豚に真珠

サンバのリズムに乗せられて、いつの間にかそのオレンジ色に魅了される。それが清水エスパルスというチームなんだ

エスパルス ホーム初勝利へ!/打倒マリノスのカギはハリルホジッチ?

2週間のインターバルを終えて、禁断症状が出掛かっている皆さん! ついに再開しますJリーグ

 

我らエスパルスの再開初戦の相手は横浜F・マリノスです。今シーズンからアンジェ・ポステコグルー新監督となり、ボールポゼッション志向の強いスタイルとなりました。

 

アンジェ・ポステコグルー

この名前。過去何度か聞いたことがありますよね。ご存知、前オーストラリア代表監督で、日本の前には4回立ちはだかりました(2014W杯アジア最終予選第7節 1-1@埼玉、キリンチャレンジカップ2014 2-1@長居、2018W杯アジア最終予選第3節 1-1@メルボルン、同予選第7節 2-0@埼玉)。ポステコグルーという名前が知られるようになったのは2009年にAリーグブリスベン・ロアーの指揮官の就任したとき。Aリーグではなかなか観られないパスサッカーで革命をもたらし、11-12シーズンではクラブ史上初の4冠を達成。豪州屈指の名将として評価されるようになりました。

 

今回はマリノス戦へ向けたプレビュー記事ですが、まず最初はヒントを得るということで、昨年8月31日のW杯アジア最終予選、日本vsオーストラリアをザーッと振り返ります。

 

サッカールーズの3バックとハリルホジッチ

勝てばW杯出場が決まる日本と、まさかの崖っぷちどころかプレーオフすら微妙となってしまうサッカールーズ。この試合のスタメンは

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両チームともヨーロッパで活躍してる選手が多い印象。ロビー・クルーズとかレバークーゼンにまだいるのかなと思ったら去年中国で今はボーフムだと。ちなみに現マリノスミロシュ・デゲネクはベンチスタート。

決戦から半年後に観ると、前半は意外と日本がボールを持ってるなという印象。トータルのポゼッション率ではオーストラリアに分があるものの、それを感じさせないほどに効果的に攻撃をしていました。

え~、オーストラリアのビルドアップなんですが、3バックの両脇、ミリガンとスピラノビッチはサイドに開き、それぞれのCB間にボランチが入る形になります。f:id:butani-sinju:20180325165106j:plain

このオーストラリアの配置は、縦の5レーン、そして横のレーンにからなるマス目に選手が被らないよう、またパス配給しやすいように組まれています。

これに対する日本の守備は、プレスのスタート合図としてオーストラリア2ボランチにボールが来たら山口と井手口がプレスをかける。

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この2ボランチは前を向けず3バックにボールを返却。受けた最終ラインに対して3トップが続けてプレス。相手を拘束する。f:id:butani-sinju:20180325191808j:plain

 ボランチプレスから始まるビルドアップ破壊作戦は見事にはまり、オーストラリアのポゼッションを無効化に成功。

なぜボランチ

よく見てみてください。ボランチの背後です。ガラ空きです。ハーフスペースにポジションを取り組み立てを行うボランチは、奪われたら一気にピンチになります。オーストラリアのビルドアップはスペースが広がっているので上手くいけばプレスに来る相手を走らせ体力を消耗させることができますが、一定のリスクは背負っている。省エネかつ1番のアキレス腱であるボランチに集中してプレスを行うことで効率よく守備ができます。これ、後々出ます。

 

ハリルホジッチの勝算ある危険な賭け

この守備戦術におけるリスクは、ボランチにボールが入るまではプレスするよりブロックを作って“待機”する。もし、ボランチを飛ばしてロングボールを飛ばされたらどうなるのか。そもそもM字型の形を取る理由は、この5人は縦の5レーンにそれぞれ1人ずつ配置され、さらに上下に角度をつけてあり前線へのパスコースを確保するためです。撤退守備を敷いてロングボール起点を作られたらどうするか。

ハリルホジッチはウイングとインサイドハーフ、そしてアンカーの長谷部を横一線に並べて4-5の2ラインを作る。

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アンカーを消すことで相手2シャドーの活動エリアを限定。コンパクトにするため裏にスペースが生まれるが、ココは覚悟。クルーズが0トップのように振る舞い、WBが裏を狙うもクルーズは長谷部とCBで、WBはSBが見張り自由にさせない。また両サイドのストパーがボールを保持したときは、直接トップに入れられるのを防ぐべくウイングを内側、ハーフスペースに配置し、4-3-2-1のクリスマスツリー型にしてハーフスペースを消す。f:id:butani-sinju:20180328212225j:plain

ボランチを飛ばして前線に届けられることがマズいので、そこを第一にケア。裏のスペースというリスクは承知というものの、最前線のクルーズの特徴や危険度の順番も考慮して、ハリルホジッチからしたら十分勝算のあった策だったでしょう。

 

 

 では本題。以上を頭に入れてマリノスを見ていきます。

 

ポステコグルーの狙い

今シーズンのマリノス最大のトピックは、SBをボランチ化させるシステム。4年前にペップ・グアルディオラバイエルンで採用した戦術で一気に世界中で流行しました。ペップが偽SBを始めた理由が、当時バイエルンで最強の槍であったロッベンリベリーを活かす意味で、SBを内側に入れて無数のパスコースを作る、中盤を厚くしてセカンド奪取、奪われてもカウンターを阻止できるという無限ループ。

