ゲームメイクと組み立ての種類/本田拓也と竹内涼の違い
今のエスパルスには、パサーと言われる選手は結構います。
ただ、それぞれ特徴は違います。個人の組み立て方だったり、パスの受け方出し方も十人十色です。ストライカーが、高さが武器なタイプもいればスピードが武器のタイプがいるのと同じです。
今回は、本田拓也と竹内涼という、組み立て方がまっっっったく違う2人を見ていきます。
本田拓也の組み立て
J2開幕戦となった愛媛FC戦から
本拓のカットから、ボールを回収
白崎凌平から三浦弦太へ。本田の目線は前線。
ここで1度パスを要求。だがフィードを相手にクリアされ、再び弦太の下に。
弦太から西部洋平へ。本田の目線は逆サイド。
西部から犬飼智也へ。再び右サイドを見る。
犬飼からパスを受け、六平光成へ。
六平から白崎へ。本田は右サイドを見る。
白崎からパスを受ける。また右サイドを見る
トラップと同時にルックアップ。狙いは右サイドの前方
鎌田翔真が裏に抜けるが惜しくも合わず。
本田拓也の特徴
この1連の30秒くらいの間に、本拓は11回も首を振って前線を確認している。常に縦を狙っている。だからルックアップのタイミングからフィードまでの時間が短い。ボールを受ける前から組立の画を描いている。
竹内涼の組み立て
ニューイヤーカップ北九州戦から
竹内がボールを持つ
サイドにボールを入れる
リターンが来る。ここでルックアップ
もう1度サイドへ。出した際にバックステップを踏む。
またリターンを受ける。そしてまたこのタイミングでルックアップ。
最終ラインに下げる。
最終ラインに入る。
パスを受ける。
トラップしてルックアップ。
裏に抜ける白崎へ。
竹内涼の特徴
簡単に言うと、ショートパスを繰り返しながらリズムを引き寄せる感じ。自分で流れを作り、その中で来るべきタイミングで縦パスを入れる。以前チームのビルドアップについての記事を書きました。
ここでも、竹内はショートパスを繰り返してリズムを作っています。本拓との違いはここです。
本拓は常に縦を狙っています。いつでも首を振って前線を確認している。だからファーストタッチも前を向けるようになってます。対して竹内は、時々ダイレクトでキラーパスを1発で入れることはありますが、基本的にボールタッチを増やしながらリズムを作るタイプです。竹内が流れを1から作る組み立てで、5メートルの視野を持つタイプなら、本拓は流れとかそういうのが一切関係なく、2,30メートルの視野を持ち、1つのフィードで局面を打開できます。これを「飛び道具」と言うんですね。パサーというジャンルは一緒でも、プレースタイルはまるで違うんです。
さて、このブログも開設してから1年です。時の流れは早いものです。ここまでの記事を振り返ってみると、ほとんどが攻撃ばっか。あとパサーが7割。これ、完全に趣味です。ただ結構偏りがあるなぁって思いました。
1年経ったので、何か新しいことを始めたいなって思っているんですけど、何始めようかは考え中です。決まり次第即始めます。
次回は、今までが攻撃ばっかなので守備に目を向けます。ってことで
『本田拓也@スライディング ~タイミングの合わせ方~』
のどちらかをやります。
石毛秀樹のゴールを演出した竹内涼の神パス@1st第14節川崎戦
事件は現場で起きていた!!
1st第14節川崎フロンターレ戦の4点目となった石毛秀樹のこの日2点目のスーパーミドル。
凄いゴールですね~。
でも今回とりあげるのはこのゴールではなく、この前のプレー。
では報道ステーションでノボリがやっている巻き戻し風にやると
はい、ここから、
はい。話はここから。
まず事の発端として、石毛のゴールをアシストしたのは枝村匠馬。その枝村はどうしてドフリーでボールを受け、パスを出すことができたのか。その事件のカギを握る人物がこの画像の丸の中の選手。答えは簡単。竹内涼です。このゴールは、この竹内の見事かつ、ビューティフルゴッドパスによって始まったのです。ではじっくり見ていきましょう。
まず竹内がボールを受けるところから。
今、右サイドでボールを持っている水谷からボールを受けます。そしてこの画像の登場人物を位置と共に把握しておいてください。あとでテストに出します。先生言ったからね。テスト出るよ。
ここに名前が書いてある選手が重要参考人です。ちなみに"KING of PASS"とは中村憲剛のことです。
ではここから別アングルで証拠を探します。
はい、竹内がもらいに行きます。
はいココ!!
ちょっと分かりにくいんですけど、この場面で中をチラ見してます。最初のアングルだと、竹内が映ってなかったので分からないんですけど、ここだと微妙に目線を移してます。それでその瞬間、川崎の森谷が重心を中にずらしてます。多分、森谷の頭の中は、「枝村は後方の谷口に任せとけばいい」という考えがあったでしょう。なぜなら、竹内の目線の先と森谷が体重を寄せている先にいるのは誰か。
もうここがドフリーだった。あと角田がマークに付いていたウタカもその候補先だと思うけど、ここではフリーで走りこんでいた石毛と考えた方が妥当。
竹内が受けるこの0.02位のコンマの間、森谷の足が揃う。その瞬間に枝村が「よこせ!」アピールしている。ジャストなタイミングはここ。ワンタッチで楔を入れる。
竹内がダイレクトで入れる。
森谷が中を捨て枝村に向かうが、石毛は完全にフリー。これで勝負は決まった。
この竹内のパスでポイントになるのは、
- 竹内が中に目線を移すことでフェイクを入れる
- 森谷の動きを抑制する
- ジャストなタイミングで入れるためにダイレクトで出す
この3つ。
あとこのゴールは、ショートカウンターとか速攻ではなく、竹内に渡るまでに7本のパスを回しての遅行であったところがよかった。なかなか遅行で崩すシーンとかそういうのが少なかった今シーズンだが、このポゼッションにおいては、この竹内のたった1本の楔によって川崎守備陣を完璧に崩すことに成功できたと言えます。
ピーター・ウタカ@シュート:2nd第3節名古屋グランパス戦 ~時空の支配~
2015年が終わったので、今季のエスパルスのゴールの中から、個人的に印象に残ったゴールを振り返ります。今回は2ndステージ第3節名古屋グランパス戦のピーター・ウタカ2点目です。
相手からのセカンドボールが、八反田康平の前に転がる。ウタカはまだ動かない。
八反田の足元にボールが納まると同時に、ウタカは相手DF小川佳純との距離を空ける。
1on1の場面
