豚に真珠

サンバのリズムに乗せられて、いつの間にかそのオレンジ色に魅了される。それが清水エスパルスというチームなんだ

ピーター・ウタカ取扱説明書

 

久しぶりの上陸 アフリカンプレーヤー

 

皆さんはアフリカの選手と言えば、何を連想するだろうか。

フィジカルや身体能力に優れ、野性的本能で動き出す選手を頭に浮かべるのではないだろうか。

 

例えば、サミュエル・エトーディディエ・ドログバ。そんな選手が代表的な選手だ。

 

 

ただ、Jリーグではアフリカ系の選手をお目にすることはあまりない。

古くは、ガンバ大阪パトリック・エムボマ。最近では、浦和レッズ京都サンガでプレーしたブルキナファソ代表のウィルフリード・サヌがプレーしているが、他で思いつく選手は僕の中ではいない。

 

 

 

そんな中で元ナイジェリア代表のストライカー、ピーター・ウタカエスパルスに加入した。エスパルスの躍進のカギを握るのは間違いなく彼だ。これからは、そんなピーター・ウタカのプレーを見ていきたい。

 

ピーター・ウタカのプレー

まず、ウタカの特徴から。

J1第3節松本山雅戦の51分のプレー。彼のポジショニングに注目。

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本田拓也から楔を受けるが、ウタカのポジショニングは6人のディフェンダーが生み出す「ボックス」の中心にいる。このポジショニングにいることはとても重要。

 

なぜ重要かというと、ボックスで受けたとしたら、相手ディフェンダーはその選手に目線を移す。これはボールウォッチャーという現象だ。ボールを受ければ、味方の誰かがフリーになる。そこに出せば、非常においしい展開になる。

ウタカはこのポジショニングをとるのがうまい。

 

次にボールを保持しているときのプレー。

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ウタカはボールを保持し前を向く。黄色で囲まれたDFは後ろに重心が掛かっているので、ウタカにプレスが来ることはまずあり得ない。

ウタカに用意された選択肢は2つ。前方と左斜め前の2つのスペースである。

 

ウタカが選択したのは、前方のスペース。村田和哉が走ったが、惜しくも届かなかった。

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これらのプレーを観ていくと、ウタカのある特徴が見えてくる。

 

  • ボックス内でのポジショニング獲りがうまい
  • 視野が広く、パスセンスに優れる

 

この特徴からして、ウタカは純粋なストライカーではないことがわかる。

得意としているのは、最前線とトップ下の間。9.5番タイプの選手だ。周囲を上手く使うことができるので、ウタカを活かすには周りの選手の動きが重要になる。

 

まず、ウタカに対してはシンプルに当てること。

ウタカは競り合いはあまり強くない。ヘディングのセンスはあるが、ウタカはポジショニングで勝負するタイプだ。だからロングボールをウタカに当てて後は任せた、といった無責任なことをしてもウタカは活きない。足元に出せば、確実にキープしてくれる。

 

もう1つは、周囲の選手がどれだけウタカが生み出すスペースを突くことができるかということ。

先ほどの村田へのパスもそうだが、ウタカがキープすることで自然とスペースが生まれてくる。そこを周囲が感じ取ることができるかどうか。また、ウタカの独特なリズムに周囲が合わせることができるのかどうかということ。

 

 

これを踏まえて、ナビスコカップ第2節横浜F・マリノス戦を見てみる。

 

 

 

ボックス内における、ウタカのプレー

前半7分。ウタカが2対1という数的不利な状況でボールキープする。

赤丸のウタカは右足のアウトサイドでボールタッチしている。これは、この位置でボールタッチすることで相手DF2人からボールを遠ざけることを意味する。ボールキープが成功する1つの秘訣である。

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本田がパスを要求している。そこへ出せば前向きな本田にフリーな状態でボールを出せることができるからだ。

 

この後のウタカ。

 

 

相手DF3人が生み出す三角形のボックスに入る。

 

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相手ボックス内でパスを受けたウタカは、3人を引きつけサイドに出す。

このプレーは、とてもシンプルかつ、チームにリズムを与え生み出す、とても効果的なプレーである。

 

 

ウタカのリズム

ウタカは独特なリズム感でプレーしている。

1つのキープ、1つのダイレクトプレー。すべてが計算されつくされているようである。

 

タメを作るところでも、トラップから体の向き、パススピードが完璧に連動している。

次の画像を見てほしい。

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ウタカはボックスの中で受けようとしている。その裏のスペースへミッチェル・デュークが走り出している。

 

この時のウタカ。1歩でトラップしようとしている。これが2歩以上になれば、後ろで構えている中澤佑二が詰めてくる。なぜなら、2歩以上になれば余計な時間がかかり、その間に詰めるだけの余裕が生まれるからだ。

しかしウタカは、わずか1歩でトラップしようとしている。この時に詰めてしまえば、ウタカほどの身体能力なら、簡単に裏に抜けていくデュークへパスを通されてしまうのだ。

 

だから中澤は詰めることができない。ウタカの独特なトラップリズムが相手DFをコントロールすることもあるのだ。

 

 

次にダイレクトプレー。

碓井健平からのゴールキック

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ウタカはダイレクトでポストプレーをする。

一般的なプレーであるなら、ダイレクトではなく、タメを作ることをする。なぜかというと、これはゴールキックだからだ。相手最終ラインはセットされている。

 

ただ、この画像をよく見てほしい。この時のマークは中澤なのだが、あの中澤が簡単にダイレクトでポストプレーを許している。

実は、当初のウタカに対してのマークは栗原勇蔵なのだが、それを一瞬で外している。駆け引きにより、マークを振り切ったのだ。

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そして竹内に落とすのだが、この後のプレー。

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すぐさま裏に抜け出し、決定機につながる。完全に中澤と栗原を出し抜いている。