ウイングを最大限生かす偽SBですが、オフに斎藤学マルティノスという屈指のウイングを手放したマリノスにおいて、偽SBをやる意味とは?とポステコグルーの狙いとは何かを考えていきます。

 

ここまでのマリノスの各ポジショニングをおさらいします

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両SBがボランチ化、アンカーが落ちてCBが広がるM字型の布陣。これ、オージーでやったシステムと一緒なんですよ。5レーンに1人ずつというこの形。さっきオージー戦を振り返ったのは、あくまでハリルの対策はどうだったのかであって、じゃあポステコグルーの狙いってなんぞやというと、ハーフスペースを攻略したいんですよね。M字型のシステムは横一戦ではなく角度があるのでパスコースが無数にできる。プレスを回避しやすい。で、ハーフスペースは今やゴールへの近道ですから、テクニックある選手をこのエリアに流れさせてキープする。あとはサイドに散らすなり中央突破するなりいろいろできます。SBの動き方が異質というのがフォーカスされますが、ぶっちゃけ3-4-2-1のサッカールーズと仕組みはほとんど変わりません。動き方が違うだけで偽SBよりもハーフスペースを攻略してくるということに最大限注意しなくてはなりません。

 

マリノスはハーフスペースで何をしてくる?

前節の第4節浦和レッズ戦では、ダビド・バブンスキーを含めた4-2-3-1で、中盤の3枚は流動的に動く形を取りました。この時のマリノスはM字型だけでなく、ポジションを固定したW字型のビルドアップを披露。

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前線の5人がハーフスペースに自由に入り込んでボールを受ける。例えばレッズ戦32分では

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ハーフスペースからハーフスペースにフィード。ユンイルロクが内側へ入り、ハーフスペースに2人を引きつけて中央にスペースを空けて落とす。このようにウイングがハーフスペースに進入することもあれば、

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降りてきたバブンスキーに入れ替わる形でハーフスペースでボールを受けた扇原というシーンが90分間観られました。おそらく今節もバブンスキーが出てくるでしょう。レッズ戦は中盤が流動的で、アンカーの扇原が前に出たり、ウーゴ・ヴィエイラがハーフスペースに落ちて空いた中央にウイングやバブンスキーが入り込むというのもあり、1つの策を見つけられたと言えるでしょう。ポステコグルー最大の特徴はハーフスペースの使い方にあります。

 

そんなマリノスどう立ち向かう

ハリルホジッチのように上手くハーフスペースを消すことができれば、まだ未完成のマリノスにカウンターの嵐をお見舞いすることはできます。ではここからは、マリノスに対してどう攻めていけばよいか考えます。

 

目には目を、ハーフスペースにはハーフスペースを

ハーフスペースを突いてくるマリノス最大の弱点は、マリノスの最終ライン付近のハーフスペースです。ハリルホジッチがオージーのハーフスペース攻めの対策としてウイングのハーフスペース駐在や中盤のフラット化をしましたが、それは何も守備だけではなく、その後の攻撃にも影響を与えています。

ポステコグルーのM字型ビルドアップを見てみると、一目で弱点が!

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マリノスの後方に陣取る選手はお世辞にもスピードがあるとは言い切れません。その最終ラインがハイラインで、後方スペースをGKの飯倉がカバーするのが今のところの守備パターンの1つ。ハリルホジッチはこのスペースに大迫を持ってきてウイングにスペースを与えたf:id:butani-sinju:20180329213648j:plain

大迫のキープ力があっての策であり、エスパの2トップの特徴的にはテセがこの役割ができるのかなと思いますが、現状はスピード&アタッカー系なので、このスペースにパスを出していけたらOK。崩せます。レッズも、特に後半は途中出場の山田直輝や青木が抜け出す場面もあり、繋がらなかったもののマリノスの守備を崩していました。

 

エスパルス理想の攻め方は、徹底的にハーフスペースにできる穴をスピードある2トップに走らせる。中盤がその動きに合わせる。以上!

まぁ、今のエスパルスはまだ攻撃の形ができていないのでそれしか手がないのですが、相手の弱点を突くのは当然のことで、それが1番の勝ちに繋がる方法ですから、さらにマリノスの場合は1番抑えるべきポイントを抑えていればそれと同時に弱点を突くこともできる。上手くいけば一石二鳥。マリノスもソリッドなチームですが、ここのスペースは組み立ての時から異様に空く。選手はポジションを固定してボールを動かすというサッカーで、バブンスキーがいた前節くらいです中盤が流動的だったのは。わりかしスペースは多く空いているのでカウンターで付け入る隙は十分あります。あとマリノスで注意すべきは新戦力。この試合で復帰濃厚な大津祐樹、新加入のアフリカン、ブマル。データが少ない上に2週間もインターバルがあったのでどれだけチームにフィットしているかもわかりません。エスパルスも正直、そんな器用なチームでは現段階ではないのでマリノス攻略なんてこれくらいしかできないし、これが対マリノスにおいて最良の対策だし。

 

マリノスに対しては鬼門と言えるホーム日本平ですが、お互い変わった者同士。ここで勝てば相性逆転もありえるので、是非2006年以来の勝利を掴みましょう。