の動作のみで行われる。アマチュアならそれだけで騙せることができるかもしれないが、プロが相手となると話は別。首上の動作だけで騙すのは非常に困難だ。

 

川辺のノールックパスは高いテクニックレベルを示したプレーである。まだ19歳という年齢を考えると、今後の伸びしろが期待される逸材なのは確かだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

角田誠のプレーを見てみよう/適正ポジションはどこか

8月12日にリーグ戦が再開します。

 

降格圏から脱出するために、この夏の移籍ウィンドーで鄭大世と、角田誠を獲得しました。

 

鄭大世はすでにエスパルスの一員としてデビューしてますが、角田は湘南ベルマーレ戦が初陣となりそうです。

そこで、今回は角田のプレーの特徴を見るだけではなく、ポリバレントな角田にとって、適正なポジションはどこかを考察します。

 

 

川崎フロンターレ角田誠

 

まずは、つい最近まで所属していた川崎でのプレーを振り返ります。

前提として、川崎はボールポゼッションを高く保つスタイルをしており、ビルドアップを非常に大切にしているということを頭に入れておいてください。

 

サンプルとして、今季川崎の最多得点試合となった1stステージ第4節アルビレックス新潟戦を観ていきます。この試合は4-1で川崎の勝ちです。川崎フロンターレのイメージって、バカのように点取って圧勝するだったり打ち合いを制する試合がすごい印象的なんですが、今季はこの4点を取った新潟戦が単独最多得点試合となってます。ジュニーニョや我那覇レナチーニョ鄭大世がいた時代はもう過去です。これはこれで寂しい。っていうか鄭大世ウチにいるわ。

 

では見てみましょう

前半3分

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角田へバックパス

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新潟の選手がプレス。ここで注目すべきは、角田の体の向き。プレスに来ている新潟のラファエル・シルバは角田の右を切っています。そうです。角田は右利きで、そして右サイドはオープンスペース、かなり空いています。エウシーニョがフリーです。ここであくびしてもばれないほど広大にスペースが空いています。

 

で・す・が

 

角田は左に向いてしまう。そこは密集地帯です。右を切られているからしょうがないとも言えますが、ここで差が生まれます。組立力があるかどうかの差です。

では続き

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囲まれて局面は3対2。数的不利。自ら袋小路に追い込まれる状況を生んでしまいます。これはいけない。

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結果、相手にカットされます。

では次

前半6分

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角田は杉本健勇へ楔を放つ。

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ここで杉本は4人に囲まれる。杉本のパスコースは中の中村憲剛と右のエウシーニョ。と、角...田...。アレッ!? 

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ボールは中村憲剛へ。角田はボールもらう気なし。

 

ここが問題!!

角田はこの時、ボールを受ける動きをしなかった。楔を打ってから貰い直す動きがなかったわけです。

 

角田は、楔を放ったところは良かったです。

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問題はこの後。

本来ならば、動きなおしてもう1度もらうことができるポジショニングを取るべき。

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でもこの時角田は動かなかったため杉本には2つしかパスコースがなかった。組立においてバリエーションを2つから3つに増やすということはとても重要なことです。これがカルフィン・ヨンアピン谷口彰悟ならもう1度もらう動きをするでしょう。またそうした動きを風間八宏は求めてます。

 

では谷口とヨンアピンはどうか。見てみましょう。

 

谷口彰悟カルフィン・ヨンアピン

まず谷口。

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角田から大島へ。谷口は丸で囲まれてる左サイドの選手。

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大島が前を向く。谷口が動き出す。

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相手の門を通して、裏で受ける。これだけで相手を2人外した。こういう動きをセンターバックでありながらできる谷口は組立力があるといえます。

相手の背後で動き、パスをもらうことが風間八宏の狙いです。筑波大学から一緒にやっていた谷口はこの動きがスムーズにできています。

 

 

「一番自分の中で変わったと思うのが、相手がパスの受け手をマークしているように見えても、受け手が人を外していたら、そこにどんどんパスを当てていいということ。ボールをしっかり止められて、持てる選手がいれば、怖がらずにどんどん出していいんだと。マークされているようで、実はマークされていないという状態がわかった。少しでも隙間が空いていれば、マークされていないに等しいんです」

 

革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする 著者風間八宏/木崎伸也 発行KANZEN 190項より引用

 

 

これは谷口自らが言っているコメントです。画像の例ではパスの受け手として動いてますが、そういった感覚があるからこそ受け手としても抜群の組立のセンスを発揮できるわけです。

 

では次にヨンアピン

 横浜F・マリノス戦から

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 アデミウソンからボールを奪う。

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 ボールはヤコヴィッチへ。

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 ヤコヴィッチから本田拓也へ。ヨンアピンはフリー。この時点では受ける気はなし。というのも、密集したエリアにいることと、自分の視野にボールと味方、相手を入れていないから。要するにこの時は準備ができていないということです。だから「ボール回すなよオーラ」をビンビンに発しているのです。

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ボールは八反田康平へ。ヨンアピンはバックステップを踏んでいる。ここで準備が整う。ただ下がるより、バックステップをすることで、視野にボールと味方、相手を見ながら下がれば、状況判断がスムーズにできます。

 

 

バックステップは、ボールを自分の視野に入れながらマーカーの視界から外れ、自分のスペースを確保するのに最適な動き方です。

 

Jリーグサッカー監督 プロフェッショナルの思考法 著者城福浩 発行KANZEN 123項より引用

 

 

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ヤコヴィッチがボールを持つと同時に、バックステップで適切なポジショニングを取る。「いつでも来いよバカヤロー」状態になりました。

 

以上が、組立力の説明です。角田とは関係なくなりました。

ここまで言うと、角田の株を下げてしまっている感じなので、角田のいいところを見てみます。

 

