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豚に真珠

サンバのリズムに乗せられて、いつの間にかそのオレンジ色に魅了される。それが清水エスパルスというチームなんだ

日本vsカンボジアから見る、日本の攻撃が単調な理由/現代サッカーにおけるSBに求められる資質

■現代サッカーが求めるSBの役割

 進化を続ける現代サッカーにおける、SBの役割

グアルディオラのチームの進化のプロセスは、まず問題点を分析することから始める。この頃のバイエルンは、リベリーからサイドバックへ、そしてセンターバックへを通ってロッベンまでの、チームに何の利益ももたらさないUの字のパスを循環させていた。ボールを持っていたが、そのボールを使ってなかなか仕掛けず、敵のラインを壊そうともしていなかった。深いところを突くパスもなかった。その問題解決のために試行錯誤していた時、バルサでの4シーズン目を思い出したのだった。

(中略)

この時、チームを進化させるために浮かんだ1つのアイデアが、左サイドバックに関する戦術の変更だった。ペップはこの変化について、7月のトレンティーノで私たちにこう説明している。

「あの時、バルサでイメージした戦術変更の目的は、ワンピボーテとともに、左サイドバックをドブレピボーテとして敵の攻撃の通路を閉じるために使うところにあった。攻撃を組み立てながら、私たちのチームはワンピボーテの高さまで左サイドバックを上げることができた。しかし、そこから先はボールがワンピボーテよりも前にパスされるまで、左サイドバックはワンピボーテを追い越さないようにする。そして、必要とあらば左サイドから絞って、ピボーテの高さを超えずドブレピボーテの1人となるんだ。左サイドバックをワンピボーテとともにドブレピボーテとして中にいれるアイデアは、私の中でリザーブしてあったんだ」

 

ペップ・グアルディオラ キミにすべてを話そう 著者マルティ・パラルナウ 訳羽中田昌 羽中田まゆみ 発行東邦出版 196項より引用

 

ペップ・グアルディオラのアイデアは、常に最先端の戦術として世界中から注目されている。リオネル・メッシを使った「ゼロトップ」、中盤を厚くした「3-4-3」。そしてバイエルン・ミュンヘンにて実現した「ファルソラテラル」。偽サイドバックである。

 

ポゼッションするうえで、組み立て、ビルドアップというのは、とても重要な作業だ。このビルドアップにおいて、ペップが最も嫌ったのが、センターバックを経由してのサイドチェンジだ。

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このパス回しが起きてしまう原因として、「SBの組立力の欠如」が挙げられる。

前線でボールが行き詰まると選択するのがバックパスだ。そこで経由するのがSBである。SBに組立力があれば、2次3次攻撃につなげることができ、適切なポジショニングにいれば、効果的な攻撃を演出することができる。しかし、組立力に欠けるSBはセンターバックに下げる、及び無理に縦パスを入れ、攻撃を終わらせてしまう。現代サッカーはゾーンで守るディフェンスが主流だ。その守備網を崩すためにヒントになるのがサイドである。現代サッカーにおいて、サイドをシカトすることはありえない。そして、そのサイド攻略するために、サイド後方を利用してビルドアップを行う。そこで起点になるべきがSBなのだ。

 

 

パスは回せるが、ポゼッションが上手くないチームの特徴は、サイドにおける組立に欠陥がある。例えば日本代表。無意味なポゼッションに終始している現在のチームおいて、SBの役割はどのようになっているのだろう。

 

 

■動きがワンパターンな長友佑都

まず、ワールドカップアジア2次予選、カンボジア戦から長友佑都酒井宏樹プレーを見てみる。

 

まず長友。前半15分。

 

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フリーでボールを持つ。

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縦にいる武藤嘉規に出す。

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出した後の長友。武藤を追い越す。ただ、赤丸のカンボジアの選手は初めから長友をケアしていたかのように長友につく。これでは武藤をサポートできているとは言えない。

 

次は前半38分。

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再び武藤が持つ。長友は当然のように武藤を追い越す。

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武藤も縦にドリブル。長友も縦にオーバーラップ。動きがダダ被り。

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 結果、武藤は中にボールを入れ、組み立て直さざるを得なかった・この時も長友の近くにはカンボジアDFがついている。

 

 

カンボジアだってバカじゃない。

インテルという、誰もが知るビッグクラブでプレーしている選手の特徴は簡単に分かる。それに、長友の動きは「ウイングを追い越す」しかない。このワンパターン。

例えば、ザックジャパンにおいて、左サイドでコンビを組んだ香川真司は、中に頻繁に顔を出すタイプである。これなら、長友は空いた左サイドのスペースに走りこむことができる。

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しかし、左にいるのが、縦にドリブルできる武藤なら、この動きでは武藤をサポートできない。下がってボールを受けるという動きがない長友では、左サイドの攻撃力がザックジャパンと比べ半減する。そもそもハリルホジッチはザックジャパンを目指しているわけではないのだから、この無意味なスプリントを繰り返しても効果は何もないのだ。

 

 

