【Play back the GAME】1999年Jリーグチャンピオンシップ第2戦 清水エスパルスvsジュビロ磐田 ~静岡が割れた日~
ある時、偶然YouTubeで動画を見つけました。懐かしいなと思って動画を全部見てしまいました。清水エスパルス史上、最も頂点に近づいた日。’99年チャンピオンシップセカンドレグ、ジュビロ磐田戦です。
サントス懐かしい。ヤスキヨ懐かしい。そうだった。当時は今は亡き「3-5-2」だった。戸田がリベロにいるというのもエスパルス時代ではそんなに観られなかった。このポジションのレギュラーである森岡隆三は骨折のため離脱中。じゃあジュビロ。
ジュビロもいつも通りのよんよん...4-4-2!!? 改めてみるとジュビロの4-4-2は珍しい。安藤はこの2ヵ月前までエスパルスの選手だった。高原はベンチスタート。名波はヴェネチアにいた。
因みに、チャンピオンシップでダービーマッチだったのは後にも先にもこのカードだけ。物凄く因縁たっぷり。あとゲスト解説に武田修宏がいたけど、今と変わらず何を言っているのかわからなくて、それをNHKでやっていたから喋るたびに冷や汗と次のセリフに対するワクワク感というスペクタクルを提供してくれた。そういえば一応ジュビロOBだったね。去年のダービーもSBSのジュビロOB枠に出ていたっけ。サックスブルー感ゼロ。
ジュビロ磐田スタジアム(現ヤマハスタジアム)でのファーストレグを、これまた今は亡き延長Vゴールで落としたエスパルス。エスパルスの優勝条件は90分での勝利。もしくはVゴール勝ちからのPK戦勝利のみという、条件からしたら引き分けも許されないので非常に厳しかった。
そんなわけで、立ち上がりからゲームを支配するのはエスパルス。市川&アレックスの両サイドを起点に攻め立てる。ゲームの組み立てはサントス。久保山が弱冠引いてノボリとの2シャドー状態。だから中盤では
このように数的不利になる。ジュビロ中盤はこの数的不利から脱却するため、藤田と奥が中に絞りケア。でも
ご覧の通りエスパルスが誇るJ最強の槍である両サイドにスペースが生まれてしまう。だが前半10分過ぎから
この日FWに入った福西がサントスの見張り番として中盤に落ちる。藤田と奥はサイドのケアへ回り4-4-1-1の形へ。ここからジュビロがセカンドボールを回収する回数が多くなり、徐々にペースはジュビロへ。
35分。西澤が狙われ、中山➡服部と繋がれジュビロ先制。西澤の組立力も今を基準に観たら酷いもんだけど、同じ左サイドのアレックスがあまりにも高い位置を取っている&サントスには福西が張り付いているでパスコースがなく孤立。同情の余地は、少しはあるかな。
先制を許して直後、ゴール前でフリーキック獲得も報復行為でアレックスが退場。このFKをノボリが直接決めて1-1で前半を折り返す。
1人少なくなって迎える後半はシステムを4-4-1へ変更
左SBが戸田である理由で考えられるのが、西澤では組立で心許ないからというのと、ベンチメンバーも含めて、SBらしい仕事ができるのは戸田しかいなかったから。
1人少ない状況下で、エスパルスは序盤からジュビロがペースを握る。ジュビロが組み立ての起点としたのは服部と、数多くいる三浦の中の文丈の方の三浦。4-4-1にしたことでジュビロボランチに対するプレスが甘くなり、この2人がサイドへボールを運ぶことによって中盤だけでなくサイドも数的優位を作ってくる
後半は、このジュビロの攻撃をひたすら耐えて、カウンターワンチャンに懸けてみるという展開に。
久保山をやや下がり目で使い、ファビーニョにひたすら裏を狙わせ走らせる戦法に変更。数的有利でサイドからガンガン攻めてくるジュビロに生まれる最終ラインの穴を突いては決めきれずと、1度ファビーニョの突破から久保山ボレーーー!!がバーーー!!を叩くところがありましたが、ジュビロにも隙があったということで、戦術的なところでは、今の方が格段に上でした、というのがここにきての感想。最後は延長でファビーニョがVゴールを決めて2-1の勝利。も......。
ということで18年2ヵ月前の試合を振り返りました。もうそんな昔です。’99年生まれの子は今年高校を卒業します。高卒ルーキー勢はこの年に生まれてるわけです。皆さん年取りました。でも、あれから何年経とうと、あのゲームを忘れることはない。そう懐かしさと共に思えたメモリーでした。
新シリーズ突入!! 始めました
1月15日でスポナビブログが終わっちゃいました。これからど~しよ~かなぁ~と考えましたが、このブログは個人技編はもちろんのこと、戦術編やピッチ外のことなどなど、いろいろぶっこんでいきたいと思ってます。
それだけではないんですが、いろんな企画を考えている中で「猫煮小判」ファン、そして「豚似真珠」ファンの皆様とコミュニケーションを取っていこうと思いまして、時代の流れにも則っとり、調子に乗ってTwitter始めました!!