これも新潟戦から

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 フリーです。

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 杉本の足元にピタッと楔を入れました。

こういうプレーから見る通り、角田は基本的に足元はできます。村松大輔ほどではないです。パス能力はJの中では平均的でしょう。

 

 

ここまでで言いたいことは、角田はパス能力はあります。フリーなら、プレッシャーを受けていないならいいパスを出せます。しかし、組立においてプレッシャーを感じたり、また動きや精度なんかは高くないです。組立力は低いと言わざるを得ません。起用するならそういったところを考えなくてはいけません。

 

だから、風間サッカーに合わなかったのはそういったギャップが存在したからでしょう。それでも開幕から起用され続けたのは、守備専として置いておきたかったからです。しかし、それで大量失点を喫したら守備専なんていらないわけです。だからラストゲームが5失点を喫したエスパルス戦だったということはある意味当然の結果だと言えます。

とはいえ、何も角田がすべて悪いというわけではありません。角田はキャリアがある選手です。若手ではないので、今から風間サッカーを覚えろは無理です。そういうこともあり、角田のエスパルス移籍は、角田が風間色に染まらなかったということより、風間八宏の起用法が悪いわけでもなく、獲得した川崎フロントが悪いわけです。合うわけがない。だから

 

なぜ角田を獲った?

 

 

 

 

守備における角田誠の特徴。

 守備の特徴として、角田と似た感じなのが村松大輔です。球際だったり、フィジカル勝負だったり、そういうところが持ち味の守備をしています。

 

ただ、もちろんお互い違う点もあります。

例えば村松は、

  • 守備範囲の広さ
  • スピード

 があります。これは角田にはないですね。

一方で角田には

  • 豊富な経験値
  • 高さ

があります。

 

では角田の守備を見てみましょう。

 こちらも新潟戦から

 

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 新潟のショートカウンター。角田はあえて間を空ける。もしこの時に詰めてしまえば

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こうなる。画像では、すでに田中達也が裏を狙っていた。

では次

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角田の次の仕事は、左サイドからカットインするラファエル・シルバをチェックすること。

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小林裕紀がボールを持っている。ここでラファエルをシャットアウト。2人に「ここはチェックしてるからな」と警告しているかのように詰める。

この時のそもそもの狙いは、ラファエルにボールを入れさせないこと。だから気づかれていい。むしろ気づかせている。気づけば入れられることはないから。

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小林はラファエルを諦める。角田もラファエルから離れる。ラファエルは少し寂しそう。

ここで田中達也が裏を狙っている。角田の次の仕事は、田中を抑えること。田中はスタートを切っているため、今更封じることはできない。だから、田中に入ったあとを抑える。

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パスが出る。

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1対1

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田中から小林へ。田中はやり直すように指示している。角田はこの一連のミッションをコンプリート。

 

経験値高い角田は、適切なタイミングでの守備が本当にすごいです。ジャストなタイミングでジャストな仕事をしている。村松はすべてクラッシュするように非常にアグレッシブですが、角田の守備は職人肌です。ここが見どころでしょう。

 

 

適正ポジションはどこ?

ここまで組立から守備をやりました。ベガルタ仙台ではボランチで中盤のフィルターとして輝いていました。ベガルタのようにボールを保持することをメインとしない戦術なら輝きます。しかし、川崎フロンターレのように、ポゼッションを大切にするチームだと、微妙な感じになります。代行監督の田坂和昭がどんな形を作るかは分かりません。おそらく(というか絶対)守備的なチームになるでしょう。それならばボランチです。組立力の弱さを隠蔽できます。しかし、エスパルスのチーム全体として、やはり技術ある選手が多いです。ボールを保持すればそれを大切にするでしょう。そうなるとボランチでは厳しくなる。サイドで使うのはもったいない。

だから結局は戦術次第です。ポリバレントな選手は、ポジションと戦術次第でとびっきりの輝きを見せます。しかし、ポリバレントという言葉に騙され、さまざまなポジションで起用されると、ダークオーラを発します。

ポリバレントな選手は1人でもいれば便利です。でもそれは短期決戦の話。長期的に見るならば適正ポジションを見つけるべきです。なので角田のポジション=現在のチーム戦術が分かると思います。だからがんばれ角田、田坂!!

 

今回はここまで。

次回は

「エースストライカーの条件」か「超一流ゲームメーカーとは」 

または「中村俊輔@俯瞰視野」をやりたいと思います。

 

 

フォルラン@シュート ~ゴールこそ正義~

先週、ディエゴ・フォルランセレッソ大阪を退団しました。

 

 

ウルグアイ代表でありながら極東まで来てくれたこと。Jリーグでプレーしてくれたこと。いろいろありました。

 

 

 

今回はそんなフォルランに敬意を表し、彼のゴールとなったシュート振り返ります。

 

サンプルに挙げるのは、J2第5節ジェフ千葉戦の1点目と、J2第14節V・ファーレン長崎戦のフリーキックです。

 

 

 

まず千葉戦の1点目

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これです。思い出しましたか?