本田圭佑に無視される酒井宏樹

では酒井宏樹に動き。

前半38分

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本田圭佑がボールを持つ。

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酒井は本田を追い越す。

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酒井は右でフリーとなっているが、本田には酒井が視野に入っていない。そして相手DFからも見放されている。相手ディフェンスラインを横に引っ張ることもできていない。

 

これは、酒井の縦に追い越すというプレーを、本田自身が望んでいないといえる。この時の本田の選択肢は

の3つが挙げられる。しかし、酒井へのパスというのは、相手をいなすどころか、怖さをもたらすことすらできない。なぜなら、酒井に入ったときの酒井自身の選択肢は「クロス」しかないからだ。相手はそれを読み切っている。カンボジア相手でも、そこまでバカじゃない。

 

この後も、何度も本田に無視され続けた酒井。その動きもそのあとのプレーも「本田を追い越す→クロス」しかないからだ。

 

 

ここまで見てみると、長友と酒井にはプレーの引き出しが少ない。縦のオーバーラップしか行動範囲がない。また組み立てることもなかった。相手が相手だとしても、逆にこういう機会だからこそしっかり組立をトライしてほしかった。ただやはり変わらなかった。カンボジアも守りやすかったのだろう。

 

では長友、酒井のプレーを通してみてみたい。

 

■繰り返すオーバーラップ

前半39分。先ほどの酒井のプレーが38分なので1分しか変わらない。

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長谷部誠にボールが渡る。酒井はまたもや本田を追い越す。先ほどのオーバーラップから1分しかたってない。

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長谷部から本田へ。酒井は本田より高い位置にポジショニングしている。

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本田は長谷部へ。この時本田は長谷部に下げることを要求している。ここでも酒井は本田から当てにされていない。

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酒井を哀れに思ったか、長谷部は酒井に出す。酒井は1on1。

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酒井は当然のように仕掛けクロスを上げる。ただ、当然工夫がないので簡単にクリアされる。

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クリアボールを長友が拾う。長友は森重真人に下げる。

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森重は長友へ。

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長友は武藤にいれ、武藤を追い越す。さっきと全く同じ動き。これも相手にケアされている。

 

 

これだけ90分通して同じ動きを繰り返せば、相手からしたら守りやすいのは当然だ。

この試合の両SBは、日本の攻撃を常に停滞へと導いていた。現代サッカーではこのように、ただ追い越すというのは求められていない。状況に応じて多彩な動きをしなくてはならない。現代サッカーにおいてSBというのはかなり重要視されるポジションなのだ。だからSBが攻撃を停滞させるということはあってはならない。

 

 

 

■現代サッカーが求めるSBの役割

SBはディフェンダーだ。だから最低限ディフェンスはしなくてはならない。しかし、サッカーが進化していくのに対し、SBの使われ方も変わってきた。いつの間にか、SBはDFにもかかわらず、攻撃参加を求められるようになり、それはいつの日かSBの基本的動作になった。

 

そこで現代だ。

ペップがバイエルンにおいて、フィリップ・ラームダビド・アラバといったSBにゲームメイクを求めたように、SBがコーナーフラッグを目指してオーバーラップする時代は終わりを告げたのだ。スプリントを繰り返せばいいというSBは旧式なのだ。

 

日本のSBはスプリントを繰り返すことを望まれている。まだまだ最先端に追いつけていない。川崎フロンターレのエウシーニョはかなりフリーダムであり、「ポジションはエウシーニョ」みたいなところはあるが、最先端の戦術で求められるSBは、あのような多彩なバリエーションを持つ動きや引き出しの多さである。そしてゲームメイク。冒頭で言った通り、現代サッカーはサイドバックに組立を求めている。そして日本人SBの中で数少ない組立ができるSBが内田篤人だろう。バランスに長け、ビルドアップに頻繁に関わってくる内田は、現在の日本代表に欠かせないピースである。だからマジで早く戻ってきてほしい。

 

 

ここでエスパルスに。

何回も言うように、SBはゲームメイクを求められるようになった。だからそれなりの技術や引き出しの豊富さが必要となる。

というわけで、六平はマジでSBを頑張ってみたら? もともとゲームメイクには定評があるわけで、現代サッカーが求める役割にマッチしている。長友と比べるのはキャリアも考えてフェアじゃないけど、どっちがマッチしているかと言ったら六平だと思う。あくまでマッチしているかという問題で。アスリート能力や経験値では太刀打ちできないと思うが、さすがにカンボジア戦のプレーを見ていたら、「あれ? これリアルに六平でも通用すんじゃね?」って思ったもん。

 

六平におけるSBの強みとして、やはりしっかり組立ができるというところ。

たとえば前のFC東京戦では、縦に出すよと見せかけておいて中に出すというプレーがあった。

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SBでこのプレーが見れるのは、Jリーグの中では希少価値がある。ガンバ大阪米倉恒貴がSBでブレイクして代表に選ばれたように、六平もマジでSBをトライした方がいい。フィットすればリアルに代表クラスになれるだけのポテンシャルはある。

 

 

今回はSBに求められる資質について、主に組立の必要性についてやったので、次回はやっとできるわ「超一流のゲームメーカー」について。