スポナビ終わってどうしようかなぁ~っていろいろ考えた結果、ここに辿り着きました。サッカー愛する者達よ。出てこいや‼
— 猫煮小判@ブログは豚に真珠 (@scnekoni_koban) 2018年1月28日
エスパルスサポ、また他サポ大歓迎。宜しくお願いします。
エスパサポ、他サポも含め、サッカーファンやそうでない方。老若男女問わず絡みは大歓迎!! これから新生「豚に真珠」及び猫煮小判を、よろしくお願いします。
そんな生まれ変わった当ブログの次回予告は、すでに作成中でございます「PLAY BACK THE GAME」。過去のエスパルスを振り返ります。どの試合を振り返るかはお楽しみに。エスパルスサポなら思い入れのあるゲームの1つです。
“組立力”ってなに?
今のサッカーでは、どんなスタイルであろうと最終ラインや中盤の選手に組立力が求められます。
そこで!! 皆さんに“組立力”ってなに?ということを問いたいと思います。よく誤解されるのが、パスが上手い=組立力があるということと思う人がいます。これは違います。どういうことか。
組み立てというのは攻撃を円滑に進めるための下作業です。例えば、
こういう状況があったとします。ボールホルダーに対するプレッシャーはまだありません。この時に横にいる相方に
これだと、どんなにパスそのものが素晴らしくても
これでは受け手が困るので、理想とするビルドアップができません。受け手が、相手選手との距離感が遠く且つ次のプレーに移行しやすくすることが組立力があると言えるとなります。具体的なことを言うと、
こういうことです。パスが上手いというより、味方を楽にしてあげられるというのが組立力なんですね。
ではエスパルスの選手で組立力があるのは誰なのか視ていきます。
個人的に、1番組立力がある選手は枝村じゃないかなと思っています。その心はというと、枝村の凄いところはパスを受けてトラップするまでの間にギリギリまで相手を引きつけるところ。
バックステップを踏むことで“間”を作る。それで相手がギリギリまで来たら
相手をかわしてもう1人を引きつけて
最終的に2人引きつけてパスを出す。枝村によくみられるプレーです。2人を引きつけられる枝村の地味プレーなんですが、1試合に何回でも観ることができます。なかなか地味で目につきにくいですが、こういったプレーをしてくれるからこそ枝村は外せないわけです。中盤や同じ右サイドの鎌田を助けているのです。
最終ラインの選手で言うとやっぱ角田。角田の組み立ては本人も言ってますが、チャレンジするときは100%できるというだけの確信があるときのみやります。だから基本ノーリスク。ですが角田もボールを前に持ち出して相手を引きつけたのちパスを出すのはよく見るシーン。
ノーリスクなプレーを選ぶのは風間八宏の教えもあると思いますが、それでもしっかり引きつけてからフリーな選手にパスを出しています。組立力があると言えます。
支配者 河井陽介
相手を引きつけてパスを出す、という技術に関してトップオブトップのクオリティを持っているのは河井陽介です。トラップやファーストタッチだけで相手1枚を剥がせるほか、トラップ1つだけで相手を誘き寄せるなど、河井のセンスあふれるプレーを感じさせます。河井記事は書いている方なのでぜひ。
なので、組立力あるある選手と微妙な選手というのは顕著に違いが分かります。先日の大宮アルディージャ戦ではカヌがチョットしたプレスでボールを簡単に離してしまい、
鎌田が困る。ボールを離すタイミングが早すぎたということとフェイクもいれなかったことでこうなる。
逆にボールを出すタイミングが遅れると、パスフェイクを入れたとして対応されて、結果的に平凡に終わる。いわゆる相手にとって怖さを与えるようなパスではなくなる。六平はそんな感じ。せっかくフェイク入れてるけどタイミングを逃してしまう。やればすごくうまいと思うんだけど、なんかもったいない。
今の時代、どのポジションだろうとどんな戦術だろうと。パスがいくら上手くても組立力がないと使うのは難しいです。戦術的に幅が狭くなる。
“組立力”
これ、しっかり覚えましょう。
Jリーグ秋春制を考えてみよう
先週、スペインのリーガ・エスパニョーラが開幕しました。恒例の欧州リーグ最後の開幕です。ちなみに海外組日本代表の中で1番手で開幕した久保裕也のベルギー・ジュピラーリーグはDAZNでもやってますが、8月頭に開幕しました。いよいよこの季節が始まりましたね。