 

 

長谷川アーリアジャスールのフィードをダイレクトで叩き込むというワールドクラスのボレー。

 

では1つずつ見ていきましょう

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この時点では前のスペースを確認している

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スペースを確認したところで視線をボールに移す。

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右足で軽く飛ぶ。これによって、両足にかかる重心をフラットにし、体全体にかかる重力を軽くする。この時点でシュートすることを決めていたといえる。

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フラットにした足の重心を左足に掛ける

 

 

では別の画像から

横からフォルランを見てみよう

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右足で飛ぶところですね。両足で飛ぶと書いてありますが、右足で飛ぶ直前を表してます。

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ボールがバウンドする。ボールを見ながらシュート体制に持ち込む

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シュート体制に入る

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左足首を固定。下半身の軸をぶらさない。

その代わりに動かすのは上半身。腰をひねり、左手でバランスをとり上半身を開く

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左足は完全に固定。最後まで軸はぶらさない。

開いた上半身は左手でバランスをとりながら、絶妙な開き具合を調整する。シュートコースはフォア。上半身は前傾姿勢。腰をひねり、体を開きすぎず左手で調整。シュートする右足を体全体でサポートしている。

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シュートシーン。体重を一気に右足に掛ける。左から右へ。左で重心を溜め、打つときに右足へ。この体重移動のバランスがシュート精度に繋がっている。体全体で打っている。

 

 

このシュートの何がすごいって、実はこれ、ゴールを1回も確認していないこと。これまでの画像でゴールに視線を移したシーンは0。打つときも視線はボール。ルックアップしていない。感覚でやれている。世界最高峰のストライカーはゴールの位置を体に浸み込ませている。

 

 

では次。長崎戦のフリーキック

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思い出しましたか?これです。

 

 

では見てみましょう。

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先ほどのシュートと同じ。軽く飛ぶことで重心を軽くする

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山口蛍の頭に隠れてよくわからないが、軸足となる左足はボールから距離を置いたところに置く。中村俊輔も以前なんかの番組で言っていたけど、軸足とボールの距離を空けると、体を回すだけの懐具合が良くなるとかなんとか。おそらくフォルランも一緒。腰を使って蹴りたいから軸足とボールの距離を空ける。

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このシーン。

上半身はまっすぐにする。この上半身と左足の2つからなる軸を固定する。

この際に左手を使いバランスをとる

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腰から左足全体にかけて体重を乗せる。

角度がついていることから、上半身とボールの距離感を保つ。この理由としては先ほどにも述べたように、腰を使って体全体を回して蹴りたいから。上半身とボールの距離が近いと、体を回せなくなる。また体重移動もままならない。この蹴り方では重心を掛けることで、腰にゆとりをもたらす。

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右足は腰をひねりながら回す。ボールを擦るというより、腰を中心に足を回すという感覚でボールを蹴っている。だからスピードと落差のあるフリーキックが蹴れる。尚、軸足となった左足は、踏み込むときに寝かせた左足首浮かせ、右足に体重移動させている。

 

 

 

ゴールこそ正義

昨年までセレッソにいた南野拓実フォルランからシュートの意識を持つようにと教わったらしい。ゴールするという意識は前線の選手である以上、必ず持っていなければならないということだ。

 

ディエゴ・フォルランというストライカーは、僕たちにサッカーの基本を改めて教えてくれた。FWの仕事はゴールだけではない。柳沢敦がそんなこと言ってたけど、確かにそうだ。でも、点を取らないFWに存在価値はない。FWはゴールこそが正義なんだ。

 

 

 

彼は日本から去った。

次に再会するのはいつだろう。

でも僕たちは、この偉大なストライカーがJリーグのピッチでプレーしたという記憶が消えることはないはずだ。

 

 

改めてお礼をしたい。

 

ありがとう。ディエゴ・フォルラン

 

Gracias. Diego Forlán

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ジェイ@ポストプレー ~岩石封じ~

J2リーグ第17節ジュビロ磐田vsツエーゲン金沢から、ジェイ・ボスロイドのプレーを見てみる。

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このポストプレーについて。

 

まず、ボールが空中にいる間に相手を確認。それからの一連のプレーを見てみよう。

 

競り合う直前、ではなく競り合う体制を作る前に相手を確認している。

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あ~。上手い。

余裕をもってポストプレーをするために、競り合う前に相手の位置を確認する。相手を見るのはこれが最終確認。

 

次に、左手で相手をブロックする。レフティーであるジェイは左足でトラップしたい。だから、左足でトラップできるように体を外側に向け、左手を使い相手を封じる。このポストプレーは、あらかじめ左足で収めたいという志向があったこともあり、相手からの左足へのプレッシャーを回避するために行った動作ともいえる。

 

そして左足を完全防備したことで、完全に相手の前に体を入れ、相手の動作そのものを封じる。

 

最後に左足でトラップし、ここでも左足へのプレッシャーを回避するために左手を使ってブロックする。

 

 

岩石封じ

相手を寄せ付けずに、完全に相手をブロックし動作を封じる。

 

ジェイのポストプレーが上手いのは、これらの動作が機械的に動けているからだ。さすがアーセナル下部組織出身で元イングランド代表は違う。

 

 

オマケ

イングランドでも話題になったという、この試合でジェイが魅せたプレー

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これはすごかった。

 

なんかアダイウトンも含めてウチに来てくれないかなぁ。無理か。無理なのか。そうなのか。

 

 

 

 

 

 

 

ヤコヴィッチvsクリスティアーノ

 

豚似真珠「こんにちは!今日は日立台サッカー場からヤコヴィッチvsクリスティアーノのパッキャオvsメイウェザー並の世紀の1戦を録画でお送りします。実況を担当します豚似真珠です。『豚似』が苗字です。そしてこの1戦の解説をスポナビから来てくれました、猫煮小判さんが担当します。よろしくお願いします」

 

猫煮小判「よろしくお願いします」

 

豚「さあ、5月2日の日立台ですが、コンディションはこちらです」

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豚「まさにサッカー日和ですね」

 

猫「本当にそうですね」

 

豚「それでは試合に参りましょう!第1ラウンドです」

 

ラウンド1 

豚「開始24秒でいきなり訪れます」

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豚「赤がクリスティアーノで、青がヤコヴィッチです」

 

猫「いきなり来ましたね」

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豚「クリスティアーノが仕掛けます」

 