小川とのちょうどど真ん中にセカンドタッチができるようにファーストタッチを試みた。これは大成功。
ウタカのファーストタッチ後。この時点で、小川の重心はウタカより後方のため、ボールを奪うための体制を立て直すのに時間がかかる。それに、小川とのちょうど間に転がしてきたため、小川自身もチャレンジのタイミングに迷いがあった。
小川が体制を立て直したと同時に、ウタカは両足でジャンプ。
小川は体制を崩すことでボールを取ろうとするが、この時点で時既に遅し。
この時点で勝負あり。
っていうか、この勝負において、ウタカが小川との間にファーストタッチしたことと、この時点で小川の重心が後方にあった時から、この1on1の勝負の行方は決まっていた。八反田にボールが来ると同時に、小川との適切な距離感を作り、この空間を支配。小川との1on1において、小川自身の体制の立て直しにかかる時間とウタカ自身の体制を整える時間でも、ウタカに軍配が上がっていた。
時空の支配
このゴールにおいて、ウタカがいかに化け物かっていうと、この1on1もそうなんだけど、ファーストタッチからシュートまで、上半身にブレがなく、体の軸がしっかりしている。
シュートそのものに関しては、以前フォルランの記事で書いたんだけど、下半身の体重移動がしっかりできているので、強烈なシュートができる。これはフォルランと一緒。
ウタカの1on1やシュートにおいては、まるで時空を支配しているかのように、スムーズに流れていく。フォルランもそう。この点においては日本人ストライカーはまだ足元にも及んでない。だから、ウチの期待の若手ストライカーである、北川とか加賀美はこれができれば、マジでいいストライカーになれる。最高の教材があるわけなので、この点に関してはマジで学んでほしいし、憧れてほしい。あと来年もウタカいてほしい。守備なんか他に任せればいいから。それだけウタカは攻撃で貢献している。
この機会なんで、皆さんも是非YOUTUBEやスカパーなんかで、ウタカのプレーやゴールに酔いしれてください。まぁ、本当によくこんな選手獲れたなぁ。
エスパルスの降格について
落ちました
落ちちゃいましたよ。
やっちまいました。
落ちたことについては、スポナビの方で書きましたので、あまり深くはここでは書きません。このブログはあくまで選手の個人技を扱うので、今まで通りマイペースに書いていきたいと思います。
っと、言ったそばからアレですけど、あくまで僕の個人的なことを書いていきたいと思います。
各報道について
はい。すごいです。いろんな観点から触れられています。降格第一号で、特にびっくりの降格ではなかったのにもかかわらず、ここまでいろんなマスメディアから扱われるとは、「清水エスパルス」というクラブのブランドってすごいんだなと、嫌な意味でわかりました。
「この1年半で崩壊したんだ」とか「ゴトビ就任が崩壊の始まりだ」とか「2010年の大脱走劇が崩壊の狼煙だ」とか。ここまでバラバラな観点で話が出てくると、逆に笑っちゃいます。いずれも直接的な原因は何か、またそれぞれ話が結びつかないというところがあるので。本当に落ちてしまった原因っていうのは、今頃クラブが必死になって分析していると思うので、そのクラブの回答が何か。それを見守るべきです。
ただ、いずれの記事にも共通することは、必ず「ある選手は」とか「ある関係者は」という文があること。
はい、これです。これ大事です。テストに出ますよ。ちゃんとメモ取って!!
これなんですけど、90%は記者の作文です。
あんまり信じない方がいいです。なぜなら、この「ある選手」が言っていることは、明らかにクラブ批判です。先日ミランの本田さんが大々的にクラブの問題を指摘して炎上しました。クラブの規模は明らかに違いますが、発言の内容的には、同じことなんですね。もしそのある選手がそんなことを言っていたら、記者からしたら格好のネタになるわけです。そのネタを降格した今になって出すなんて、後出しジャンケンもいいとこ。本当にその発言をしていたら、匿名にせず、しっかり実名で出すべきです。それがマスメディアの仕事。その方が売れるし。あとになって出しても、記者側にはメリットはない。 だからあんまりそういう記事に反応しない方がいいです。「そーですかー(棒読み)」、な感じでいいです。ハイ。
クラブの責任問題について
これが難しい。
静岡新聞には、「今年の補強が進まなかった理由は、複数年契約の選手が多く、それによって選手の補強が進まず、契約切れの選手は放出せざるを得ない。またレンタルバックの選手も多く、即戦力選手の獲得はムリポ。だから無能な強化部は手足も出せない、そんな状況になったのだぁ~、ガハハ」みたいに書かれています。ここ最近の静岡新聞の記事はオーバーな文章が多いです。
複数年契約の選手が多いのは、多分「2010年選手大脱走殺人事件」、いや誰も殺されてねぇ、「踊る大エスパルス捜査線THE MOVIE3 選手を開放せよ」が公開され、それのトラウマがかなり残っているんじゃないかと。そりゃあねぇ、あんなに抜けられたら誰だってトラウマになりますわ。
選手の契約問題ってよく考えてみると難しいですね。電卓の鬼がいないと無理です。ヨーロッパだったら、普通に移籍金払って財政潤うが普通で、ここ最近は100億の取引が本当に多いです。デ・ブルイネに100億出すって、頭狂ってるのかシテ......。話はここまでにしておいて、それで戻しますね。Jリーグの場合は、逆に移籍金が下がっている、というかタダ。移籍金だけなら、セロハンテープより安いです。1番金持っているはずの浦〇レ〇ズはタダの選手しか買わないから、景気がいつになってもよくならない。金があるなら金出して買えって言いたいんですけど、ヨーロッパのクラブが普通に複数年契約しているわけは、移籍金が取れるからです。本当に欲しいと思ったらしっかり金出して払ってくれるから。ビジネスが成り立つわけです。サッカークラブだって1企業です。ビジネスは重要です。でもJリーグではこれが成り立たない。さっきも言った通り、1番金があるはずのう......。
なので、複数年契約の選手を多数保持すると、補強ができない。かと言って単年契約の選手が出れば、「なんで他は複数年で俺は単年何だ!」って問題になる。本当に難しい。だから何度も言う通り、1番金を持っている浦(以下省略)。