さて、そのヨーロッパのスケジュールは秋に開幕して(事実上の夏)春に終わるというシーズンです。イングランドのプレミアリーグみたいに、ボクシングデーから年末年始の中1日とかいう鬼日程もあれば、ドイツのブンデスリーガのように1月にウィンターブレークを設けているリーグもあります。所属チーム数による試合数とかありますが、涼しい時期にサッカーをやるというのが秋春制です。その秋春制にJリーグが移行するのではという話が真面目にありました。最近その話は白紙になりましたが、このカレンダーにすることに反対意見が多い世論が勝ったということですね。
反対意見の理由として、主なのが東北地方がメインで雪の問題。日本のスタジアム施設にヨーロッパのように温水で雪を溶かす機器がそんなにない(そもそも予算がない)とサポーターのスタジアムへの交通手段など、雪があらゆる問題として挙げられます。雪とは無縁な静岡県民にはわからないですね。ヨーロッパは緯度的には北海道よりも北ですが、温かいな海流があることで北海道ほど雪は降らないです。そういう環境でもあるので、夏にやるという選手にとって地獄なシーズンを送る必要がないのですね。
あとは3月に卒業する高校や大学から加入するルーキーは秋春制になるとどうなるのかとか、ACLはどうなるのとか(ACLも秋春制になるという話もちらほら)。
世論では、雪問題での反対意見が多いのですが、それだけだとあまりにも一方的なので、秋春制にするメリットを考えます。
秋春制のメリットとは?
まず、クソ暑い夏にシーズンをやらなくていいということですね。今の夏は本当にヤバさMAXなので、公式戦は夜にやりますが、選手は普段のトレーニングは特にクソ暑い午前中です。毎日やるだけで疲労の蓄積は相当なもんです。
夏場の、体力の消耗する時期に過密日程で試合を組まれると、どうしても選手のパフォーマンスは落ちる。当然、試合のクオリティも落ちてしまう。ファンの中には毎回来られるとは限らない人だっている。年一回の試合を楽しみにしている人も多い。そういうファンのために、俺たちはできるだけよいプレーを見せたい。そのためには、選手が動ける季節にスタートするのが一番だと思う。
選手にとってのメリットも大きい。
真夏に試合がない分、疲労が軽減され、怪我なども減るかもしれない。そうなるとよりよいプレーを見てもらえるだろうし、選手生命も長くなる。また、海外移籍もより実現しやすくなるだろう。少なくともこれまで、いつもついて回った時期的な問題は解消される。代表に関していえば、欧州と同じスケジュールなので、国際Aマッチデーに欧州の国と試合を組むことも以前ほど難しくないはずだ。
鈴木啓太もなんかのインタビューで言っていましたが、やっている選手が「できたら秋春制がいい」と言っているので、やはり夏にシーズンをやるというのがどれほど辛いのかというのがわかります。それにキャンプ時期も、体が凍えている冬ではなく夏にやるということで、シーズン前の調整時期にケガをするリスクも防ぐことができます。シーズン入ったら止まらぬレールの上を突っ切るわけですからね。中6日の夏場は選手にとってリスクが大きい。
後は移籍市場。これもヨーロッパに行きたい選手にとってシーズンのずれは欠陥であり、現行のJリーグのシーズンが終わるのは12月。ヨーロッパの冬の移籍市場は1月のたった1ヵ月です。移籍の話をまとめるには時間が短いですし、それは夏も同じですね。またヨーロッパからJリーグに移籍する選手にとっても難しいです。8月にヨーロッパでシーズンインした選手が1,2月にJリーグへ移籍すると、その選手にとっては1年半のシーズンになる。逆パターンも同じ。この夏にエスパルスに加入した増田誓志は、秋春制のUAEリーグからの移籍で、5月にシーズンを終え加入したのは8月。チームは始動して半年になるものの増田はこの時点で3ヵ月のブランクがある。コンディション的にチームにフィットするには時間がかかります。スケジュールを合わせるという意味では移籍する選手やチームにとってもメリットは大きいです。
Jリーグが、日本サッカーが本気で強くなるために秋春制にする意味は大きなことだと思います。ただ、リーグだけでなくカップ戦や元日に決勝をやる天皇杯の日程、そして環境の問題など課題は山積みです。今回は一旦白紙に戻した結果となりましたが、今後また同じように秋春制の議題は復活することになると思います。さてこの問題。最終的にどうなるのでしょうか。
当ブログの今後のあり方について
どうも、皆さんこんにちは。結構すっぽかしてました。
さて、スポナビとのブログと並行でお送りしています「豚に真珠」ですが、今回はタイトルがこんなんなんで「もしかして辞めんのか?」とお思いの方いるのではないでしょうかいや辞めません!!