猫「クリスティアーノが1歩前に出てますね。しかしヤコヴィッチも速いです」

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豚「クロスを上げますが、ここは繋がらず。最初は軽いジョブ程度ですか?」

 

猫「そうですね。まだ始まったばかりですからね」

ラウンド2

豚「こちらは1分の画像です」

 

猫「まだ1分ですか。もう2ラウンドですよ」

 

豚「早いですね」

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豚「ガッツリいってます」

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豚「クリスティアーノセンターバックに下げましたが、このプレーはどうでしょう?」

 

猫「これは完全にヤコヴィッチクリスティアーノを抑え込んでますね」

 

豚「と言うと?」

 

猫「クリスティアーノは前を向きたくても向けません。完全に体を寄せてるからです。そして低い位置まで押し戻されています。ヤコヴィッチの完勝と言っても過言ではないです」

ラウンド3

豚「こちらは2分です」

 

猫「開始2分で3回の攻防戦ですか」

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豚「ここも激しくぶつかってます」

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豚「クリスティアーノヤコヴィッチが離れた瞬間にヒールパスをします」

 

猫「左SBの輪湖がオーバーラップしてきたので、ヤコヴィッチは輪湖に、クリスティアーノは中盤のセコンドに任せた瞬間ですね」

 

豚「輪湖に通れば決定機に繋がります」

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豚「おっと!!ヤコヴィッチはこれを見切ってパスカットしました」

 

猫「ヤコヴィッチの読み勝ちですが、彼の足の長さも手伝ってますね。この時のヤコヴィッチは重心が後ろにかかってました。前にはなかなか足はでないですよ。それでもパスカットできたのは彼の身体的な能力も優ってる証拠です」

ラウンド4

豚「こちらは23分です」

 

猫「かなり空きましたね」

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豚「こちらもヤコヴィッチはガッツリ行きます」

 

猫「ガッツリ行くのでクリスティアーノは下げるしか選択肢はないですね」

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豚「輪湖から大谷と繋いで、再びクリスティアーノにボールが行きます」

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豚「ここもインターセプト!」

 

猫「素晴らしいですね」

ラウンド5

豚「解説の猫煮小判さん。口数が少なくなってきましたが、次はラウンド5です」

 

猫「いや~。この対決は見応え抜群ですからね」

 

豚「25分です」

 

豚「空中戦です」

 

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猫「この対決初となる空中戦ですね」

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豚「アレッ?!プレーが止まりました。何があったのでしょう」

 

猫「ヤコヴィッチ杉山浩太が主審にアピールしてます」

 

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 豚「あ~。明らかなハンドですね」

 

猫「これはしょうがないです」

ラウンド6

豚「次は26分です」

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豚「ヤコヴィッチレアンドロについてます。クリスティアーノは後ろのスペースに走りこんでます」

 

猫「『出せ!』って言ってますね」

 

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 豚「クリスティアーノは裏に抜けました。チャンスです」

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豚「ん?ちょっと待ってください。あの後クリスティアーノはボールをロストしてボールはセコンドのレアンドロへ」

 

猫「なんかありましたね」

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豚「ゴールキックになりましたが、セコンドのレアンドロとなんかあったようですね」

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豚「ヤコヴィッチは顔を抑えてます」

 

猫「詳しく見てみましょうか」

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豚「アッパーが入ったみたいですね」

 

猫「もう少し見てみましょう」

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豚「あ~。セコンドのレアンドロが『俺も混ぜろ!』と言わんばかりのプレーです」

 

猫「余程世紀の1戦に出たかったんでしょうね」

 

豚「ヤコヴィッチは抗議しましたが認められず、試合は続行です」

ラウンド7

豚「次は35分です」

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豚「クリスティアーノは前を向いてドリブルです」

 

猫「このマッチアップで初めてじゃないですか」

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豚「裏に走る工藤へ絶妙なクロス」

 

猫「ヤコヴィッチは簡単に上げさせてしまいましたね」

 

豚「どうして上げさせてしまったのでしょう?」

 

猫「おそらく裏に走ってたレアンドロを気にしていたんでしょう。先ほどのプレーでレアンドロも参戦する気満々でしたから。しかし、クリスティアーノに簡単に前を向かせてしまったのはいただけないです」

ラウンド8

豚「36分です」

 

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豚「クリスティアーノヤコヴィッチの裏で走り出してます」

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豚「裏に出ます」

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豚「うまくボール奪取しました」

 

猫「まだまだありますよ」

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 豚「体を寄せて上手く挟み込んで取りました」

 

猫「枝村がプレスに来るまでに前を向かせなかったのが勝因ですね。それにしても本当にこの日のヤコヴィッチは効いてます」

ラウンド9

豚「42分です」

 

豚「GKの菅野からのボールです」

 

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 豚「競り合いです」

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豚「これはファールか?」

 

猫「いや、これはノーファールです。上手くショルダーでブロックしました」

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豚「調子に乗ってるヤコヴィッチ。ここでいつ覚えたかは分からない関西弁を使いました」

 

猫「前半のすべてのマッチアップ、ほぼ勝ってますからね」

ラウンド10

豚「後半です。時間は64分。かなり空きましたね」

 

猫「そうですね。ヤコヴィッチのタイトなマークに苦しんでいたので、低めの位置にいて枝村とマッチアップしたり、中にいることが増えましたからね」

 

豚「確かに。後半は武富やレアンドロとマッチアップする機会が増えましたもんね」

 

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 豚「空中戦です」

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 豚「クリスティアーノが競り勝ちます」

 

猫「レアンドロが裏に抜けてますよ」

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豚「お~。ここはレアンドロには合わず」

 

猫「しかし、競り合いではクリスティアーノが上回ってましたね」

 

豚「え?そうなんですか?」

 