もちろん、助っ人獲得が2月になってからとか、SBいないとか、そういうのはありましたけど、「100%強化部が悪い!」っていうのも、このことが背景として考えるならアレなのかなと。大榎を引っ張りすぎたのはう~んだったけど。
それと、左伴社長の更迭とか、それはマジであり得ない。大多数の人は分かると思います。今回の戦いについて、左伴社長はやれることはやったと。夏の補強も2人取ったわけだし、シーズン開幕前はウタカとデュークを取った。ここで忘れてはいけないのが、この4人を取れたのは、左伴社長が補強費を増やしたから。補強に関しては強化部の仕事です。社長のメインではないです。なので当たりや外れを引いたとしても、すべての責任を押し付けるのはアレかと。今考えてみると、左伴社長は現場は現場で信じているのかな。大榎を引っ張ったのも、原強化部長を筆頭に、現場のことは現場に任せていたと。「蛇の道は蛇」ということわざがあるように、その道はその道のプロが一番分かっているからこそ、現場に関しては、一切口出しはしなかったんでしょうね。プロ野球の楽天が、オーナーの現場介入で問題になりましたけど、そのことを考えれば左伴社長はしっかり仕事をしていると思います。就任時の公約通りに、スポンサー収入を飛躍的に伸ばしてます。来年はJ2での戦いですが、来年も延ばし続けることができたら、社長の営業力は本当に凄いと思います。元々あの日産のエリートですからね。
あともう一つ。今年だけで社長は3回謝罪文を出してますが、降格決定後の謝罪文に、「シーズン前の補強」についても触れられていますが、左伴社長が正式にエスパルスに来たのは2月1日です。キャンプ目前の時期です。これに関する社長の責任は不当といえます。
明日のホーム最終戦で社長の挨拶がありますが、以上をふまえると、左伴社長に対してブーイングすることはナンセンスです。社長本人もプロですから、ブーイングや野次を受けることは覚悟していると思います。ただ、1つ言えることは、今のエスパルスに左伴社長以上の人はいないよってこと。それだけは理解しないといけません。
監督について
8月から田坂監督が就任しました。それからいい試合は増えましたが、1勝もできていません。悲しいことですけど、事実です。
以前、エスパルスニュース内で田坂ヘッドコーチ(当時)のインタビューがありましたが、それによると、田坂本人は大分の監督を解任された直後だということで、拒んでいたと。普通はそうです。普通は充電期間に当てるために現場から離れます。しかし、それでも帰って来てくれたわけで、それに関しては感謝すべきです。
ただ、このチームを立て直すことは大変だったのでしょう。本来ならキャンプにやるようなことをこの時期にやっていたので、守備を早急に立て直したのは評価すべきです。それで攻撃もなんとかせぇ!って言ったら、それこそシーズン終わっちゃう。攻撃に力を入れたと思ったら逆に大量失点した浦和広島の連戦で9失点したことはもはや運命です。失点数が大榎時代と変わってないじゃんとか、それもまたナンセンスなことで、複数失点したのはこの2戦と初戦の湘南戦の3試合だけです。
ただここで事実を。降格が決まりました。1勝もできてません。本当に単純に力がなかった。現場に関してはそうでしょう。
ここで僕が言いたいのは、今シーズンのエスパルスにおける1番の被害者は田坂です。エスパルスに合流して3ヵ月です。それに、やってきたときのチーム状況は本当にヤバかった。「戦う気持ちがプロレベルじゃない」って田坂が言ってましたが、これがやってきたときのチーム状況です。白黒はっきりしたから言えます。このチームを立て直すには、1,2年で済む話ではないということ。哲学も含めて、本当にすべてを見直す時が来たということです。
来年の監督に関しては、まだ白紙に近い状態でしょう。一部報道では田坂続投という話もあります。田坂がここまでやってきたことは、本当に残留に向けた"応急処置"であって(というよりそれしか方法がなかった)、田坂のやりたいサッカーではなかったとも言えます。だから、僕の中では田坂が本当に最初から指揮を執っていたのなら、どんなサッカーをしたのだろうと。そこは興味があります。大分とはクラブの状況が違うので、本当にやりたいことができると思います。ただ、来年田坂が日本平のベンチに座っているとは限りません。続投報道があっても、田坂本人が辞意を示すかもしれない。
来年に関して、本当に監督選びは重要です。大榎は「一旦ゴトビサッカーを破壊しよう」から自分のスタイルを植え付けるプランだったと思います。しかし、破壊しすぎた。破壊してはいけないところまで破壊してしまったため、立て直すことができなかった。家で例えるなら、家を建て直すために一旦壊したが、あろうことか地盤までもを破壊してしまった。なんか例えがおかしくなりましたねぇ。これに関しては大榎本人も「やっちまった」って思っているはずです。だから残すべきところはしっかり残すべきです。サッカーのスタイルがガラリと変わるとしても。
スポナビでも言いました。哲学こそが問われる段階にきました。絶対に信じることができるスタイルを構築すべき。サガン鳥栖が"戦術豊田"という単純な戦術をやってますが、鳥栖がJ1にいるわけとして、チームがそのスタイルを信じているから。だからJ1にいる。一見単純そうでも、そこに信念がある。エスパルスもそうあるべき。来年の監督選びは慎重にやるべきです。本当に大切。そのスタイルを信じることができるなら田坂でもいい。降格したからこそ、そこからしっかり学ぶことが、これからの課題です。
追記
書き忘れてました。
僕個人の田坂監督評価です。
僕の評価は「まあまあ」です。
いや、ふざけてないですよ。真面目に答えて「まあまあ」です。
マイナスとしては、やはり1勝も挙げることができなかったということ。これはやっぱりいただけないですね。勝てる試合は何試合もあったわけで、やはりそこで勝ち切れなかったのはマイナス評価とならざるを得ない。
ただ、僕の観点では、もはや修復不可能だったと言えなくもない。田坂が監督だったからという以前に、半年で立て直すこと自体が無理。だから仮に、どんな名将が監督になったとしても、今シーズンのエスパルスのシチュエーション的に立て直すことはできないということです。
こちらの記事で、田坂体制と大榎体制の守備における違いを書きました。
ここでは、チームとしてどのようにボールを奪うのかというのをやり、「1on1+1」という形をとって、チームで1対1を制する守備をしていました。当初は大榎体制の守備より断然よかったです。
ただ!!