今回このように至った経緯として、まずこのブログは、スポナビは戦術ですが、こちらは選手の個人技を中心に紹介しています。個人技について、一見関係なくね?と思うような些細なこと、サッカーを「そういう見方もあるんだな」と思っていただけたらというのがこのブログを立ち上げた理由です。やっぱプロサッカー選手ってすごいんですよ。何が言いたいかというと、プロ並みのテクニックを持つ人って実はゴロゴロいます。あなたの隣にもいるかもしれません。では、そういう人とプロになる選手の違いって何というと、どれだけ頭の中にピッチ上の画を描けているか。ルックアップのタイミングや1つ1つのステップの踏み方、1つのパスを出すタイミングなど、そういった些細なプレーの精度が抜群に高いわけです。プロの世界では「技術はあって当たり前」です。1歩1歩の動きの質や状況判断力がどれほどのクオリティなのか。そこなのです。僕としては、そういう些細なプレーを紹介したい。これまでも河井や竹内のプレーを紹介してきた回数が多いですが、そういうところの精度が高いので、プロになるべくしてなったという選手なわけですね。どれだけその些細なプレーがチームを助けているかと思うと、それはもはや芸術なのですよ。だから、もちろんチームの応援もいいですが、純粋に個人技を楽しむ“エンターテイメント”としての見方もあればよりサッカーを楽しめると思うんです。そしてそれは、エスパルスサポーターなら純粋に“エンターテイメント”としてサッカーを楽しめる気質があると思います。なので、そういうプレーを観ないってのはやっぱりもったいないなと。
というわけで、長くなりましたがこれが当ブログの目的です。なので、取り上げるにしろ画像が必要で、去年までならスカパーオンデマンドさんでうまく画像を取り上げることができましたが、DAZNさんだと画像を取り出すことができないので、ちょっと難しくなります。YouTubeのJリーグ公式チャンネルだと引用できるかなといったぐらいで、今後取り上げるとしたらゴールシーンなどしか取り上げることができなくなります。なので今後なんですが、スポナビはスポナビで今まで通りシュール路線で、こちらは、個人技を取り上げるときは取り上げますが、それと同時にこれまでも何度かやりましたが、皆さんと一緒にサッカーにまつわることを本気で考えてみましょうという記事も書いていきたいと思います。例えばエスパルスのことはもちろん、Jリーグの今後のことやサッカービジネスなど、1度は誰もが興味を持ったであろう事柄を企画として取り上げていきたいと思います。
以上となります。今後とも「豚に真珠」よろしくお願いしマス。
サッカーと体力と時間
問題です。デデン!!
サッカーにおいて、動いても動いても疲れないモノってなぁ~んだ?
1000m走と、100m×10とでは、どちらが疲れる?