猫「2枚目を見てください。完全に体を入れてますよね。ヤコヴィッチは体制的に競り合いがしずらくなっているわけです」

 

豚「なるほど」

ラウンド11

豚「69分です」

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豚「レアンドロポストプレーします」

 

猫「クリスティアーノヤコヴィッチは走り出してますね」

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豚「ボールが出ます。」

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豚「ヤコヴィッチはスピードはありますが、ここはクリスティアーノに軍配!」

 

猫「GKの杉山力裕が出ますよ」

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豚「力裕のクリアがクリスティアーノに当たりゴールラインを割ります」

 

猫「セコンドとして素晴らしい働きです」

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ファイナルラウンド

豚「いよいよ最後のラウンドです」

 

猫「長かったですね。いよいよ最後ですか」

 

豚「71分です」

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豚「茨田から大谷へ展開されます」

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豚「大谷が折り返し、2人の元へ」

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豚「アレ?2人が睨み合ってます」

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 猫「あ~。完全にやりあってますね」

 

豚「詳しく見てみましょうか」

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 豚「あ~。手が出てます」

 

猫「前半にもそのようなシーンがクリスティアーノ側にもあったので御相子ですね」

 

豚「以上で試合は終了です」

 

猫「決着はどうなったんでしょうかね」

 

豚「結果が出ました。結果は......。なんと引き分け!!スコアレスドロー!!」

 

猫「この試合と同じかい!」

 

豚「そりゃあそうです。お互い勝ち点1なので、この勝負も引き分けです」

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豚「2人とも悔しがってますね」

 

猫「素晴らしいマッチアップが続きましたからね」

 

豚「次回の対戦はセカンドステージ第15節。IAIスタジアム日本平です。この試合も楽しみですね」

 

猫「お互いいい状態で戦いたいですね」

 

豚「ではここで日立台サッカー場から失礼します。解説の猫煮小判さん、本日はありがとうございました」

 

猫「こちらこそありがとうございました」

 

『フットボールサミット』を読んでみた/「清水のサッカー」とは何か

 

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大榎克己の覚悟

 

レジェンド

 

 

この言葉、あなたはどのように解釈しますか?

 

たいていの人は尊敬に値する人のことだというだろう。

清水エスパルス監督の大榎克己は正にこの言葉が似合う人だ。

 

 

僕は大榎本人と直接話したことはないので彼がどのような人物かは、詳しくはわからない。

では何故、彼は尊敬に値する人なのか。

 

 

それは選手としての貢献度の高さだろう。

こんなことを言ったら本人には失礼だが、プレーヤータイプ的には地味な役回りだった。しかし、勝負どころでは華のあるプレーをしていた。

″選手″大榎克己は、エスパルスサポーターから支持され、愛される選手だった。

 

大榎がユース監督になったのは2008年。彼の下でプレーした選手は現役時代の大榎をあまり知らないのではないか。それでも、例えば石毛秀樹犬飼智也は大榎をエスパルスのレジェンドであると認識している。彼がエスパルスに残したモノはしっかり受け継がれていたのだ。

 

 

大榎克己の″清水″に対する覚悟は相当なモノだ。

清水東では「三羽烏」の一人として全国を制覇した。清水のサッカーが栄光をその手に獲った時を生きていた。そしてエスパルス。母体がなく、すべてを1から始めたチームを支え、名門と言われるようにまでした。正に清水のサッカーをプレーヤーとして体現し、そして成功を収めた勝者とも言える。だから彼にはプライドがある。このプライドは決して僕たちには、そしてそれはもしかしたら彼の下でプレーしている選手にも理解し難い、想像を絶するほどの規模なのかもしれない。勝ち取った成功者だから考えることができる″清水のサッカー″は、決して下に見られてはいけない、常に勝者でありつづけなければならない、そういったメンタリティで生きている。ではそれを体現できるのは誰か。長沢駿もインタビューで似たようなことを言っていたが、静岡、清水の人間だけなのかもしれない。しかし、その考えはもうとっくに終わりを告げている。清水から有能な選手は生まれてこなくなった。いや、全国に有能な選手が生まれるようになった。

 

清水エスパルスは経済力で戦えるチームではない。育成で戦うチームだ。たとえ他チームがどんな大型補強をしようが、どんな戦い方で来ようが、清水である以上、すべてのチームを圧倒的にねじ伏せなければならない。それが大榎のプライドであり、覚悟である。

 

 

「クラブ」と「チーム」の違い

以前、なんかのコラムでセルジオ越後が「クラブとチームは全く違うんだぞ」みたいなことを言ってた。クラブとは1企業である。お金がなければやっていけない。それはどこの企業も一緒だ。エスパルスもそうである。

 

今までのエスパルスは、内部の人がクラブ経営をしていた。まぁ、これはある意味当然ともいえるかもしれないけど、エスパルスに関わる人だけがクラブを支えていく。それが特徴でもあった。

 

しかし、それは一つ間違えた方向に舵をきると、とんでもない方向へ行ってしまう。内部だけなら、お互い共通の目的を共有しているからやりやすさはあるだろう。だが、外部との差が空いてくる。グローバルな現代では時代遅れなやり方だったのかもしれない。

今年から新社長に左伴氏が就任したが、時代のニーズに合わせてきているといえる。日産という世界的な企業のエリート営業マンが地方クラブにやってくるのは、奇跡的なことだ。

左伴氏がサッカーにとても意欲的な人であることもそうだろう。イングランドなどを例に挙げていたが、サッカーが生活の一部である環境では、ビジネス的にも好循環が生まれやすい。社長のパイプでも、例えば関東の企業の中に「実は静岡出身です」と言われスポンサーまで来るなんてこともあるらしい。これは静岡ならではだろう。新しい風を取り入れたことで経営面でも変化が生まれてきている。