この守備にも弱点はあり、それは相手のオフザボールの選手をどう抑えるのか。コレ。だから、パスワークが上手い浦和と広島相手にボッコボコにやられたのそこの弱点を補えなかったから。だったらそこを補えよ!って話になりますけど、そんなことをしていたらマジでシーズン終わっちゃう。守備に関しての上積みが見られなかった理由として、田坂としてはそこは諦めていたと思います。そこの判断は本当に賭けだった。その守備まで完成させれば、もはやドンと来い!って言えるんですけど、いかんせん時間がない。完成させるためにその作業までやったら、完成せずにシーズンが終わってしまうのです。だったら攻撃の整備をすべきです。そして田坂はそれを選択しました。
組織を作るっていうのは本当に大変なことで、例えば1stステージは比較的におとなしかったサンフレッチェ広島も、1stステージ序盤は勝ちきれない試合が多かったわけです。例えばゴールデンウィーク連戦の8節までの成績は5勝1分け2敗で1試合当たり1.25得点、0.75失点です。残りの9試合は5勝3分け1敗で1試合当たり2.1得点、1.1失点です。失点増えてますけど、それ以上に得点力がUPし、勝ち点を稼げています。その好調な流れをもとに、2ndステージの爆発に繋げた。
何が言いたいかというと、チーム作りは時間がかかるということです。広島ほどの熟成されたチームでも、攻守ともに完成させるためにはチームが始動してから3,4か月かかるということ。最初は守備から。それがだいたいゴールデンウィークあたりまで。それから攻撃に力を入れる。本当の勝負は後半戦から。今シーズンは2ステージ制なのでチーム作りは本当に難しいんですけど、完成形を披露するには、どんなに成熟していたとしても、半年はかかります。ここ数年の年間王者の成績を見てもらえばわかりますが、勝ち点を稼ぎ始めるのはシーズンの3分の1過ぎた頃から後半の頭辺りです。ロケットスタートをきったチームはだいたい萎んでいく。毎年恒例のチームがありますけど、そこはあえて言いません。
だから、あの状況で引き受けた監督はどんな人でも立て直すのは無理。鹿島が監督交代して立て直したのは、立ち返る原点があったから。エスパルスにはそれすらなかった。
これに関しては、僕は田坂に同情します。
だから田坂の評価は「まあまあ」というわけです。
超一流ゲームメーカーの条件
前回、現代サッカーのSBについてやりました。
そのことで、実は現在全国書店にて発売されています、「 月刊footballista 」という雑誌にて、SB特集が組まれています。表紙はみんな大好き内田篤人ことウッチーです。ぜひ読んでみてください。
■ゲームを作る
ゲームメーカーとは何か。今回はまずそのことから始めます。
皆さんが思い浮かべるゲームメーカーの特徴ですが、まずパスが上手い人を挙げるでしょう。ゲームメーカーとは、その名の通り「ゲームを作る人」です。創造性というのが求められるわけで、「創る」という字を使っても、あながち間違いではないです。それで、最も手っ取り早いのがパスによってゲームを作る方法です。
そして間違えやすいのが、ゲームメーカーともう一つ、「チャンスメーカー」の違いです。以前、遠藤保仁の記事を書いたときにこの違いについて述べたことがありますが、ここでもう一度おさらいしましょう。
まずチャンスメーカーから。
チャンスメーカーとは、ゴールに結びつく決定的なチャンスを演出する選手のことです。簡単にいうならば、アシスト役の選手ですね。
ではゲームメーカー。
ゲームメーカーは、数多くの選択肢の中から、最も適切なコースを選択する選手のことです。こういうタイプの選手は、アシストの1つ前のパスをするタイプです。前に何かの番組で、なでしこジャパンの澤穂希が「今はアシストの1つ前のパスに美学を感じる」というようなことを言ってました。ゲームメーカーと言われる人は、このような考えを持つ人です。日本人選手にはこういうタイプの選手がベテランには多いです。今の若手には少ないですね。例えば遠藤はもちろん、中村憲剛や小笠原満男みたいなタイプです。彼らはアシストも多いですが、決定機に顔を出せるからこそアシストも多いのだと思います。あとはセットプレーとか。中村俊輔はゲームメーカーとチャンスメーカーを兼務しているような、希少なタイプです。
先ほどにも述べましたが、ゲームメーカーは最適なルートを決めることが求められます。それを選択する役割が与えられているということは、ゲームの流れやチームの調子、相手ももちろんのこと、ピッチ上のあらゆるコンディションも頭に入れておかなければなりません。なので、最近の若手でいいゲームメーカーが出ないというのは、無暗に縦パスを入れたりとか、ゲームのペースを変えることができていないからですね。柴崎岳なんかも、まだまだ彼らと比べると劣っています。日本代表でのプレーを見ていると、ゲームのペースを変えられていないなと思います。ペースを変えずにクオリティを上げる、というのとはわけが違うので、一流ではあると思いますが、"超"一流ではないです。
ではこれから、超一流ゲームメーカーとは何たるやをやります。
■"超一流"ゲームメーカーとは
「もし、私の前に5人のディフェンスラインがあるとする、彼らは、私にサイドへパスを出させようとするだろう。サイドからサイドへ、深くもなく危険でもないパスを。この5人のラインと、その後ろの4人のライン間のスペースはコンパクトだ。2つのラインは、サイドのスペースへ私を追い詰めて、危険を回避しようとする。だから私は、2人のウイングを深く広く配置させ、他の攻撃陣を敵のライン間で動き回らせた。そして、5人のディフェンスラインをあざむく。左右に揺り動かし、その時には、すでに完全に前を向いた攻撃陣がGKに向かって突進している。こうやって、他の選手との違いを出してきたんだ」
ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう 著者マルティ・パラルナウ 訳羽中田昌 羽中田まゆみ 発行東邦出版 42項より引用
今引用したこの部分。理解できたでしょうか。これはペップ・グアルディオラが現役時代に考えていた、チーム、またピッチ上すべてを支配するための方法です。今の現役選手の中で最高のゲームメーカーと言えば、シャビ・エルナンデス(アル・サッド)を思い浮かべる人が多いでしょう。バルセロナの黄金期を支えてきたゲームメーカーは、リーガ、欧州CL、そしてワールドカップなど、あらゆるタイトルを手にしています。ただ、僕の記憶の中では、シャビよりグアルディオラの方が、ゲームメーカーとしては上のように感じます(もちろんシャビも最高ですけどね)。
ゲームメーカーとは、ピッチ上の指揮者です。選択を1つでも誤れば、チームのバランスは完璧に崩れます。オーケストラの指揮者が、突然クシャミでもしたらどうでしょう。そのあとは想像できますよね。美しいはずの音色は一気に汚れた音になり下がります。だからゲームメーカーに求められる資質は、技術よりもゲームの流れを読む力と、抜群の状況判断力を持つ頭脳です。知識がなければやっていけないわけですね。チームが勝つために、頭をフル回転する。あるいは先を読み、チームを助けることが役割です。
ただパスをするのではなく、意図を持ってパスをし、次のアクションのため即座にポジションをとる。それが、チームメイトに次のプレーの選択肢を提供する。イニエスタの最も重要な特性は、彼のパスによって仲間がパスを続けられること。自ら(ゴール近くのプレッシャーの厳しい場所で)三角形の頂点となってサポートを提供し、止まることなくボールを動かし続ける。イニエスタのいるチームは、いつも試合をコントロールして支配できる。パスの循環のために身を捧げ、時には動きながら、時には適したポジションにとどまって。このパスは、何の役に立つのか、出す前に考える……。
ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう 著者マルティ・パラルナウ 訳羽中田昌 羽中田まゆみ 発行東邦出版 38項より引用
このようなプレーを継続してできる選手こそが"超一流ゲームメーカー"です。
■超一流ゲームメーカーのプレー
それでは実際に見てみましょう。
アッ。ちなみに今回はJリーグだけに留まらないので、そこは理解しておいてください。
画像は、世界最高峰のゲームメーカーである、ドイツ代表ト二・クロースです。サンプルはUEFAチャンピオンズリーグ、レアルマドリードvsシャフタール・ドネツクから。
ケイラー・ナバスからナチョ・フェルナンデスへ。ビルドアップのシーン。
ナチョからマルセロ(分かりにくいですが、指しているところにいます)、そしてクロースへ。
クロースは下がってくるイスコへ。
イスコは相手のトライアングル、いわゆる"ゾーン"で受ける。
ゾーンで受けるということは、「前を向く」ということは通常無理。なのでクロースにダイレクトで下げる。
クロースは、今度は右へ。イスコの次はルカ・モドリッチ。モドリッチに出した後のクロースの動きに注目。
クロースはモドリッチがボールを持つと同時に、バックステップで後方にポジションをとる。この後、結果クロースに来ることはなかったが、モドリッチからパスを貰える位置にポジショニングしている。
■クロースから見る、超一流ゲームメーカーの特徴
この一連のビルドアップにおいて、クロースは2度パスを受けている。そのいずれも前を向いた状態でパスを受けている。
前を向いた状態でパスを受けるということ。それは、ボール保持者より後方でポジショニングするということ。横パス、またはバックパスにてボールを受けるポジショニングにいることです。
少し前にスポナビの方でこんな記事を書いたんですけど
この記事では、パスワークが上手いチームはバックパスを活用しているということを書きました。それを踏まえてこのクロースのポジショニング。あらかじめ後方にポジショニングしていることで、チームにバックパスを選択させる。それにより、パスワークを円滑にし、前線が交通渋滞を起こさないようにチームをコントロールする。
そうです!!
