豚に真珠

サンバのリズムに乗せられて、いつの間にかそのオレンジ色に魅了される。それが清水エスパルスというチームなんだ

角田誠のプレーを見てみよう/適正ポジションはどこか

8月12日にリーグ戦が再開します。

 

降格圏から脱出するために、この夏の移籍ウィンドーで鄭大世と、角田誠を獲得しました。

 

鄭大世はすでにエスパルスの一員としてデビューしてますが、角田は湘南ベルマーレ戦が初陣となりそうです。

そこで、今回は角田のプレーの特徴を見るだけではなく、ポリバレントな角田にとって、適正なポジションはどこかを考察します。

 

 

川崎フロンターレ角田誠

 

まずは、つい最近まで所属していた川崎でのプレーを振り返ります。

前提として、川崎はボールポゼッションを高く保つスタイルをしており、ビルドアップを非常に大切にしているということを頭に入れておいてください。

 

サンプルとして、今季川崎の最多得点試合となった1stステージ第4節アルビレックス新潟戦を観ていきます。この試合は4-1で川崎の勝ちです。川崎フロンターレのイメージって、バカのように点取って圧勝するだったり打ち合いを制する試合がすごい印象的なんですが、今季はこの4点を取った新潟戦が単独最多得点試合となってます。ジュニーニョや我那覇レナチーニョ鄭大世がいた時代はもう過去です。これはこれで寂しい。っていうか鄭大世ウチにいるわ。

 

では見てみましょう

前半3分

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角田へバックパス

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新潟の選手がプレス。ここで注目すべきは、角田の体の向き。プレスに来ている新潟のラファエル・シルバは角田の右を切っています。そうです。角田は右利きで、そして右サイドはオープンスペース、かなり空いています。エウシーニョがフリーです。ここであくびしてもばれないほど広大にスペースが空いています。

 

で・す・が

 

角田は左に向いてしまう。そこは密集地帯です。右を切られているからしょうがないとも言えますが、ここで差が生まれます。組立力があるかどうかの差です。

では続き

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囲まれて局面は3対2。数的不利。自ら袋小路に追い込まれる状況を生んでしまいます。これはいけない。

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結果、相手にカットされます。

では次

前半6分

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角田は杉本健勇へ楔を放つ。

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ここで杉本は4人に囲まれる。杉本のパスコースは中の中村憲剛と右のエウシーニョ。と、角...田...。アレッ!? 

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ボールは中村憲剛へ。角田はボールもらう気なし。

 

ここが問題!!

角田はこの時、ボールを受ける動きをしなかった。楔を打ってから貰い直す動きがなかったわけです。

 

角田は、楔を放ったところは良かったです。

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問題はこの後。

本来ならば、動きなおしてもう1度もらうことができるポジショニングを取るべき。

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でもこの時角田は動かなかったため杉本には2つしかパスコースがなかった。組立においてバリエーションを2つから3つに増やすということはとても重要なことです。これがカルフィン・ヨンアピン谷口彰悟ならもう1度もらう動きをするでしょう。またそうした動きを風間八宏は求めてます。

 

では谷口とヨンアピンはどうか。見てみましょう。

 

谷口彰悟カルフィン・ヨンアピン

まず谷口。

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角田から大島へ。谷口は丸で囲まれてる左サイドの選手。

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大島が前を向く。谷口が動き出す。

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相手の門を通して、裏で受ける。これだけで相手を2人外した。こういう動きをセンターバックでありながらできる谷口は組立力があるといえます。

相手の背後で動き、パスをもらうことが風間八宏の狙いです。筑波大学から一緒にやっていた谷口はこの動きがスムーズにできています。

 

 

「一番自分の中で変わったと思うのが、相手がパスの受け手をマークしているように見えても、受け手が人を外していたら、そこにどんどんパスを当てていいということ。ボールをしっかり止められて、持てる選手がいれば、怖がらずにどんどん出していいんだと。マークされているようで、実はマークされていないという状態がわかった。少しでも隙間が空いていれば、マークされていないに等しいんです」

 

革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする 著者風間八宏/木崎伸也 発行KANZEN 190項より引用

 

 

これは谷口自らが言っているコメントです。画像の例ではパスの受け手として動いてますが、そういった感覚があるからこそ受け手としても抜群の組立のセンスを発揮できるわけです。

 

では次にヨンアピン

 横浜F・マリノス戦から

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 アデミウソンからボールを奪う。

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 ボールはヤコヴィッチへ。

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 ヤコヴィッチから本田拓也へ。ヨンアピンはフリー。この時点では受ける気はなし。というのも、密集したエリアにいることと、自分の視野にボールと味方、相手を入れていないから。要するにこの時は準備ができていないということです。だから「ボール回すなよオーラ」をビンビンに発しているのです。

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ボールは八反田康平へ。ヨンアピンはバックステップを踏んでいる。ここで準備が整う。ただ下がるより、バックステップをすることで、視野にボールと味方、相手を見ながら下がれば、状況判断がスムーズにできます。