 

 

ここまで言うと、今までの体制を批判しているみたいに思われるかもしれないけど違う。前社長の竹内専務も本当に努力してくれたと思う。

 

原強化部長のインタビューの中にゴトビ氏の解任経緯と大榎就任経緯のことが書かれているが、強化部長を通さずレジェンド(大榎)を監督になんて、他のクラブではあり得ないだろう。ゴトビとも最後は上手くできていなかったことや、赤字経営のことも考えると、よくこんな状況で仕事ができたなって思う。

 

ゴトビというワードが出てきたのでそこについて少し。

毎年毎年ストライカーの補強を訴えていたが、経営を考えると難しかっただろう。足元が上手く、サイズのある選手というのは中々いない。日本人選手では全く思い浮かばない。駿はその意味ではゴトビ好みのFWだったと思う。原さんは経営には直接関わらない立場だから(強化部長だからそうだよね?)、補強費が今みたいに増やされているのだったら、どんな補強をしたのだろうかと思う。きっとゴトビの眼鏡に適う選手が補強できたのかもしれない。

しかしゴトビのサッカーは清水の文化には根づけなかった。僕は「オランダスタイル」は世界的にもトレンドだと思うし、ゴトビも斬新な戦術や采配をしていたから好きだった。合わなかったのはしょうがないことだし、目指すべきサッカーの再確認ができたのだと思いたい。

 

 

プライド≠フィロソフィー

結局のところ、「清水のサッカー」って何?

 

ザックジャパンも「自分たちのサッカー」とか言っときながら惨敗したわけだし、自分のとかそういった事に溺れているわけだ。

 

 

フットボールサミットにはパスサッカー+サイド攻撃と書かれている。確かに強かったときはパスで相手をいなし、サイドからゴリゴリ攻撃していった。アルディレス&ぺリマンのときはサイドには市川大祐やアレックス(三都主アレサンドロ)という、スペシャリストがいた。

 

清水のサッカーがパスサッカー+サイド攻撃というのであるなら、それはそれでいい。勝てるならね。

でも全国各地でサッカーが普及されている現代でそのサッカーは通用するのだろうか。

 

僕の答えはNOだ。そのサッカーは時代遅れだ。戦術が進化していき、簡単に点が入らなくなった今では、そのスタイルでは勝てない。プラス@が必要だ。

大榎が清水のサッカーとして頑なにそのスタイルをやるのであるなら、僕は支持できない。それはスマホ全盛期の時代にガラケーで勝負するようなことと一緒だからだ。勝てるわけがない。

 

プライドを持ってやるのは全然問題ない。しかし、プライドだけで勝てるほど世の中甘くない。清水のサッカーだからというプライドで勝負するのなら、そのスタイルは今すぐにも捨てるべきだ。ただ、そのスタイルは墓場まで持っていく覚悟″フィロソフィー″であるのなら、僕は全力で支持したい。ペップ・グアルディオラレアル・マドリードに大敗しても自身のフィロソフィーとしてポゼッションスタイルを捨てないことは、それだけでリスペクトされるに値する。

 

大榎のフィロソフィーはわからない。清水のサッカー=大榎のサッカーであるのなら、それが自身のフィロソフィーであるなら、どんなに結果が出なくても、どんなに批判されようとも僕は応援していきたい。僕がアフシン・ゴトビを支持したのは、彼には明確なフィロソフィーがあったからだ。ホームでどんな結果になろうとも攻撃スタイルを捨てなかったのは、そこに確固たる信念が、哲学があったからだ。

 

 

エスパルスと大榎の未来は神のみぞ知る。大榎の覚悟は相当なモノだった。選手はどうだろうか。

ある記事ではエスパルスの問題点はメンタルであるということが書いてあった。えっ!!メンタル?!

 

僕は精神論を語るのは好きではない。何故なら人の心は他人にはわからないからだ。何年か前の、確か2008年だっけかな、ナビスコ決勝で負けた時の言い訳が「メンタルだ」とか誰か言ってたと思うんだけど、確かに誰か言ってた。これ聞いて「お前のメンタルなんて知らねぇーよ」ってマジで思ったんだけど、プロである以上、メンタルを問題定義するのは論外なんだ。ブラジルW杯後に、スペイン代表のシャビ・アロンソが「俺たちはCL決勝を戦ったこともありメンタル的に不十分だった」とかいってチームメイト(特にバルサ勢)から批判を受けてたけど、プロがメンタルどうこう言うのはおかしい。

サッカー選手の年齢的には若くないんだから、今更メンタルなんて言うのはどうだろうか。大榎の覚悟が壮大なほどであるのに、選手がそれに答えられないのはやってはいけないことだ。

 

 

ARE  YOU READY?

既に10試合を終えた。

シーズンの3分の1を終えたのだ。

いまだに1勝。このままでは降格まっしぐらだ。

 

エスパルスよ。覚悟はできているか?

エスパルスが勝つためなら、あらゆるものを犠牲にする覚悟はあるか?