超一流ゲームメーカーと言うのは、個人でチーム全体をオーガナイズできる能力を持っている選手のことです。そのためにはチームから絶大な信頼感がないと無理です。だからゲームメーカーと言われている選手は、思考の速度が半端なく早い。一切迷わない。チームが用意してくれた選択肢をパっと決める。それも正確に。これが超一流ゲームメーカー。だから、こういうタイプっていうのは、なりたくてなれるモノではないです。天性というか、頭のキレがいいというか、本当に特別な選手というわけですね。
■ペースを変える
ゲームメーカーと言うのは、常にゲームの風向きを正確に読み取らなければいけません。チームの流れを変えるということは、ゲームメーカーの仕事です。あえてペースを上げる、だったりあえてペースを落とすということを、常に考え、判断し、実行することが求められます。
それではここで、日本が世界に誇る超一流ゲームメーカー遠藤保仁のプレーを見てもらいます。
遠藤から右SBの米倉へ。まずは右サイドのターン。
米倉から阿部を経由して、再び遠藤へ。
遠藤はターン。今度は今野泰幸のターン。レイソルの選手2人が今野にプレスをかけようとしている。
遠藤はやや後方にパスを"ズラす"。このパスは、今野を相手からのプレスを避けるための処置。
今野から再び遠藤へ。この時遠藤は前線の選手に高い位置を取るようジェスチャーを送っている。
遠藤はダイレクトで下げる。まだこの場面では攻めるときではないと判断。準備するように指示する。
再び遠藤へ。ここでサイドチェンジをする。次は左サイドのターン。
左に開いている岩下敬輔へ。
岩下から今野。そして今野は米倉。右サイドのターン。
米倉は遠藤に落とす。
遠藤は米倉へ速いパスを送る。
ここで少し話はズレますが、遠藤とかさっきのクロースのパスっていうのは、先ほどの今野へのパスのように少しズラして出したり、あえて早いパスを出しています。相手がとどかないところ、あるいは受け手にアクションを起こさせるという狙いがあります。
例えばJリーグの試合で、俺がグラウンダーの速いパスを出して見方が受け取れなかったとする。これは普通に見ていたら「なんで、あんなところにパス出すんだよ」っていうことで、パスミスとして俺のマイナス点になる。
でも、俺は全く違うことを考えている。
日本代表や世界レベルを意識し、パスの「質」を追求して出しているから、あえて届くか、届かないかのギリギリのボールになる。ゆっくりしたパスを出せば繋がるかもしれないけれど、それじゃ世界では通用しない。代表では、みんな意識が高いからそういう速いパスもつながるけれど、走る方もJリーグのレベルで「届くだろう」という感じで走るから、そのボールに届かない。
仮にパスがとどかなくても、自分の中ではすごく重要なトライだと考えて出していることもある。だから、失敗しても何か特別な感覚を掴めれば、それが一番良いプレーだと思うこともあるのだ。そもそも、そういう厳しいパスを出し続けなければ、世界との戦いで決定的なパスは出せない。
ゲームメーカーというのは、パスの質にこだわらなければなりません。どこに出し、ボールスピードや出すタイミング、すべてを計算してやっと1本のパスが成立するということです。
それでは続き
米倉は倉田秋とパス交換する。この間に遠藤はバックステップを踏む。前方の視野を広げるためです。
バックステップは、ボールを自分の視野に入れながらマーカーの視野から外れ、自分のスペースを確保するのに最適な動き方です。
米倉からパスが出る。
遠藤は今野へ。
今野はダイレクトで遠藤へ返す。
この一連の遠藤を中心としたポゼッションは、ペース配分を変えながら攻め時を遠藤が窺っていた。最初はゆったりとしたペースで始まり、1度米倉へ速いパスを送ったが、これはあくまで窺っている状況であり、試していたとも言えます。
特に序盤に遠藤が前線の選手に対して「準備しろ」というジェスチャーをしてましたが、このポゼッションの狙いとして、前線の宇佐美貴史だったりパトリック、あるいは倉田が高い位置で準備することであり、そのためのビルドアップです。
ただ、このビルドアップだけで横に縦にボールを動かしているわけで、いずれも遠藤主導なんですね。というわけで、この一連の流れにおいて遠藤は常に前線の選手、周囲の選手、また相手の動きを把握しながら先を先を読み組み立てていたわけです。
面白かったのは、意識の高い選手とそうでない選手がはっきり見えるようになったということだ。例えば、右サイドから左サイドにボールを運ぶとする。相手を誘うためにゆっくり出すという意図があるならいい。でも、何も考えていない選手は、ただゆっくり回すだけで打開しようとする意識を持っていない。単に、回すことに満足しているのだ。
それでは、状況は変わらない。
次の動きのことを考えている選手は、パスを早く回す。早く回せば、サイドバックが高い位置に進めてチャンスを作れるからだ。パス一本でも、先を考えるのと、そうでないのとでは、これだけ差が出るのだ。
■超一流ゲームメーカーの条件
ここまで言えば、何が超一流ゲームメーカーなのかだいたいわかると思います。
簡単に言えば、「支配者」ですね。ピッチ上を完全に支配することができるかどうか。それが超一流と一流の違いです。
こういう選手が1人でもチームにいれば、その選手の個の力によって組織をオーガナイズできます。そういう能力を持ってます。
今の若手選手にはそういう能力を持った選手はいません。鹿島アントラーズの柴崎岳や川崎フロンターレの大島僚太もその器ではありません。やはりどうしても"流れ"を読めていないところがあります。ペースに合わせてしまったり、無理に縦パスを入れてカウンターを食らうという、超一流にはまだまだ敵っていません。縦志向が強いっていうのは結構です。ただ超一流ゲームメーカーは時に反する決断をしなければなりません。その流れに反する選択肢があるかどうか。またそれを決断できるか。そこです。
また、個人戦術の話にもなりますが、パスの「受け手」がいるということは、当然「出し手」もいるわけで、冒頭でゲームメーカーを生かすには周囲が選択肢を増やす必要があると書きましたが、ここにチームとしてのフィーリングも必須となります。
2011年1月、宮崎で口蹄疫復興に向けたサッカーイベント『TAKE ACTION』が行われた時のことだ。
風間は中田英寿チームの監督として招かれ、試合前日に1度だけ練習を行った。そのとき「受け手」と「出し手」のタイミングを伝えるために、中田英寿を出し手役、藤田俊哉を受け手役にして、風間監督がデモンストレーションをやらせた。指示はとてもシンプルで、「動いている受け手の足元に、パスをピンポイントで出せ」ということだった。
合図とともに、中田がパスを出し、藤田が受ける。だが、すぐに風間監督はプレーを止めさせた。
