豚に真珠

サンバのリズムに乗せられて、いつの間にかそのオレンジ色に魅了される。それが清水エスパルスというチームなんだ

ハーフスペースの鬼!! 金子翔太

ハーフスペースって何?

話の前に、今回の題材である「ハーフスペース」について学びましょう。ここ1年くらいで話題になっているサッカー戦術用語です。

サッカーのピッチをいくつかのゾーンに分割する方法は複数ある。その1つで、長らく一般的だったのがフォーメーション基準の分け方だ。【4-4-2】なら3本、【4-1-4-1】なら4本といった具合だった。

しかし、実践の中でより戦術的に多くの現象が起き、戦略的にもカギとなるゾーンがある。それがハーフスペースである。実際にピッチ横幅をウイング(サイド)、ハーフスペース、そして中央にしたのが下の図である。

 

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月刊フットボリスタ 第54号 発行・ソルメディア 第34項引用

 赤くなっているゾーンが、いわゆる「ハーフスペース」です。中央はマークがきつくスペースがない。サイドになると、360度プレーできるわけではなく、またゴールから遠ざかる。そこでこの中間に位置するスペースが注目されたわけです。

相手が4バックだった場合、このハーフスペースというのは相手SBとCBの間となる“ニアゾーン”にかぶります。ニアゾーンを突くということは、相手SBとCBの間にポジショニングするということで、ボールを受けるときは必ず相手1枚の背中を取ることができます。このポジショニングだけで相手1枚を剥がせるわけですね。因みに、このニアゾーンとハーフスペースは別物です。頭がおかしくなるかもしれませんが、ゆっくりでも理解していただけば幸いです。

 

ここまでが前置きだったわけですが、では本題に移りたいと思います。今回の主人公・金子翔太です。

 

 

神出鬼没

ハーフスペースというのはチーム戦術で用いられることが多い用語ですが、今回は個人戦術で用いたいと思います。

金子翔太という選手

今季は練習試合では右サイドを担当しています。昨年までは2トップの1角としてファーストディフェンダーの役割でした。1列ポジションを落として迎えるわけですが、求められるのはよりオフェンシブなプレー。昨年も数試合サイドで出場していましたが、そこでの金子のプレーを観ていきます。

 

ハーフスペースに空き地を作る

昨シーズン第21節セレッソ戦からです。

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この時はまだハーフスペースにはいません。しかしここで金子は軽くバックステップを踏んでいます。

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ここで後方確認。金子の後方にはCBのみ。CBの位置と自身との距離を確認する。

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金子、中盤に下がってくる。ボールを保持している竹内は

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サイドの松原へ。金子の前方にはスペースがあります。

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松原から金子へ。一気にハーフスペースへ入り込む。

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もう仕掛けたい放題。

 

ハーフスペースの特徴

ハーフスペースというのは、守備側からしたら誰が行き、誰がカバーするのかというのが物凄く曖昧になるエリアです。このエリアは意外とプレスをかけられにくい。このシーンで金子がしたのは相手を引きつけることではなく、前を向いて仕掛けられるスペースを確保しただけに過ぎなかった。なかなかイカス。

 

ハーフスペースに誘き寄せる

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竹内がボールを持っています。金子はハーフスペースに。

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楔を受ける前に中の様子をチェック。

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楔を受けました。セレッソの周囲3選手がやってきます。この時の金子に与えられた選択肢は3つ。

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相手のSBにCB、さらにボランチまで引きつけられたので、選択肢が多いこと多いこと。金子が選択したのは

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サイド。先ほど中をチラッと確認してましたが、出しても難しいと判断したんでしょう。ハーフスペースに引きつけられた相手SBは背中を取られて

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パスが通っちゃった。この後逆転ゴールが決まったとさ。

中央のゾーンで相手DFの間のスペースにポジションを取った場合、相手のDFが寄せてきたらゴール方向に体を向けることはできない。加えて、SBが中に絞って来ればボールに寄せたDFが空けたスペースを埋め、ボールをサイドへ追いやることができる。

(中略)

これがハーフスペースの場合、理想は中央にいる選手を前におびき出すことだが、少なくともDFの意識を引きつける。これにより、守備側のチームは戦略的な優位性を得ることができなくなってしまう。SBは中に絞らざるを得ず、外のスペースが広がる。こうなればより速くサイドから攻撃を展開することができ、実践的にも非常に効果的なものになる。

 

月刊フットボリスタ  発行ソル・メディア 第36項より引用

 

ハーフスペースに侵入する

舞台は第33節アルビレックス新潟戦から。

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金子、サイドでパスを受けようとします。

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金子はダイレクトでサイドに流れたテセへ。テセは相手1枚を引きつけています。

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テセにボールが行き、相手計3枚がテセへ。金子はテセが引きつけておいた裏のハーフスペースへ。

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ドリブルで侵入。ここからが注目点。金子がドリブルするコースですが、

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金子は前にも横にもスペースがありますが、この画像、黄色丸の相手選手の裏にスペースがありますが、このスペースを狙って後方の北川航也が走ってます。この選手は金子に行くべきか裏をケアするかで迷っている。

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さぁ、そんな心理状態の相手に対し金子の選択は、カットインせずハーフスペースの、しかもハーフスペースのアウトサイド気味のコースを縦にドリブルする。対面する相手をハーフスペースへ誘き寄せ裏にスペースを作る。

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相手の対応が遅れていることで、中を確認するともういつでもボールよこせ状態。

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ハーフスペースの鬼

こういったポジショニングを取るだったり、走りこんでからの相手を困らせるようなことをしようというのは、かつては枝村匠馬の専売特許。でもこのプレーを金子ができるようになり、また枝村にはなかったドリブルでの仕掛けもあることで、よりハーフスペース内での怖さが増しました。今シーズンはこのエリア内で仕事をする回数が増えることでしょう。是非、金子のプレーに注目してみましょう!!

 

 

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