 

最近、日本でルイス・スアレスの自伝が発売されたが、彼は勝つためなら自分を、チームを、周りの人までもを犠牲にしてきた。彼は生まれつき勝つことだけを目的に生きているようである。

 

別にエスパルスの選手に噛みつけとか、ゴール前でハンドしろとかそんなことは言わない。ただ、エスパルスが勝つことに対し覚悟はあるかどうか。大榎や澤登正朗が言ってたように、エスパルスが勝つためなら何でも尽くすようでないとダメなんだ。

それがプロ。エンターテイメントである。

 

1stステージはすぐに終わる。

どんなにつらい試合が待っていようと戦わなくてはならない。

もう前しか向けないほど下がっただろう。準備はいいか。覚悟はできているか。

 

すべてが整ったとき、勝利の女神はきっと微笑んでくれるはずだ。

 

 

次回については、「ジェイ@ポストプレー」か「ヤコヴィッチVSクリスティアーノ」か「本田拓也の気持ちを読み取ってみよう」のいずれかをやりたいと思います。

ピーター・ウタカ取扱説明書

 

久しぶりの上陸 アフリカンプレーヤー

 

皆さんはアフリカの選手と言えば、何を連想するだろうか。

フィジカルや身体能力に優れ、野性的本能で動き出す選手を頭に浮かべるのではないだろうか。

 

例えば、サミュエル・エトーディディエ・ドログバ。そんな選手が代表的な選手だ。

 

 

ただ、Jリーグではアフリカ系の選手をお目にすることはあまりない。

古くは、ガンバ大阪パトリック・エムボマ。最近では、浦和レッズ京都サンガでプレーしたブルキナファソ代表のウィルフリード・サヌがプレーしているが、他で思いつく選手は僕の中ではいない。

 

 

 

そんな中で元ナイジェリア代表のストライカー、ピーター・ウタカエスパルスに加入した。エスパルスの躍進のカギを握るのは間違いなく彼だ。これからは、そんなピーター・ウタカのプレーを見ていきたい。

 

ピーター・ウタカのプレー

まず、ウタカの特徴から。

J1第3節松本山雅戦の51分のプレー。彼のポジショニングに注目。

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本田拓也から楔を受けるが、ウタカのポジショニングは6人のディフェンダーが生み出す「ボックス」の中心にいる。このポジショニングにいることはとても重要。

 

なぜ重要かというと、ボックスで受けたとしたら、相手ディフェンダーはその選手に目線を移す。これはボールウォッチャーという現象だ。ボールを受ければ、味方の誰かがフリーになる。そこに出せば、非常においしい展開になる。

ウタカはこのポジショニングをとるのがうまい。

 

次にボールを保持しているときのプレー。

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ウタカはボールを保持し前を向く。黄色で囲まれたDFは後ろに重心が掛かっているので、ウタカにプレスが来ることはまずあり得ない。

ウタカに用意された選択肢は2つ。前方と左斜め前の2つのスペースである。

 

ウタカが選択したのは、前方のスペース。村田和哉が走ったが、惜しくも届かなかった。

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これらのプレーを観ていくと、ウタカのある特徴が見えてくる。

 

  • ボックス内でのポジショニング獲りがうまい
  • 視野が広く、パスセンスに優れる

 

この特徴からして、ウタカは純粋なストライカーではないことがわかる。

得意としているのは、最前線とトップ下の間。9.5番タイプの選手だ。周囲を上手く使うことができるので、ウタカを活かすには周りの選手の動きが重要になる。

 

まず、ウタカに対してはシンプルに当てること。

ウタカは競り合いはあまり強くない。ヘディングのセンスはあるが、ウタカはポジショニングで勝負するタイプだ。だからロングボールをウタカに当てて後は任せた、といった無責任なことをしてもウタカは活きない。足元に出せば、確実にキープしてくれる。

 

もう1つは、周囲の選手がどれだけウタカが生み出すスペースを突くことができるかということ。

先ほどの村田へのパスもそうだが、ウタカがキープすることで自然とスペースが生まれてくる。そこを周囲が感じ取ることができるかどうか。また、ウタカの独特なリズムに周囲が合わせることができるのかどうかということ。

 

 

これを踏まえて、ナビスコカップ第2節横浜F・マリノス戦を見てみる。

 

 

 

ボックス内における、ウタカのプレー

前半7分。ウタカが2対1という数的不利な状況でボールキープする。

赤丸のウタカは右足のアウトサイドでボールタッチしている。これは、この位置でボールタッチすることで相手DF2人からボールを遠ざけることを意味する。ボールキープが成功する1つの秘訣である。

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本田がパスを要求している。そこへ出せば前向きな本田にフリーな状態でボールを出せることができるからだ。

 

この後のウタカ。

 

 

相手DF3人が生み出す三角形のボックスに入る。

 

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相手ボックス内でパスを受けたウタカは、3人を引きつけサイドに出す。

このプレーは、とてもシンプルかつ、チームにリズムを与え生み出す、とても効果的なプレーである。

 

 

ウタカのリズム

ウタカは独特なリズム感でプレーしている。

1つのキープ、1つのダイレクトプレー。すべてが計算されつくされているようである。

 

タメを作るところでも、トラップから体の向き、パススピードが完璧に連動している。

次の画像を見てほしい。

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ウタカはボックスの中で受けようとしている。その裏のスペースへミッチェル・デュークが走り出している。

 

この時のウタカ。1歩でトラップしようとしている。これが2歩以上になれば、後ろで構えている中澤佑二が詰めてくる。なぜなら、2歩以上になれば余計な時間がかかり、その間に詰めるだけの余裕が生まれるからだ。

しかしウタカは、わずか1歩でトラップしようとしている。この時に詰めてしまえば、ウタカほどの身体能力なら、簡単に裏に抜けていくデュークへパスを通されてしまうのだ。

 

だから中澤は詰めることができない。ウタカの独特なトラップリズムが相手DFをコントロールすることもあるのだ。

 

 

次にダイレクトプレー。

碓井健平からのゴールキック

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ウタカはダイレクトでポストプレーをする。

一般的なプレーであるなら、ダイレクトではなく、タメを作ることをする。なぜかというと、これはゴールキックだからだ。相手最終ラインはセットされている。

 