「俊哉、動き出すのが早すぎる。ヒデが蹴られる状態になる前に動いても意味がないだろう? ヒデがきっちりボールをセットしてから動け」
2度目のトライ。だが、また風間監督はプレーを止めた。藤田はさすがに「これでも、まだ早いですか?」と疑問をぶつけた。
風間監督はこう答えた。
「まだ早い。俊哉のタイミングを遅くするか、ヒデのトラップを直すかのどちらかだ」
すると今度は中田が「え?」と声をあげた。まさか自分のトラップが悪いといわれるなんて思わなかったのだろう。
風間監督の指示が、今度は中田に向けられた。
「ヒデ、止めてからけるまで時間がかかりすぎだ。俊哉はヒデがトラップした瞬間から動き出しているのに、ヒデが蹴るまでにロスがある。もっと前のタイミングで蹴らないと、俊哉がタイミングを遅らせなきゃいけなくなる」
さすがは日本サッカー界を引っ張ってきたMFだ。中田は指摘されるとすぐにトラップを修正して、蹴るタイミングを早め、藤田の動き出す足元にピタリとパスを合わせるようになった。
練習後、中田は風間監督にこう話しかけてきたという。
「体の認識は何となくあったけど、あんなことを言われたのは初めて。パスを出すまでに、すごく無駄な時間があったんだなと思いました。すごくおもしろかったです」
革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする 著者風間八宏/木崎伸也 発行KANZEN 83項より引用
これが大変です。ゲームの流れを読むうえで、味方とのフィーリングの問題もある。当然相手は対するFWの癖を分析するわけですから、相手がほしいタイミングもしっかり見抜くわけです。それでもタイミングに合わせなければいけない。最高のパサーは、先ほどの遠藤の著書にも触れましたが、味方にパスでアクションを起こさせるという、相手の予測の上をいかなければいけません。だから日ごろから常に考えていること。早く予測し、常に相手の思考を上回る、もちろん思考の内容や考えるスピードも含めて。
超一流ゲームメーカーとは、現在では貴重種になってきました。絶滅危惧種です。ぶっちゃけ今の若手選手は、ペップバルサを勘違いして理解している感じで、ポゼッションにおいて常に縦一方通行なんですよね。それに便乗しちゃっているわけだから、存在感がない。しっかりブロックを作っていればノーマークでも耐えきれてしまうのではないかと思うほどです。だから例えばガンバの井手口とかもっと遠藤から学んでほしい。どんな思考回路が働いているのかとか、技術面より頭の方。今後日本サッカーが発展していくには、技術より頭を使えるかがカギになります。それだけ超一流ゲームメーカーは必要なのです。
最後にもう一言
超一流ゲームメーカーとは
「個人でチーム全体をオーガナイズできる"支配者"のことである」
日本vsカンボジアから見る、日本の攻撃が単調な理由/現代サッカーにおけるSBに求められる資質
■現代サッカーが求めるSBの役割
進化を続ける現代サッカーにおける、SBの役割
グアルディオラのチームの進化のプロセスは、まず問題点を分析することから始める。この頃のバイエルンは、リベリーからサイドバックへ、そしてセンターバックへを通ってロッベンまでの、チームに何の利益ももたらさないUの字のパスを循環させていた。ボールを持っていたが、そのボールを使ってなかなか仕掛けず、敵のラインを壊そうともしていなかった。深いところを突くパスもなかった。その問題解決のために試行錯誤していた時、バルサでの4シーズン目を思い出したのだった。
(中略)
この時、チームを進化させるために浮かんだ1つのアイデアが、左サイドバックに関する戦術の変更だった。ペップはこの変化について、7月のトレンティーノで私たちにこう説明している。
「あの時、バルサでイメージした戦術変更の目的は、ワンピボーテとともに、左サイドバックをドブレピボーテとして敵の攻撃の通路を閉じるために使うところにあった。攻撃を組み立てながら、私たちのチームはワンピボーテの高さまで左サイドバックを上げることができた。しかし、そこから先はボールがワンピボーテよりも前にパスされるまで、左サイドバックはワンピボーテを追い越さないようにする。そして、必要とあらば左サイドから絞って、ピボーテの高さを超えずドブレピボーテの1人となるんだ。左サイドバックをワンピボーテとともにドブレピボーテとして中にいれるアイデアは、私の中でリザーブしてあったんだ」
ペップ・グアルディオラ キミにすべてを話そう 著者マルティ・パラルナウ 訳羽中田昌 羽中田まゆみ 発行東邦出版 196項より引用
ペップ・グアルディオラのアイデアは、常に最先端の戦術として世界中から注目されている。リオネル・メッシを使った「ゼロトップ」、中盤を厚くした「3-4-3」。そしてバイエルン・ミュンヘンにて実現した「ファルソラテラル」。偽サイドバックである。
ポゼッションするうえで、組み立て、ビルドアップというのは、とても重要な作業だ。このビルドアップにおいて、ペップが最も嫌ったのが、センターバックを経由してのサイドチェンジだ。
このパス回しが起きてしまう原因として、「SBの組立力の欠如」が挙げられる。
前線でボールが行き詰まると選択するのがバックパスだ。そこで経由するのがSBである。SBに組立力があれば、2次3次攻撃につなげることができ、適切なポジショニングにいれば、効果的な攻撃を演出することができる。しかし、組立力に欠けるSBはセンターバックに下げる、及び無理に縦パスを入れ、攻撃を終わらせてしまう。現代サッカーはゾーンで守るディフェンスが主流だ。その守備網を崩すためにヒントになるのがサイドである。現代サッカーにおいて、サイドをシカトすることはありえない。そして、そのサイド攻略するために、サイド後方を利用してビルドアップを行う。そこで起点になるべきがSBなのだ。
パスは回せるが、ポゼッションが上手くないチームの特徴は、サイドにおける組立に欠陥がある。例えば日本代表。無意味なポゼッションに終始している現在のチームおいて、SBの役割はどのようになっているのだろう。
■動きがワンパターンな長友佑都
まず、ワールドカップアジア2次予選、カンボジア戦から長友佑都、酒井宏樹プレーを見てみる。
まず長友。前半15分。
フリーでボールを持つ。
縦にいる武藤嘉規に出す。
出した後の長友。武藤を追い越す。ただ、赤丸のカンボジアの選手は初めから長友をケアしていたかのように長友につく。これでは武藤をサポートできているとは言えない。
次は前半38分。
再び武藤が持つ。長友は当然のように武藤を追い越す。
武藤も縦にドリブル。長友も縦にオーバーラップ。動きがダダ被り。
結果、武藤は中にボールを入れ、組み立て直さざるを得なかった・この時も長友の近くにはカンボジアDFがついている。