 

 

ダイレクトプレーをするための微妙な駆け引き。一気にギアを上げたかのようなスピード。全てにおいてJリーグの中ではクオリティーが群を抜いている。チームがウタカのリズムになれることが今後の課題になるだろう。

 

 

ウタカの活かし方

周りを上手く使うことができ、駆け引きやポジショニング、視野の広さは一級品だ。マリノス戦の解説をしていた清水秀彦は、ウタカはトップ下がいいのではといっていたが、僕はそうは思わない。ウタカは1トップだからこそ活きるタイプだと思っている。その心はというと、最前線でのキープ、駆け引きの上手さは絶対的な武器になると思うからだ。

 

 

パスセンスのあるフォワードというのは今時珍しくない。かつてFC東京でプレーしていたルーカスは、全盛期は最前線で輝きを放っていた。ヨーロッパに目を向ければ、レアルマドリードカリム・ベンゼマパリ・サンジェルマンズラタン・イブラヒモビッチパルマアントニオ・カッサーノなどがいる。ただ彼らが活きているときは決まって2列目の選手との連携がしっかりしている(イブラヒモビッチは1人でもできるタイプだが)。

 

 

ウタカも同じ。ウタカを活かすも殺すも2列目の選手に懸かっている。最前線でタメを作ることができれば、崩しにおいていろんなアイデアが浮かんでくる。大前元紀やデュークといったテクニックや縦の推進力がある選手にとってはやりたい放題できる環境が整うのだ。

そのためにはウタカにはストレスなくボールを預けることが条件となる。ロングボールを当てたり、無理なスルーパスを送るのはナンセンスだ。そのかわり、ウタカに預けることができれば、間違いなくウタカは仕事をしてくれる。

 

ウタカを活かすこと。それが今シーズンのエスパルスの最優先事項となる。

 

 

補足(2017年2月28日)

なんかスゲーアクセスが集まってるなと思ってたら、FC東京サポさんが見て下さっているみたいですね。ありがとうございます。昨年も広島加入後に物凄くアクセスが集中していたので、「何事か!」と思いましたが、ありがたいことです。

 

さて、まず話を始める前に前提としまして、この記事は2015年に書いた記事、要するにウタカ日本上陸直後に書いた記事になります。そしてもう1つ。これは「2015年のエスパルスなら、どうウタカを組み込むのか」という記事だということです。なので、この記事がウタカの全てだ!というわけではありません。そこはご注意を。

 

 

では始めます。

ウタカの長所として、最初の方でも書いてありますが、ポジショニングがいい、またマークを外すのが上手いというところがあります。それはいいとこですね。で、懸念されるのは、ウタカの個は十分強さが証明されているので説明抜きでいいんですが、組織にどう組み込むのかというところ。この2015年の序盤戦エスパルスは、当時の大榎監督は頑なに4-2-3-1をやっていました。後世に伝わるであろう、あの伝説の4CBで一応守備は OKとしていました(実態は全然よくなかったんですけど)。そしてウタカと同時期に加入したミッチェル・デュークも一緒にどう使うかも問題でした。この時、この助っ人FW2人に加え、現在ガンバで出世した長沢駿と大宮にいる大前元紀もいたので、1トップと2列目にどう組み合わせればいいのか、というのが大榎さんの当時の課題でした。「1トップで使うべき」と書いてありますが、それはこのような背景があったので、最初ウタカをトップ下で使ったこともあったのです。案の定上手くいきませんでした。そうこう言っている間にDF陣に怪我人続出。大前&ウタカの2トップに前線は変更。夏に鄭大世が加入し、大榎さんはクビ。最後はテセ&ウタカでしたが、組織が壊滅的だった当時のエスパルスでは、誰をどう使ったとしても上手くいかないのは当然のこと。結果ウタカはデュークにせがまれインスタデビューすることになりました。

広島移籍後は、組織がしっかりしている環境だったので、ボールを貰っても孤立しているから前を向くしか選択肢がなく憂鬱な表情だったエスパ時代に対し、常に多数の選択肢が与えられ、広島では常に笑顔でプレーしていたのはお分かりだと思います。あの時のウタカはサンコン以上に笑顔が似合う日本在住外国人になってました。ウタカが活きるには、周囲のサポートと戦術のハード面での充実が条件です。現在のFC東京の状況は分かりませんが、大久保にあの憎っくき当たり前田のクラッカーがいますし、中盤には僕の大好きな中島翔哉がいます。永井や河野もいますね。さぁ、どう使うんでしょう。それに関しては直接監督に聞いてください。システムの面でウタカが活きるとするならば、4-3-3のCFか、4-4-2で2トップの1角に使うかのどちらかだと思います。やめた方がいいのはトップ下起用です。まず守備では、ウタカはパスコースを切ったり限定するのは上手いです。ただ、走って追っかけ回すようなことはしません。それと攻撃面では、前線の選手と被ります。昨シーズン開幕直後の広島でもそうでしたね。ドウグラスの後釜としてシャドーで使われてましたが、佐藤寿人とポジションが被ってました。ウタカが爆発するきっかけが最前線での起用。随分よくなったと思います。

 

簡単に説明するとこんな感じです。あとはやってみないとわかりません。この移籍のウタカに幸あれです。それと、静岡おでんを差し入れるとテンション上がります。セブンとかファミマのおでんじゃダメです。静岡おでんは出汁だったりはんぺんが黒かったりなど、全く違います。詳しくは各自でお調べください。