 

 

バックステップは、ボールを自分の視野に入れながらマーカーの視界から外れ、自分のスペースを確保するのに最適な動き方です。

 

Jリーグサッカー監督 プロフェッショナルの思考法 著者城福浩 発行KANZEN 123項より引用

 

 

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ヤコヴィッチがボールを持つと同時に、バックステップで適切なポジショニングを取る。「いつでも来いよバカヤロー」状態になりました。

 

以上が、組立力の説明です。角田とは関係なくなりました。

ここまで言うと、角田の株を下げてしまっている感じなので、角田のいいところを見てみます。

 

これも新潟戦から

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 フリーです。

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 杉本の足元にピタッと楔を入れました。

こういうプレーから見る通り、角田は基本的に足元はできます。村松大輔ほどではないです。パス能力はJの中では平均的でしょう。

 

 

ここまでで言いたいことは、角田はパス能力はあります。フリーなら、プレッシャーを受けていないならいいパスを出せます。しかし、組立においてプレッシャーを感じたり、また動きや精度なんかは高くないです。組立力は低いと言わざるを得ません。起用するならそういったところを考えなくてはいけません。

 

だから、風間サッカーに合わなかったのはそういったギャップが存在したからでしょう。それでも開幕から起用され続けたのは、守備専として置いておきたかったからです。しかし、それで大量失点を喫したら守備専なんていらないわけです。だからラストゲームが5失点を喫したエスパルス戦だったということはある意味当然の結果だと言えます。

とはいえ、何も角田がすべて悪いというわけではありません。角田はキャリアがある選手です。若手ではないので、今から風間サッカーを覚えろは無理です。そういうこともあり、角田のエスパルス移籍は、角田が風間色に染まらなかったということより、風間八宏の起用法が悪いわけでもなく、獲得した川崎フロントが悪いわけです。合うわけがない。だから

 

なぜ角田を獲った?

 

 

 

 

守備における角田誠の特徴。

 守備の特徴として、角田と似た感じなのが村松大輔です。球際だったり、フィジカル勝負だったり、そういうところが持ち味の守備をしています。

 

ただ、もちろんお互い違う点もあります。

例えば村松は、

  • 守備範囲の広さ
  • スピード

 があります。これは角田にはないですね。

一方で角田には

  • 豊富な経験値
  • 高さ

があります。

 

では角田の守備を見てみましょう。

 こちらも新潟戦から

 

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 新潟のショートカウンター。角田はあえて間を空ける。もしこの時に詰めてしまえば

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こうなる。画像では、すでに田中達也が裏を狙っていた。

では次

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角田の次の仕事は、左サイドからカットインするラファエル・シルバをチェックすること。

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小林裕紀がボールを持っている。ここでラファエルをシャットアウト。2人に「ここはチェックしてるからな」と警告しているかのように詰める。

この時のそもそもの狙いは、ラファエルにボールを入れさせないこと。だから気づかれていい。むしろ気づかせている。気づけば入れられることはないから。

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小林はラファエルを諦める。角田もラファエルから離れる。ラファエルは少し寂しそう。

ここで田中達也が裏を狙っている。角田の次の仕事は、田中を抑えること。田中はスタートを切っているため、今更封じることはできない。だから、田中に入ったあとを抑える。

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パスが出る。

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1対1

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田中から小林へ。田中はやり直すように指示している。角田はこの一連のミッションをコンプリート。

 

経験値高い角田は、適切なタイミングでの守備が本当にすごいです。ジャストなタイミングでジャストな仕事をしている。村松はすべてクラッシュするように非常にアグレッシブですが、角田の守備は職人肌です。ここが見どころでしょう。

 

 

適正ポジションはどこ?

ここまで組立から守備をやりました。ベガルタ仙台ではボランチで中盤のフィルターとして輝いていました。ベガルタのようにボールを保持することをメインとしない戦術なら輝きます。しかし、川崎フロンターレのように、ポゼッションを大切にするチームだと、微妙な感じになります。代行監督の田坂和昭がどんな形を作るかは分かりません。おそらく(というか絶対)守備的なチームになるでしょう。それならばボランチです。組立力の弱さを隠蔽できます。しかし、エスパルスのチーム全体として、やはり技術ある選手が多いです。ボールを保持すればそれを大切にするでしょう。そうなるとボランチでは厳しくなる。サイドで使うのはもったいない。

だから結局は戦術次第です。ポリバレントな選手は、ポジションと戦術次第でとびっきりの輝きを見せます。しかし、ポリバレントという言葉に騙され、さまざまなポジションで起用されると、ダークオーラを発します。

ポリバレントな選手は1人でもいれば便利です。でもそれは短期決戦の話。長期的に見るならば適正ポジションを見つけるべきです。なので角田のポジション=現在のチーム戦術が分かると思います。だからがんばれ角田、田坂!!

 

今回はここまで。

次回は

「エースストライカーの条件」か「超一流ゲームメーカーとは」 

または「中村俊輔@俯瞰視野」をやりたいと思います。