ただ、この画像をよく見てほしい。この時のマークは中澤なのだが、あの中澤が簡単にダイレクトでポストプレーを許している。

実は、当初のウタカに対してのマークは栗原勇蔵なのだが、それを一瞬で外している。駆け引きにより、マークを振り切ったのだ。

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そして竹内に落とすのだが、この後のプレー。

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すぐさま裏に抜け出し、決定機につながる。完全に中澤と栗原を出し抜いている。

 

 

ダイレクトプレーをするための微妙な駆け引き。一気にギアを上げたかのようなスピード。全てにおいてJリーグの中ではクオリティーが群を抜いている。チームがウタカのリズムになれることが今後の課題になるだろう。

 

 

ウタカの活かし方

周りを上手く使うことができ、駆け引きやポジショニング、視野の広さは一級品だ。マリノス戦の解説をしていた清水秀彦は、ウタカはトップ下がいいのではといっていたが、僕はそうは思わない。ウタカは1トップだからこそ活きるタイプだと思っている。その心はというと、最前線でのキープ、駆け引きの上手さは絶対的な武器になると思うからだ。

 

 

パスセンスのあるフォワードというのは今時珍しくない。かつてFC東京でプレーしていたルーカスは、全盛期は最前線で輝きを放っていた。ヨーロッパに目を向ければ、レアルマドリードカリム・ベンゼマパリ・サンジェルマンズラタン・イブラヒモビッチパルマアントニオ・カッサーノなどがいる。ただ彼らが活きているときは決まって2列目の選手との連携がしっかりしている(イブラヒモビッチは1人でもできるタイプだが)。

 

 

ウタカも同じ。ウタカを活かすも殺すも2列目の選手に懸かっている。最前線でタメを作ることができれば、崩しにおいていろんなアイデアが浮かんでくる。大前元紀やデュークといったテクニックや縦の推進力がある選手にとってはやりたい放題できる環境が整うのだ。

そのためにはウタカにはストレスなくボールを預けることが条件となる。ロングボールを当てたり、無理なスルーパスを送るのはナンセンスだ。そのかわり、ウタカに預けることができれば、間違いなくウタカは仕事をしてくれる。

 

ウタカを活かすこと。それが今シーズンのエスパルスの最優先事項となる。

 

 

補足(2017年2月28日)

なんかスゲーアクセスが集まってるなと思ってたら、FC東京サポさんが見て下さっているみたいですね。ありがとうございます。昨年も広島加入後に物凄くアクセスが集中していたので、「何事か!」と思いましたが、ありがたいことです。

 

さて、まず話を始める前に前提としまして、この記事は2015年に書いた記事、要するにウタカ日本上陸直後に書いた記事になります。そしてもう1つ。これは「2015年のエスパルスなら、どうウタカを組み込むのか」という記事だということです。なので、この記事がウタカの全てだ!というわけではありません。そこはご注意を。

 

 

では始めます。

ウタカの長所として、最初の方でも書いてありますが、ポジショニングがいい、またマークを外すのが上手いというところがあります。それはいいとこですね。で、懸念されるのは、ウタカの個は十分強さが証明されているので説明抜きでいいんですが、組織にどう組み込むのかというところ。この2015年の序盤戦エスパルスは、当時の大榎監督は頑なに4-2-3-1をやっていました。後世に伝わるであろう、あの伝説の4CBで一応守備は OKとしていました(実態は全然よくなかったんですけど)。そしてウタカと同時期に加入したミッチェル・デュークも一緒にどう使うかも問題でした。この時、この助っ人FW2人に加え、現在ガンバで出世した長沢駿と大宮にいる大前元紀もいたので、1トップと2列目にどう組み合わせればいいのか、というのが大榎さんの当時の課題でした。「1トップで使うべき」と書いてありますが、それはこのような背景があったので、最初ウタカをトップ下で使ったこともあったのです。案の定上手くいきませんでした。そうこう言っている間にDF陣に怪我人続出。大前&ウタカの2トップに前線は変更。夏に鄭大世が加入し、大榎さんはクビ。最後はテセ&ウタカでしたが、組織が壊滅的だった当時のエスパルスでは、誰をどう使ったとしても上手くいかないのは当然のこと。結果ウタカはデュークにせがまれインスタデビューすることになりました。

広島移籍後は、組織がしっかりしている環境だったので、ボールを貰っても孤立しているから前を向くしか選択肢がなく憂鬱な表情だったエスパ時代に対し、常に多数の選択肢が与えられ、広島では常に笑顔でプレーしていたのはお分かりだと思います。あの時のウタカはサンコン以上に笑顔が似合う日本在住外国人になってました。ウタカが活きるには、周囲のサポートと戦術のハード面での充実が条件です。現在のFC東京の状況は分かりませんが、大久保にあの憎っくき当たり前田のクラッカーがいますし、中盤には僕の大好きな中島翔哉がいます。永井や河野もいますね。さぁ、どう使うんでしょう。それに関しては直接監督に聞いてください。システムの面でウタカが活きるとするならば、4-3-3のCFか、4-4-2で2トップの1角に使うかのどちらかだと思います。やめた方がいいのはトップ下起用です。まず守備では、ウタカはパスコースを切ったり限定するのは上手いです。ただ、走って追っかけ回すようなことはしません。それと攻撃面では、前線の選手と被ります。昨シーズン開幕直後の広島でもそうでしたね。ドウグラスの後釜としてシャドーで使われてましたが、佐藤寿人とポジションが被ってました。ウタカが爆発するきっかけが最前線での起用。随分よくなったと思います。

 

簡単に説明するとこんな感じです。あとはやってみないとわかりません。この移籍のウタカに幸あれです。それと、静岡おでんを差し入れるとテンション上がります。セブンとかファミマのおでんじゃダメです。静岡おでんは出汁だったりはんぺんが黒かったりなど、全く違います。詳しくは各自でお調べください。