どんなに運動神経が優れる人でも、どんなに身体能力が高い人でも、どんなにスタミナに自信がある人でも、人間である限り限界というのはあります。
この問い。1000m走と100mを10本やるインターバル走では、どちらもタイムを計るとして、疲労度はどちらが高いか。
僕とボルトがフルマラソンを走ったらどちらが勝つか。
歴史上でも人類最速といわれるウサイン・ボルトですが、数多くある陸上競技において本業は短距離です。そんなボルトと、ちょっとした市民マラソンを走ったことがある僕が本気でフルマラソンを勝負したらどうなるか。200mを9秒台で走るボルトが単純計算したら42.195㎞は32分で走れることになります。でもそんなのおかしいですよね。人間は賢い生き物で、予めどれだけ走るのかが分かっていれば、その距離に従ってペース配分することができます。普段は200mを走るボルトも、200mでどれだけのペース配分すればいいのかを理解しているうえで走っているのであれだけの記録を出せます。マラソン選手もそう。42.195㎞という距離を知ったうえでペース配分をしている。だからそれに適したスタミナと筋力を持つ。
僕とボルトが本気でフルマラソンしても、僕はボルトに負けます。なぜなら途中で僕がリタイアしてしまうから。大差がついたところで体力もなくなり10㎞ほどで倒れこむでしょう。本業ではないけど走れるボルトと陸上は全くのど素人である僕とでは、スタートからボルトとの差がついてしまいます。必死でボルトを追いかける僕は、それだけに執着してしまい、ペース配分がおろそかになってしまう。体が頭に支配されてしまう。ボルトが走り切れるかどうかは知りませんが、それ以前の問題として僕が白旗を挙げてしまうのは当然のことです。
インターバル走では、全力は出せない
100m×10本をタイムトライアルするとして、1本目からどんなペース配分をして走れるか。
インターバル走10本をすべて全力で走るなんて、人間である限り無理です。インターバル走って、いろいろなデータを測れるもんで、もちろん短距離ではあるので選手個人のスピードはどれくらいなのかは分かりますが、それ以外に最初のタイムと最後のタイムの差を見ることで、その差が小さければその選手はスタミナも持ち合わせているんだよということも分かります。
しかし、人間体力には限界があるもの。体と脳が疲労に支配されると、何もできなくなってしまうモノなのです。
インターバル走では、1本全力で走った後、リカバリー走というのがあります。全力で走った後に、急激に体をストップさせてしまうと、体と脳のバランスが崩れ、一気に疲労感が体を襲うことになります。
サッカーで1番疲れる瞬間
「走る」ということは、脳からの指令を受けることで行動できるということです。
サッカーにおいて「走る」要因は2つあり、“攻撃するために走ること”と“守備をするために走ること”です。
攻撃をするために走るということはどういうことか。
攻撃するということはボールを保持しているということ。主導権は自分たちにあります。ということは、いつ仕掛け、いつ走るのかということは、自分たちで判断することができるのです。
守備をするために走るということはどういうことか。
守備をするということは、ボールは相手の懐にあります。受動的に行動せざるを得ないわけです。相手がどのように組み立て、相手がいつ仕掛けてくるかは覇気使いでないとわかりません。自分が走る距離やスピードなど、全て相手次第なのです。そういう走りって、ストレスが溜まりませんか? 走るという行動をするには脳が指令するので、守備をするために走るということに関しては抑制効果があるのです。なので、「俺、守備で走るの、大大大~好き~」という人でない限り、守備で走ることに全力を注げる人などいないのです。
ボールポゼッションは時間を示す
ボールポゼッションは決してチームの強さを表しているわけではありません。30%のポゼッション率で勝つことだってあり得るのです。では何を示している数字なのか。それは単純明快、時間です。90分のうち何分間ボールを支配していたのか。ただそれだけです。しかし、それを発展させたうえで、ボールポゼッションで表された数字のチーム戦術や、トラッキングデータと比較し、どちらが良い試合運びをしていたかも分かります。ポゼッション率で分かることはこれくらいです。ただ、ボールポゼッションが低い=守備時間が長いことは、相手に走らされるということであり、意図しない走りをされることになります。疲れは溜まるばかりで次第に動けなくなる。この間のエスパルスとセレッソの試合でも、守備に走らされていたデュークと枝村は体力の消費が激しかったのは明白でした。
サッカーは走るべきスポーツなのか
頭のいい選手ならば、走る量は控えめにします。だって走らなければ90分体力は持つのだから。サッカー選手は90分での平均走行距離は大体11㎞です。じゃあ12㎞走れば勝てるのでは?と思っているそこのあなた!! それは頭の悪い選手の発想です。11㎞は走っても12㎞に増やそうとはしない。11㎞で勝てるのだから12㎞に増やしたところで何も起こらない。今更質より量を求める武士道は相手にすぐ刺されます。
そこで今定義すべきなのは、走ること、よりも、実際に走った量はどんな質だったのか。11㎞走ったとしても、その大半が自分と、またチームと意図しない走りであるならば、ただ90分間体力を消耗していただけと同じです。じゃあ何を動かせばいい? 人はもちろんですが、それ以上に動いても動いても全く疲れもしないボールを動かせばいい!!(結論!!)