カンボジアだってバカじゃない。
インテルという、誰もが知るビッグクラブでプレーしている選手の特徴は簡単に分かる。それに、長友の動きは「ウイングを追い越す」しかない。このワンパターン。
例えば、ザックジャパンにおいて、左サイドでコンビを組んだ香川真司は、中に頻繁に顔を出すタイプである。これなら、長友は空いた左サイドのスペースに走りこむことができる。
しかし、左にいるのが、縦にドリブルできる武藤なら、この動きでは武藤をサポートできない。下がってボールを受けるという動きがない長友では、左サイドの攻撃力がザックジャパンと比べ半減する。そもそもハリルホジッチはザックジャパンを目指しているわけではないのだから、この無意味なスプリントを繰り返しても効果は何もないのだ。
では酒井宏樹に動き。
前半38分
本田圭佑がボールを持つ。
酒井は本田を追い越す。
酒井は右でフリーとなっているが、本田には酒井が視野に入っていない。そして相手DFからも見放されている。相手ディフェンスラインを横に引っ張ることもできていない。
これは、酒井の縦に追い越すというプレーを、本田自身が望んでいないといえる。この時の本田の選択肢は
- アーリークロス
- 下げて組み立て直す
- 酒井に出す
の3つが挙げられる。しかし、酒井へのパスというのは、相手をいなすどころか、怖さをもたらすことすらできない。なぜなら、酒井に入ったときの酒井自身の選択肢は「クロス」しかないからだ。相手はそれを読み切っている。カンボジア相手でも、そこまでバカじゃない。
この後も、何度も本田に無視され続けた酒井。その動きもそのあとのプレーも「本田を追い越す→クロス」しかないからだ。
ここまで見てみると、長友と酒井にはプレーの引き出しが少ない。縦のオーバーラップしか行動範囲がない。また組み立てることもなかった。相手が相手だとしても、逆にこういう機会だからこそしっかり組立をトライしてほしかった。ただやはり変わらなかった。カンボジアも守りやすかったのだろう。
では長友、酒井のプレーを通してみてみたい。
■繰り返すオーバーラップ
前半39分。先ほどの酒井のプレーが38分なので1分しか変わらない。
長谷部誠にボールが渡る。酒井はまたもや本田を追い越す。先ほどのオーバーラップから1分しかたってない。
長谷部から本田へ。酒井は本田より高い位置にポジショニングしている。
本田は長谷部へ。この時本田は長谷部に下げることを要求している。ここでも酒井は本田から当てにされていない。
酒井を哀れに思ったか、長谷部は酒井に出す。酒井は1on1。
酒井は当然のように仕掛けクロスを上げる。ただ、当然工夫がないので簡単にクリアされる。
クリアボールを長友が拾う。長友は森重真人に下げる。
森重は長友へ。
長友は武藤にいれ、武藤を追い越す。さっきと全く同じ動き。これも相手にケアされている。
これだけ90分通して同じ動きを繰り返せば、相手からしたら守りやすいのは当然だ。
この試合の両SBは、日本の攻撃を常に停滞へと導いていた。現代サッカーではこのように、ただ追い越すというのは求められていない。状況に応じて多彩な動きをしなくてはならない。現代サッカーにおいてSBというのはかなり重要視されるポジションなのだ。だからSBが攻撃を停滞させるということはあってはならない。
■現代サッカーが求めるSBの役割
SBはディフェンダーだ。だから最低限ディフェンスはしなくてはならない。しかし、サッカーが進化していくのに対し、SBの使われ方も変わってきた。いつの間にか、SBはDFにもかかわらず、攻撃参加を求められるようになり、それはいつの日かSBの基本的動作になった。
そこで現代だ。
ペップがバイエルンにおいて、フィリップ・ラーム、ダビド・アラバといったSBにゲームメイクを求めたように、SBがコーナーフラッグを目指してオーバーラップする時代は終わりを告げたのだ。スプリントを繰り返せばいいというSBは旧式なのだ。
日本のSBはスプリントを繰り返すことを望まれている。まだまだ最先端に追いつけていない。川崎フロンターレのエウシーニョはかなりフリーダムであり、「ポジションはエウシーニョ」みたいなところはあるが、最先端の戦術で求められるSBは、あのような多彩なバリエーションを持つ動きや引き出しの多さである。そしてゲームメイク。冒頭で言った通り、現代サッカーはサイドバックに組立を求めている。そして日本人SBの中で数少ない組立ができるSBが内田篤人だろう。バランスに長け、ビルドアップに頻繁に関わってくる内田は、現在の日本代表に欠かせないピースである。だからマジで早く戻ってきてほしい。
ここでエスパルスに。
何回も言うように、SBはゲームメイクを求められるようになった。だからそれなりの技術や引き出しの豊富さが必要となる。
というわけで、六平はマジでSBを頑張ってみたら? もともとゲームメイクには定評があるわけで、現代サッカーが求める役割にマッチしている。長友と比べるのはキャリアも考えてフェアじゃないけど、どっちがマッチしているかと言ったら六平だと思う。あくまでマッチしているかという問題で。アスリート能力や経験値では太刀打ちできないと思うが、さすがにカンボジア戦のプレーを見ていたら、「あれ? これリアルに六平でも通用すんじゃね?」って思ったもん。
六平におけるSBの強みとして、やはりしっかり組立ができるというところ。
たとえば前のFC東京戦では、縦に出すよと見せかけておいて中に出すというプレーがあった。
SBでこのプレーが見れるのは、Jリーグの中では希少価値がある。ガンバ大阪の米倉恒貴がSBでブレイクして代表に選ばれたように、六平もマジでSBをトライした方がいい。フィットすればリアルに代表クラスになれるだけのポテンシャルはある。
今回はSBに求められる資質について、主に組立の必要性についてやったので、次回はやっとできるわ「超一流のゲームメーカー」について。
デュークの問題点
田坂体制になり、早4試合を経過しました。
結果こそ出てはいませんが、前体制と比べると、だいぶ秩序ある組織体になってきたなと思えます。戦術とかに関しては、近いうちにスポナビのほうで書きます。
さて、今回の主役はミッチェル・デュークです。
デュークなんですが、いろいろと問題ありです。もちろんサッカーの話です。
ただデュークという選手は、しっかりハードワークするし、走ってくれるし、好青年っぽいし…。まぁ憎めないヤツです。
ではここで、デュークの特徴から考えてみましょう。
デュークの特徴は、
- 雰囲気的にハワイのビーチにいそう
- 身長の割に小さい車に乗ってそう(同郷のボスナーがミニクーパーに乗っていたというイメージから)
- 眼鏡かければ厚切りジェイソン
っておい! これ外見のイメージだろ!!