育成への投資は未来への投資
次に育成の方なのですが、昨年成果が上がり始めています。私が就任したのが2015年なんですけど、一番大きな方針として挙げたのは、プロの選手として通用する選手を個で育ててくれというメッセージをずっと出し続けております。グループに勝る個はないということは確かなんですけども、その個の質を育成年代で上げていって、トップに上がった時に「これは教育の必要があるな」と小林監督に言わせるような必要がないフィジカル、それからプレーイングスキル、メンタルを持った選手を個で見てあげてくれと。先般、ジュニユースが3冠を獲りましたけども、彼らの年代というのがこの方針に基づいて岩下コーチが一所懸命育ててくれておりますので、その方針を明文化してトップと同じように上げればと。またこの育成の強化は、生え抜きのプロをトップに上げるということにつながります。地域貢献の自助でもあるというふうに思っておりますので、大事にしていきたいと思います。
これはトッププロの早期育成をはかっていく上では避けて通れないのですけども、トップとの交わりをユース年代ではもっと増やしていく。練習やサテライトゲーム、それからコーチングスタッフの交流。こういったところの運営についてはトップとユースをもっと近づけていくということを意識しました。ただ、従来通り、登録ですとか、プレミアリーグの運営等、それから選手の評価は育成がやるんですけど、トップとの距離感を近づけるということを今年は小林監督も含めて意識していきたいと思います。
次に育成にかかるスタッフが絶対的に足りませんでした。これまでは投資をしたくてもJ2に降格して、トップに回すお金で精一杯なところで我慢してもらっていたところを、今回は少し厚めに予算を充てています。それから3番目は選手そのものの自力の向上と言いますか、食育教育ですとか、海外遠征での経験を積ませる。静岡を離れた高いレベルでベンチマークを置いて、個の成長を促進するということを意識した予算像を考えております。
最後に指導者のバラツキが、組織が大きくなってくると必ず出ますので、そのバラツキが出ないようなリンケージを取る仕組みを育成の中で、これはトップも含めてなんですけども、考えていくということを指針として挙げております。
力入れていますね。
2015年に左伴社長になってから常々言っておられます、下部組織への投資。クラブの経営基盤がしっかりし、収入の増収などあり、クラブの資金をトップチームだけではなく、下部組織にも回すことができるようになりました。
地方クラブにとって下部組織は宝以上
エスパルスというクラブは、ガンバやレッズみたいに大企業がバックに付く大都市クラブ(浦和は大都市なのか......?)ではありません。なので、移籍市場においてマネーゲームになってしまえば勝ち筋は見えにくい。それに、静岡は地方です。はっきり言えば田舎です。東京や名古屋には安く日帰りで行ける距離ではありますが、田舎です。となりますと、DAZNマネーが入る今後は、即戦力ルーキーを獲得することも難しくなります。大卒は分かりませんが、高卒で声が掛かる、いわゆる『大物』選手は、きらびやかな都会チームに行ってしまいます。若い人にとって都会は魅力的です。それに、ガンバやセレッソ、FC東京はセカンドチームを持っています。若いながら公式戦に出場できる環境はあります。これでは難しいです。
地方クラブにとって若い選手を獲れる方法は、出場機会のない若手のレンタル移籍か、ユース選手の昇格しかなくなってきます。
クラブフィロソフィー=下部組織
ヨーロッパの歴史あるビッグクラブのレジェンドと言われる選手って、どんな選手でしょうか。
例えばバルセロナ。メッシやイニエスタを筆頭に、シャビやプジョルに古くはペップ。いつの時代もチームの軸はカンテラ出身者です。
では、近年大型補強を続けているレアルマドリードはどうでしょう。レアルのレジェンドはラウールにカシ―ジャス、イエロ、古くはブトラゲーニョもそうです。今だって、アレ..?いや、今もモラタとか、モラタとか、へセとか、マタとか...みんな出ている。まぁ、優秀な卒業生は多いです。他だってマンチェスターユナイテッドも、素晴らしいアカデミーを持っていますし、アヤックスの下部組織は世界中のモデルケースとなっています。というように、長い年月強豪チームとして成り立っているクラブの根幹は下部組織の充実があってこそです。
下部組織というのは、第1にプロ選手への育成が目的です。アカデミー出身者のアドバンテージは、高校サッカーや大学サッカー出身者より、チームの内情を理解できているということです。戦略的、戦術的にクラブの方針を理解できているということです。
Jリーグの育成組織の現実
現在、J1には18チームありますが、この中でユース出身者が10人以上いるクラブは何チームあるでしょうか。
開幕時点でトップに登録されている中では、柏レイソル、横浜F・マリノス、ガンバ大阪、セレッソ大阪、ヴィッセル神戸の5チームだけです。ここ最近ユースからの昇格選手が多いコンサドーレ札幌は、他チームへの流出が続いており、現在は9名です。J2ですと、湘南ベルマーレや東京ヴェルディは有名ですが、あとは京都サンガくらいかな。昨年J2のチームと対戦しましたが、ほとんどのチームが戦力外になったベテラン選手や出場機会がない若手選手をレンタルしているのが現状です。J1ですら少数なのにJ2でユース勢は余程力を入れてない限り難しいです。
高校サッカーとのジレンマ
地方の、特にJ2のクラブですと、ジュニアユース年代ではいても、高校年代では選手の獲得も難しくなります。
高校サッカーに進む選手には「選手権」への憧れというのはあるでしょう。本気でプロサッカー選手になるのであるならば高校のサッカー部に行くよりユースに進んだ方がいいです。ですが、選手権やインハイの常連チームへ行けば、J1クラブのスカウトも来れば名門大学からの誘いもあるでしょう。ユースへ昇格すればそのままトップチームへの昇格1本道ですが、高校サッカーへ行けば選択肢が広がります。
そのジレンマによって苦境に立っているのがザスパクサツ群馬でしょう。現在プロ契約している選手の中でユース出身者は1人だけです。群馬は、一昨年の江坂、去年の瀬川と掘り出し物と言える即戦力大卒ルーキーを獲得しており、大学サッカー界から一目置かれています。今年日本体育大から加入した高井和馬は、昨年の関東大学リーグ1部の得点王で、J1でも即戦力クラスの“大物”です。大学サッカー界におけるザスパクサツ群馬は、信用におけるクラブになりつつあります。
そんな群馬ですが、ユース出身者が1人である現状、高卒選手の獲得は難しくなっています。なぜか。それは、群馬県の高校サッカーには、前橋育英という超名門高があるからです。J1のスカウトはもちろん、名門大学への太いパイプもある前橋育英に行った方が、言い方は悪いですが、可能性が広がり、より高いレベルに挑戦できる道もあります。ザスパクサツ群馬というブランドが、前橋育英のブランドに押されているのが現実です。
この話は群馬だけではありません。J1のチームだって例外ではない。一見有望株はJクラブのユースに進みがちと思いきや、実際は地方によっては全く逆の方向へ進んでいるところもあるのです。
クラブの下部組織に対する在り方
育成の重要性が広まっている今、これから常勝軍団になるためには、下部組織改革は必須です。むしろ今後はユース出身者がチームの中心でなければいけないのです。それは、最初でも述べた通り、ユースはクラブフィロソフィーそのものだから。大型補強でやって来た選手が戦術の柱になってしまえば、その哲学は揺らぐことになります。本来ならば、それはあってはならないことです。
我がエスパルスも、昨年から組織を変え、トレーニングメソッドの変更など、変化があるみたいです。実際に昨年のユースチームはクラブユース選手権では準優勝。さらにジュニアユースでは3冠を達成しました。改革から1年ですが、着実に進歩しています。いや、1年で成果が出ているということは、想定以上のスピードで成長しているのでしょう。そこで今年、下部組織へより多くお金を回すことができるのはかなり大きいことです。
先日のルヴァンカップではユースの選手が3人メンバー入りしました。2種登録された選手はまだまだいます。さらに下の黄金世代も控えているので、順調に行くことができれば、『闘える選手』を育成しているのだから、良い時代に突入できるのではないかと思います。ただ、長い目で見守りましょう。