マジメにサッカーについてデュークの特徴は
- 守備サボらない
- 最後まで走り抜ける
- フィジカルが強い
すぐに挙げれるのはこれくらいでしょう。ここから分かるのは、この挙げた3つの特徴はボールとは無関係なところでの特徴です。例えば、「パスが上手い」とか「ドリブル上手」とかそういうのは思い浮かばないですよね(失礼は承知です)。
そうです! デュークとは、オフ・ザ・ボールでのクオリティー次第です。その動きが良ければ抜群のプレーが見れます。
ではここでデュークの問題あるプレーを見ていきましょう。
先日のFC東京戦から
ヨンアピンからデュークへ
デュークは足元にボールを納める。中では枝村匠馬がフリー。本田拓也は逆サイドをチェックしている。
デュークは前を向く。ヨンアピンはオーバーラップ。この時のデュークの視野にはヨンアピンしかいない。
ヨンアピンへパスを出す。デュークはそのまま縦に走る。
デュークのフリーランにより、中の枝村が空く。しかしヨンアピンはクロスを選択し、カットされる。
この場面では、デュークが走った後に枝村に入れて組み立て直さなかったヨンアピンにも非はあるけど、やっぱり1番の問題は「デューク→枝村」という組立がなかったところ。
デュークがトラップした2枚目の画像ではデュークは中を向いていることから、視野には枝村、そして本田も入っていた。しかし、ボールが納まると同時にデュークはプレースピードがまるでペースダウンしたかのように縦の一点張りみたいに、上がってくるヨンアピンにしか視野が入っていなかった。問題点はここにあります。2枚目の時点で仮に枝村に入れていれば、枝村には最低3つの選択肢がありました。
一つ目はデューク。このシーンもそうなんですが、デュークの特徴として、「パスアンドゴー」の「ゴー」の部分。だいたい縦に走ります。そこに当てる。二つ目がデュークがいたスペースに入るヨンアピン。デュークが縦に走ることで相手を引きつけるので、後方にはスペースが空きます。最後の画像もそうですね。デュークが走ったことで、後方の枝村が空いています。そして三つ目が本田を経由してのサイドチェンジ。本田は1枚目で逆サイドをチェックしていたので、そういう選択もあります。
ここではサイドでの展開が遅かったことが問題。これはこの試合でデュークとは逆の担当だった白崎凌平にも同じことが言えます。白崎の場合は持ちすぎだったり、球離れが悪いところが問題なんですが、デュークの場合は自ら選択肢を消してしまうとこが問題。デュークの問題点は、オフザボールの時はいろいろと見えています。視野が広いです。しかし、ボールを持つと途端に視野が狭まる。1枚目の時点では枝村や本田はしっかり捉えていたはずです。しかし、ボールを納めると視野から外れる。一気に世界観が狭くなります。それで、時に無謀なことをしてしまうこともあるのです。
この場面でのデュークなんですが、ヨンアピンに預けて縦に走り出しました。4枚目の画像です。ここから一気にペースを速めたかのように、プレースピードが上がりました。ここから分かるのは、冒頭でも言いましたが、デュークはオフザボール次第の選手です。ボールを保持しているときではなく、保持していないときに変化をもたらすタイプです。こういった動きを「ダイナミズム」というんですが、それがデュークの特徴といえます。
ではここでもう1シーンを
ウタカからボールを受ける。カウンターが始まります。
ヨンアピンに預ける。
ここでヨンアピンの選択は右足でのクロス。結果は跳ね返される。
この時点でデュークはフリーなんですけど、ヨンアピンの選択肢に「デュークへのパス」はなかったと思います。というのも、ここでパスをするということは、デュークの足元に出すというわけです。でもですよ、もう一回思い出してみてください。デュークはオフザボールで変化を生む選手です。この場面では変化は訪れることはありません。彼がクリスティアーノ・ロナウドだったら、ワントラからの理不尽ミドルが炸裂することが目に見えているので、否が応でもパスを出すと思いますが、ロナウドではなくデュークです。彼の良さを考えたら、ここではありません。ヨンアピンはそれを分かっていたからあえて出さなかったのでしょう。むしろ、ゴール前に走りこんでほしかったと思っているのではないでしょうか。そうでしょキャラ?
ではデュークの良さがはっきり出るのはどんな場面か。それを見てみましょう。
その場面とは、2ndステージ6節湘南ベルマーレ戦でのアシストをしたところです。
ウタカがボールキープ。デュークが縦に走り出している。
ウタカがヒールで出す
はい。これです。完璧なカウンターです。デュークの良さが素晴らしくでたシーンです。
過去の2シーンと違うところは、デュークがどういった状況でパスを受けるかというところです。過去2シーンではいずれも足元でパスを受けています。しかし今回はどうでしょう。あらかじめ走っている状態で、スペースで受けています。初めからギアが全開でスタートしています。
ここまでで分かるデュークの特徴は、「デュークは走ってナンボ」の選手だということ。パスは足元ではないです。スペースです。このアシストしたシーンでは、縦のダイナミズムによって生み出されたわけであって、パスを出したウタカもデュークの良さを理解したうえでキープ:裏にデュークの走るスペースを作ることをしたんだと思います。
そういえば、ウタカからデュークへのパスというのは、そんなケースが多いような気がする。確か神戸戦のデューク初ゴールも走っている状態のデュークに出しているし。竹内涼なんかもそうですけど、スキルあるパサーは味方の良さというのを一発で理解することができます。パサーっていうのはそういう選手です。話ずれそうなんで近いうちにこのことに関してやりたいと思いますが、味方を理解できないパサーっていうのは2流ですらないんです。なんちゃってパサーです。
ではここでデュークの欠点を。
デュークは器用なことをするときもありますが、基本不器用です。ハードワークをしっかりやるというところからして岡崎慎司に似ているところがあります。それで、岡崎の場合は、ダイアゴナルの動きがあって、例えば左にいたことが多かった2010年は、右からのクロスに、中に走ってシュートしたり
あるいはダイアゴナル・ランによってスルーパスを受けたりとか
こういう動きがありました。ただデュークにはそれがない。湘南戦のシーンなんかもそうですが、縦のダイナミズムはあっても横のダイナミズムはありません。それに関しては、今まで左のウイングバックをやっていたからでしょう。WBがピッチ中動き回ったらそのサイドが死にます。サイドバックがいないので動きたくても動けない。サイドに縛りつけられます。だから中への動きがない。そこは今後の修正ポイントです。
他では中へのドリブルでのカットインがない。何回かはそれらしきことはやってましたが、そこは問題があって、カットインするファーストタッチはいい。一人は抜けます。でもセカンドタッチが悪い。カバーする2人目のDFに獲られることが多い。原口元気とか中島翔哉は細かいボールタッチで中に射抜くドリブルをするんですが、デュークはセカンドタッチが大きくなることが多くて。でもそれはデュークの本来の持ち味ではないので割愛します。
ここまでいろいろ書いてきましたが、デュークは走ってナンボです。現在はSBがいるので活動範囲が増してくると思います。デュークの下に六平がいることが多いのは、組立をしっかりしたいからかなと。これに関してはスポナビの方でやります。
1つ言えることはデュークは檻に入れてはならないということであり、開放感があるスペースが最も生きるということです。
という中途半端な結論ですが、だいたい言いたいことは言えたのでここまでにしたいと思います。